第三章 ゆくぞ広野を
save8 ふーってするとなおるやつ
BGMも勇ましく、二人は道を行く。
今日の予定は、ロイドに
冒険者は、よく歩き、よく笑い、よく食べよ。という。きみが上を目指すのならば。
草原は一面の緑。丈の短い草に覆われた原っぱが、見通しよくなだらかに続いている。空はよく晴れいい天気。二人が進むのは、踏み固められた土の道。
レガリア大陸では、人の住まいの外はモンスターの世界である。
各市町村においては、領地を祝福することで、それを遠ざける。いわゆる結界である。
ただし結界は、モンスターの認識に作用し、近づきたくない気分にさせるもので、物理的に排斥する力はない。
ある程度の知性のあるものや、それに率いられたものなどが、入ってくることもある。
または、単純に強力なモンスターなども。
祝福は、道路にもされている。〈
現在、二人は冒険道の上にいた。
「おや。見よ、勇者」
「うん」
ロイドは腰に下げていた剣を取ると、剣鞘ごと構えた。
鞘の
グミーが あらわれた!
目も口も無く、体全部が透き通った、サッカーボールくらいの大きさが、一体。
レベル3
ロイドの眼鏡のレンズ部分に、表示が出た。この眼鏡には、レベライザーの機能があるようだった。
ぷるぷる、ぷるぷる、グミーは飛びかかるタイミングを計るように、体を揺らし、
ぴゃっ 素早く跳ねて襲いかかった。
どこんっ。狙いすましたように、剣鞘の真芯にとらえて、ふっとばす。
ロイドのその動きは、きれ良く随分と様になっていた。身体の扱い方を、十分に心得ているような動作だった。
べとっと力なく落ちたグミーは、光の粒子になって、消えた。舞い上がった粒子のいくらかが、ロイドの身体に吸い込まれた。
「ふぅ……」
どやあ。
ロイドは得意顔でエリスを見た。
「としていると、」と、エリスが言った次の瞬間、
ばちこーん! ロイドの顔面にグミーがぶち当たった。
「ぁいたぁっ!」
飛び退いたグミーは、体をプルプルさせてもう一度をうかがっている。
「ふっふっふ。そんなことをしているから、忍び寄ってきたもう一匹に気づかぬのだ」
ふたたび飛びかかってくるグミーを、しっかり見切って、かわし、
ばちこーん
再度飛びかかってきたところを、吹っ飛ばす。
二体目のグミーも、光になって姿を消した。
モンスターを やっつけた!
「うむ。見事だ」
言いながら、エリスはロイドに近寄り、顔を覗きこんだ。
「だいじょうぶか?」
「うーん。ひりひりする」
ロイドは肩をすくめた。
「そうか」
ふっ、ふーっ
優しくていい匂いのする息が、鼻の頭をくすぐった。
「姫王国に伝わるおまじない。ふーっとすると治るのだ」
エリスは、茶目っ気の顔で言う。
「どうだ、痛くなくなったか」
「うーん、まだひりひりするかも」
そうか。
ふーっ。ふっ、ふーっ
「どうだ?」
「うーん。まだちょっとだけ痛いかも」
エリス、ふふ、と笑い、
つん、とロイドのほっぺを突く。
「うそはだめだぞ」
エリスは眼差しに、いたずらっ子をたしなめるような笑みを浮かべる。
「そなたはうそが下手なようだ」
顔に出ているぞ。
ロイドは照れたように頬を赤らめ、指で掻き、
「うわあああああああああああああああっ!」
突如ばたーんと倒れ伏した。
?!
「ど、どうした、!?」
くっ…。ロイドは歯を食いしばりながら、右腕を押さえて、がたがた震え、脂汗を流す。その様子は、ただ事ではないなにかを感じさせた。
「た、大変だ、いまので、ぼく……」
声は苦しげに、絞り出された。
「お腹が痛くなっちゃったよ…………」
……………………。
「いや、下手だ」
ロイドはしょんぼりした顔をみせた。
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