Metropolitan 美術館

第11話 本物は語りかけてきますのよ

 某所にある修道院は、まぁまぁ自然のど真ん中に建っている。

 完全寮制度の中高一貫校まぁまぁの名門に隣接して、この教育上よろしくない面々が住んでいるのである。

「有栖川さんは、寮ではなく、修道院から通われているのね」

「えぇ…」

「まぁ、素晴らしいことですわ」

「ホホホ…」


「ふぉごぁぁぁ」

 忙しそうなファットマンが「おかえりなさい」と頭を下げる。

 現在急ピッチで牛小屋と鶏小屋が建造もちろんファットマン独りでされているのだ。

 有栖川家からの贈り物『ホルスタイン4頭厳選されたメスのみ』『烏骨鶏20羽もちろんメスのみ』が1週間後に届く予定である。

 新鮮な乳牛と卵を杏子お嬢様のためにと爺やが劇甘手配したのだ。

 建造途中の牛小屋、鶏小屋をチラッと見たシスターアンジェラ

「意外と器用ですわ」


「おらっ!! ちゃっちゃと運べ、豚!! 飛べない豚はただの豚だぞ!!」

 椅子に座ってメガホンで怒鳴る現場監督気取りのシスターベティ。

(飛べない豚はただの豚…当然ですわ、飛べたら豚じゃありませんもの)

 足を組んでタバコを吸って、怒鳴るだけのシスターベティ口だけ番長

 ファットマンはギャグボールはもちろん、手足の重りもそのままだ鎖を南京錠で固定されているために自分では脱着不可能


(日本の奴隷制度…此処に復活ですわ)


 トンテンカン…トンテンカン…バキッ!!

 昼夜を問わず、響くDIY音。

(新たなハラスメント誕生ですわ)

『DIYハラスメント』通称『Dハラ』…シスターアンジェラの脳裏にそんな言葉が過りだして4日後。


「出来たんですの?」

「出来た…完成したぜ!! いい出来だぜ」

 満足げなシスターベティ何もしてない親方が自慢げに庭で仁王立ち。

「今夜は竣工式だ!!」


「牛と鶏の入居を牛肉とチキンで祝うとは…斬新ですわ」

「細かいことはいいの!! 小さいことを気にし過ぎなんだよ、だから背が伸びねぇんだよ!!」

「成長期の訪れが、やや遅れているだけですわ」

「バカ野郎!! 何事も待ってるだけじゃダメなんだぜ、その手で引き寄せるんだ」

「何を? 成長期を?」

「まぁいいじゃありませんか、成長期はともかく、牛と鶏は引き寄せてもらうわけだし」

「後はブタがくれば、立派な牧場だな、おい」

「豚? 豚は…どうなさるの嫌な予感…?」

「売るんだよ!! アグー…イベリコ…」

 箸で豚肉を指すシスターベティ。

加工食品高級豚飼育?」

「夢がひろがるぜ~」

「オホホホホ…まぁ、それはさておき…シスターアンジェラ、コレ持って…はいポーズ」

 カシャッ…

「もう1枚…」

 カシャッ…

「OKよ、いただきましょうかね」

 パプリカを持たされて、思わずカメラを向けられ笑顔でポーズを取っちゃったシスターアンジェラ某、TV番組予定雑誌みたいに


 竣工式の焼き肉は、美味しくいただきました。

「ファットマン、オマエの分だ」

 肉は食べられないのでギャグボール着用の弊害、残った焼肉のたれを小皿で差し出すシスターベティ。


「いけません!! それはご褒美よ!!」


 ご褒美でいいんじゃないかと思う13歳…アーメン。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る