第8話 大豆は畑の牛肉だそうですわ
「おらッ!! ファットマン、野菜ばっか育ててんじゃネェ!! 肉作れ、肉を!!」
敷地の隅で菜園を命じられたファットマンにシスターベティの
(ファットマンの存在自体が傍目に危ういのではないかしら?)
そうは思ったが、言うと、また明後日の方向で話が進みそうなので黙っていた、13歳。
日中は主に
「それでは、皆さま、ごきげんよう」
「有栖川さんも、ごきげんよう」
学校が終わると、まっすぐ帰宅する修道女らしさ、と…秩序が崩壊した修道院で暮らす13歳のちっこいシスター見習いは苦悩していた。
制服を脱いで修道服に袖を通すと、ため息が零れる。
「よぉ、帰ったか?」
ため息の原因のひとつが、
「ただいま…」
「よぉ、何巻まで読んだよ?」
シスターアンジェラは摩訶不思議アドベンチャーを読み終えて、友情と正義を筋肉でコーティングしたプロレス漫画を読んでいた。
「ウォーズマンは何回死ぬんですの? クリリンより死んでませんこと?」
「あぁ~ソレな…アレだ…ロボ超人の死は違うんじゃね?」
「体の中にリングが設置されてましたの?」
「備えあればってヤツだよな~」
シスターアンジェラが強さのインフレが少年漫画における宿命であり、袋小路が結末だと知るのは、もっと先の事である。
「困るぜ…『最初から俺強ぇ』世代は…努力ってもんをシラネェ…修行編の大切さを学ばねぇとよ」
シスターベティがシスターアンジェラの頭を
「なんですの? その俺強いって?」
「最近の傾向だ、初期ステータスから最強なんだ」
「解りませんわ」
フイッと漫画に視線を戻すシスターアンジェラ。
「まぁ、読めばわかるぜ…友情と正義と…そして筋肉の大切さがな」
(友情と正義はともかく…筋肉ってなんですの?)
今日はここまでとコミックをカラーボックスに戻して、
ダルダルのボンテージが、ヨタヨタと一輪車を押す姿。
ひっくり返して、シスターベティに蹴られていた。
「ダメよ、シスターベティ!! それは彼にとってご褒美よ!!」
シスターベティを止めるマザーキティ。
修行編…なのかしら?
迷える少女に幸あれ…アーメン。
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