第8話 大豆は畑の牛肉だそうですわ

「おらッ!! ファットマン、野菜ばっか育ててんじゃネェ!! 肉作れ、肉を!!」

 敷地の隅で菜園を命じられたファットマンにシスターベティの容赦ない無茶ぶり激が飛ぶ。

 炊事と洗濯は免除された性癖が幸いした結果ファットマンが命じられたのは、掃除と庭の手入れ、そして皿洗いもちろん拘束具のまま…さらに家庭菜園が追加されたのだ。

 シスターアンジェラ実家の資産が右肩上がりの実家からの寄付金で、毎日、宴会しても釣りがくるくらいなので実際、ほぼ毎日パーティ気分でウッハウハ、別に自足の必要はないのだが…傍目が悪いという理由で、なんかソレッぽいことをしようとの判断である。

(ファットマンの存在自体が傍目に危ういのではないかしら?)

 そうは思ったが、言うと、また明後日の方向で話が進みそうなので黙っていた、13歳。

 日中は主に修道院の掃除ホウキと塵取り人の目を避けている人道的な意味で通報の危険を避けている


「それでは、皆さま、ごきげんよう」

「有栖川さんも、ごきげんよう」


 学校が終わると、まっすぐ帰宅する修道女らしさ、と…秩序が崩壊した修道院で暮らす13歳のちっこいシスター見習いは苦悩していた。


 制服を脱いで修道服に袖を通すと、ため息が零れる。

「よぉ、帰ったか?」

 ため息の原因のひとつが、酒臭い息二日酔いを吐き出しながら頭をポンポンしてくる肘を置くのに丁度いい高さ

「ただいま…」

「よぉ、何巻まで読んだよ?」

 シスターアンジェラは摩訶不思議アドベンチャーを読み終えて、友情と正義を筋肉でコーティングしたプロレス漫画を読んでいた。

「ウォーズマンは何回死ぬんですの? クリリンより死んでませんこと?」

「あぁ~ソレな…アレだ…ロボ超人の死は違うんじゃね?」

「体の中にリングが設置されてましたの?」

「備えあればってヤツだよな~」


 シスターアンジェラが強さのインフレが少年漫画における宿命であり、袋小路が結末だと知るのは、もっと先の事である。


「困るぜ…『最初から俺強ぇ』世代は…努力ってもんをシラネェ…修行編の大切さを学ばねぇとよ」

 シスターベティがシスターアンジェラの頭をポンポン叩く叩きやすい高さ

「なんですの? その俺強いって?」

「最近の傾向だ、初期ステータスから最強なんだ」

「解りませんわ」

 フイッと漫画に視線を戻すシスターアンジェラ。

「まぁ、読めばわかるぜ…友情と正義と…そして筋肉の大切さがな」

 シスターベティ聖書を読んだことはないはフッと悟った笑みを浮かべ図書室9割漫画を出て行った。

(友情と正義はともかく…筋肉ってなんですの?)


 今日はここまでとコミックをカラーボックスに戻して、図書室1割が週刊誌をでたシスターアンジェラが窓から見たモノ…。


 ダルダルのボンテージが、ヨタヨタと一輪車を押す姿。

 ひっくり返して、シスターベティに蹴られていた。


「ダメよ、シスターベティ!! それは彼にとってご褒美よ!!」

 シスターベティを止めるマザーキティ。


 修行編…なのかしら?

 迷える少女に幸あれ…アーメン。

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