15年に一度、秋に一週間だけ八百万の神様達の姿が見えるようになる。
茶碗のつくも神が店主を務める「あったか亭」に訪れる人々と、心にポッカリ穴が空いてしまった少女が、神様が作る「感情を食材にした料理」を食べながら、自分自身と見つめ合う、ハートフルヒューマンファンタジー。思わず心を打たれてしまう言葉の数々、そして八百万の神様の心温まる人間への愛、不思議で夢のような世界観、これから絶対流行るであろう間違いない物語を、あなたも一足先に体験してみませんか?
あらすじ
主人公のコヤネは、少し前に友人を自殺で亡くした女の子。母親はすぐに他人の文句を言い、物に当たり散らかすヒステリックな女性、そしてそんな母親を止めようともせず傍観する父親、そんな両親の元で鬱屈した感情を募らせていたコヤネは、友人の死をきっかけにさらに落ち込んでいた。
そんなタイミングで訪れた神様達が見えるようになるその日、彼女は一軒の屋台に足を踏み入れるが、そこは無人だった。そして店の主人を探そうと台所に足を踏み入れると、そこには見たこともない幻想的な風景が広がっており、彼女の体から何かが飛び出して来た。それは兎の姿をした彼女の「恐怖」の感情だった。店に戻ると主人の姿があり、彼は茶碗のつくも神であるという。そして、先ほどの「台所」では、足を踏み入れた者の感情が勝手に自分の姿を形作るという。彼に、台所で収穫したコヤネの感情を使って料理を振舞ってもらう。コヤネは、自分の感情を噛み締め、受け入れるように、その料理を食べるのだった。
カクヨムコン、残り日数が少ないので、『三日目』読了時点でのレビューとさせて頂きます。そのため★は二つにとどめました。
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たまたま作者様のツイートを見かけ、読んでみようかな、とクリックしました。
そうしたらなんとまあ、個性豊かな美しい世界が広がっているではないですか。
「神様が見えるようになる七日間のお話」でして、個性的な神様かチラホラ登場します。
そしてある神様が、お店でスープを作ってくれるんです。レビュータイトルはそのうちの一つから。「悲しみ鳥と寂しさトマトのスープ」。作者様の言語センスが素晴らしい。
この作品はほぼ改行なしで書かれているのですが、それでも、ものすごく読みやすいです。作者様の筆力の高さがうかがわれます。
『千と千尋の神隠し』のようなファンタジーに見えつつ、扱っているのは家族の問題で、奥の深い秀作だと思います。