著者にとって宗教と文学というものが、いかに融合を果たすべきかというのがひとつのテーマなのだろうなと感じましたが、それを差し置いても、じんわりと心が温かくなるような作品でした。祖母のいじらしい生き方が愛おしくなりますし、主人公の真摯ながらもちょっと照れたような語り口も効いていて大変良かったです。魂の行きつく先は私にはわかりませんが、それでも祈りのこもった小説だと感じました。きっと主人公にはおぼろげながらもその在処がわかったのだろうと思います。