波乱のドラフト会議
ほどなくして美穂のオーナー就任と岡本の監督就任が発表された。岡本の背番号は30番。美穂曰く、この背番号30は岡本の希望らしい。そしてコーチ陣も一新された。二軍監督には、岡本の高校と大学の後輩で、京都の某高校を長年率い、甲子園にも数回出場していた
そして時は少し流れ、ドラフト会議の日。16球団のスカウトたちの腕の見せ所である。有力選手の入団拒否、強行指名による指名枠の無駄をなくすという名目で、今年度から大学生および社会人選手による逆指名制度が復活した。当然ながら好きな選手を容易に取れるようになったのだが、かつての裏金疑惑の再発防止のために、
『逆指名制度を1枠使用した場合、来年度の逆指名制度は1枠のみ。また、再来年度の逆指名制度の使用はできない』
『逆指名制度を2枠使用した場合、来年度の逆指名制度の使用はできない。また、再来年度の逆指名制度の使用は1枠のみ』
という条件はついた。とはいえ、『球界の盟主』と呼ばれる東京ジャイガースの独壇場かと思われたが、会場は早くもざわめいていた。
「京都が逆指名制度を使うだって?」
「それも2枠も?そんな資金のある球団だったか?」
「京都が取れるような逆指名相当の選手なんているのか?」
そして京都の獲得選手が読み上げられると、会場は京都陣営以外総立ちとなった。
『京都、逆指名1位枠
『2位枠
「何ぃ!こ、こんなダブル獲りありなのか!」
「高橋は大学日本代表のエースピッチャー。ジャイガースが10億積んだという噂があるというのに・・・」
「小林は名古屋ドジャースじゃないのか!?なんでよりにもよって、あんなお荷物に・・・しかも1位クラスなのに2位?」
15球団の編成担当たちが驚くのも無理はない。高橋・小林の両名は、今ドラフトにおいて大学生のS級選手。逆指名の線がなければどの球団も1位指名を予定していた選手。それをまさかのお荷物球団が2人ともとってしまったのだから無理はない。
「やったわね、大野部長!!」
「はい!我が球団、始まって以来の大勝利です」
他の動揺を尻目に、中村オーナーはガッツポーズを作る。
「それにしても、あなたのおかげです、岡本監督。あなたが交渉に来てくれたおかげで、逆指名は成功しました」
「いえいえ。私の力など微々たるものです。私の言葉に彼らが動いてくれた、それだけのことですよ」
スカウト部長の
片や野球部の寮でその瞬間を見届けた高橋は、フラッシュが次々とたかれる中、ふんぞり返りながら応答した。
「確かにジャイガースさんも来て、金銭面はジャイガースさんのほうが倍以上ありました。しかし、高校時代お世話になった岡本監督から直に獲りたいと言われてはね・・・」
片や大学の講堂で安堵の表情を浮かべる小林も、マスコミの質問に答えていた。
「岡本監督と野球談議を交わして、共感できる点が多くて・・・それに、甲子園でバッテリー組んでた賢二のいる球団ですからね。特に断る理由もありませんでした」
ただし、ドラフトがそれで終わればいいのだが、京都が世間に与えた衝撃はとどまらない。
『第3回希望選択選手(3位)、京都。
『第4回希望選択選手、京都。
『第5回希望選択選手、京都。
「甲子園に出た高校生が3位4位5位と立て続けに指名された。まさかとは思うが・・・」
「この2人は我々も狙っていましたが、こんな下位で指名されるとは・・・」
「もう京都から目が離せんぞ」
すっかりドラフトの主役となった感のある京都。そこにとどめとばかり衝撃の指名が入った。
『第6回希望選択選手、京都。
「じょ、女子プロ野球!そんな馬鹿な」
「こんなことが許されるのか!男の世界に女なんて」
「ふざけるな京都!ドラフトはパフォーマンスの場ではない!」
『第7回希望選択選手、京都。
「女子選手が2人も・・・」
「京都の編成は何を考えているんだ・・・」
まさかの女子の指名に会場はスカウト陣はもちろん、抽選でドラフト会議の見学に当選した一般ファンからも怒号が飛び交ったが、立て続けに2人も指名されたとあっては、他球団のスカウト陣もかえって静まり返るだけだった。
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