第4話もふもふ保育園始動で、意外な人物が登場!


 素敵な園舎が出来たころ、お手伝いの人員もライラさんのお友達のミーナさんにキャロルさんにエリンさん。カロンくんの母マキナさんは調理担当になってくれた。

 そしてキャロルさんの娘さんのミレイラさんが事務と経理担当になってくれている。


 この村では貨幣もあるものの、未だに物々交換での生活も多く保育園でもそれを混ぜていくことに決めた。

 建物を建ててくれたサムさんのところは実質無料で、農場や畑をやっているお家からは野菜や麦、乳や卵なんかをもらってお昼やおやつとして提供するから保育料は納品物でOKといった形。

 保育士や私たちもそこで残った余りを給与として分けてお持ち帰りすることに決まった。

 生物だったりするので、乳や卵はなるべく朝に採れたものを必要なだけ運んでもらい、野菜は日持ちするものは週一、葉物は二日に一回届けてもらって献立をマキナさんやライラさんが相談して考えてくれている。


 木工職人のガルさんのところも、食器をたくさん作って園にと頂いたのでお子さんたちを実質無料でお預かりになった。

 どれも子どもサイズで食べやすいように工夫された食器は、お昼ご飯と相まって子ども達には好評だ。

 それ以外にどうしても必要な部分を考えて毎月銀貨二枚が保育園代と決定した。

 銀貨は日本円で考えると大体二千円くらい。

 保育園代としては破格だろうけれど、ここでは一月の収入が大体金貨三枚だという。

 金貨は一枚で一万円と考えたら保育園代で銀貨二枚は結構な額なのだ。

 それでも預けたいというお母さんたちが多かったのは、やはり育児と仕事の並行が大変な負担であったことが窺える。

 お子さんが二人のところは兄弟割で二人で銀貨三枚に決めた。

 そうして頂いたお金で、必要な物を買う資金として残りは積立金とした。

 園舎の修繕や、この先の拡張なども視野に入れての判断だった。

 それでも積み立てが大きくなったときは、ご家庭に返金も考えているが、とりあえずこんな形で保育園はスタートを切った。

 お預かりは朝七時半から夕方五時まで。

 早めのお迎えもオッケーだし、遅い登園も問題ない。

 朝は九時までに来てもらって、五時にはお迎えに来てもらうことにした。

 大体、畑や農場の子たちは親が三時でお迎えに来てくれて五時までいる子は商店や工場の子ども達。

 うまく調整が取れているので、お手伝いのキャロルさん、ミーナさん、エリンさんには八時半から四時までのお手伝いをお願いした。朝と夜の一時間は私一人でもなんとかなるからだ。


 保育園の説明会でもこの案はすんなり通って、お母さんと子ども達は毎日元気に登園してくるようになった。


 「ハルナ先生、おはよう!」


 今日も朝一番はカロンくんだ。


 「カロンくんおはよう。今日もいい天気だから沢山遊びましょうね」


 そんな私の挨拶にニコニコと笑ってくれるカロンくん。


 挨拶しているうちにメロウちゃんもシェイラさんとやってきた。


 「ハルナ先生、おはようございます!メロウ、今日はお花摘み行きたい!」


 パタパタと駆けてきて、開口一番にメロウちゃんは訴えてきた。


 「メロウちゃん、おはようございます。お花摘み、良いわね。みんなが揃ったらお散歩で行こうね」


 そう返事を返せば、とっても嬉しそうに跳ねている。

 もこもこ仔羊のジャンプはなかなかに可愛い。が、油断するとこっちが飛ばされそうになるので要注意だ。


 「こら、メロウ。先生はお母さんたちとは違うから気を付けなくちゃダメよ」


 シェイラさんの言葉に、ハッとした顔をするとメロウちゃんはジャンプを止めた。


 「先生、気を付けるね!先生が飛んじゃったら大変だもん」


 きちんと言葉を聞いて気を付けられる。メロウちゃんはしっかりした子である。


 「ありがとう。先生もママたちみたいにしっかり出来たら良かったんだけど、こればっかりは種族の差みたいなものだから。みんな分かって気を付けてくれてて先生助かってるよ」


 そう、仔羊な彼らは走らせれば人の大人のスプリンター並みに早いから私じゃ追いつけない。体当たりされれば、もちろん飛ばされるのは私のほうだ。

 ライラさんやマキナさん、キャロルさんなどが最初に丁寧に子ども達に分かりやすく説明してくれたおかげで私はなんとかこの種族の差をフォローされつつ子ども達の相手をしている。


 落ち人さんの物語の絵本のおかげか、子ども達もすんなりと私と自分たちの違いを受け入れて接してくれている。

 ここの子達は、しっかり相手を思いやれる優しい子たちばかりだ。


 よちよち歩きの赤ちゃんから、もうすぐ小学校に行く子たちまでの四十五人が九時から三時ころまでの子どもの人数で、この人数になると自然と大きな子たちが小さな子の面倒をみてくれるのだ。

 小さな子たちもお兄さん、お姉さんをよく見てどんどん真似して成長していく。


 成長していく子ども達と毎日を一緒に過ごせることは、場所が違っても夢を叶えることができた私としては幸せである。


 今日の散歩には畑の近くを選んだ。そこより先に行くと、私が最初に立っていた草原になるのでそこまで奥には行かないように呼び掛ける。


 「今日はこのあたりでお花摘みね! ここより奥には行っちゃだめだよ」


 たどり着いた、花が咲く空き地で子ども達は思い思いに遊び始める。

 私は、お花摘みに付き合ったりかけっこに付き合ったりした。

 なかなかにハードな時間だけど、体を動かすのも結構楽しい。

 

 「ごめんね、みんな元気だけど先生はちょっと休むよ」


 そう、頑張ってもやっぱり私がへばるほうが先。

 子ども達は元気の塊だから、なかなか追いつけないのだ。

 そうして少し座って休むと、必ず私のそばに来る子がいる。


 その子は大工のサムさんところのノノンちゃん。

 大人しいタイプの女の子でサムさんの家の五人兄弟の三番目。

 一番、周囲の様子を読んで動くとっても優しい子だ。


 「先生、私も休むからもふもふしていいよ?」


 私が無類のもふもふ好きと気づいたらしいノノンちゃんは、こういった場面で寄って来て一緒に過ごす。


 小さな子や、他に囲まれてるときはそっと端で静かに過ごしている。

 こういう、独占できる時を逃さないのもうまく見てるんだなと思う。

 甘えたいんだろうな、でうまくいく時をしっかり掴んでくる。

 三番目は実に要領がいい。


 「うん、じゃあもふもふさせてね」

 

 そうやってノノンちゃんとゆっくりみんなに目線を向けつつ過ごしていると、私はいつものように人数を数えて足りないことに気づいて慌てて立ち上がる。


 「ノノンちゃん、ごめん。メロウちゃんとカロンくんがいない!探してくるから」


 そう言って駆け出そうとする私をノノンちゃんがキュッと服の端を噛んで止めた。


 「ハルナ先生、カロンくんたち草原に向かって行ったの見えた。あっちのほう。ミーナさんと行くのがいい」


 ノノンちゃん、あなたはなんて視野が広いの!


 「ありがとう、助かる!キャロルさん、ノノンちゃんお願いします。ミーナさん!!カロンくんとメロウちゃんが草原に!一緒にお願いします」


 そうして、キャロルさんとエリンさんに残りの子達を任せて私はミーナさんと草原に向かって駆け出したのだった。


 久しぶりに来た草原は私が来たころと変わりなく、広く先が見えない。

 草の丈はの伸びたようで、この間のように二人の姿は見えない。


 「カロンくん、メロウちゃん!そろそろお昼よ!園に帰るから出ていらっしゃい!」


 大きな声で叫ぶと、少し先でカサカサと草が揺れた。

 そこを見つけてミーナさんがすかさず駆け寄っていく。


 そして私はその向こうに、ここでは見かけない集団を目撃して一瞬にして固まる。


 ここは草食の羊さんの村だったはず。


 なぜ、ここにライオンや豹といったネコ科の肉食獣がいらっしゃるの!!


 た、食べられる?!


 私は大慌てでミーナさん、カロンくんメロウちゃんを呼ぶ。


 「みんな、早く村に逃げて! 私を置いて行って! 早く!」


 そう叫ぶ私に、先を見据えてミーナさんはせっついてたカロンくんとメロウちゃんを前に止まってしまう。


 あぁ、このままじゃ大変なことに! と私自身も逃げなきゃなのに動けにままでいると私を見つけたメロウちゃんが駆け寄ってきた。

 その顔に恐怖がないのがびっくりなのだが、話を聞いて判明した。


 「あれ? ハルナ先生聞いてなかったっけ? あのね、王様の気配がしたからお迎えに行ったんだよ」


 えっへんと自慢げな表情のメロウちゃんに、カロンくんが言う。


 「住み分けられてるけど、この世界アルアローザの王様はライオンのダムド様だよ」


 なんと、王様いたんですか? しかもその王様こんなにあっさり草原歩いてきます? もう訳が分からないが、とりあえず食べられちゃう心配は回避されたらしい……。


 「おぉ。この子が落ち人か。面白い試みをしていると聞いて会いに来たぞ!」

 

 ダンディなライオンの王様ダムド様。見た目は思いっきりライオンチックな鬣風のふさふさの髪をなびかせてご登場。


 王様、フットワーク軽くないですか? そう思うのは私だけですか?


 とりあえず、なんか予告もなくこの国の偉い人に会ってしまいました。

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