第3話ハルナ、ママさんたちと協力して(仮)保育園を作る!


 お母さんたちと話した翌日、さっそく話をしっかり詰めようと数人のお母さんと話し合うことになった。

 そして今回は働きながら育児をしていた先輩でもあるライラさんにも一緒に話し合いに参加してもらうことにした。

 

 まず、農場や畑で働く親に何人の子がいるのか、保育園に入りたい子の人数把握から始まった。


 聞くと、農場と畑で働く家族の中にママは十五人。

 うち五人が二人の子を育ててるママたち。

 そして二人いるところは上の子と下の子の歳の差が少しあったり、あるいは近くっても二人とも大人しかったりするが、やはり二人なので育児しながらの仕事の負担は大きいという。

 そんなママたちの話を聞いて、ライラさんに私は言った。


 「そんなママたちが仕事をやりやすく、子どもたちは安全で集団行動に慣れることを目的に、ここに子どもを預かる保育園を作りたいんです」


 そんな私に、ライラさんは頷くと言った。


 「素敵な案だと思うわ。私の時も子どもを見ながら働くのは大変なことだったもの」


  にこやかに村長の奥様であるライラさんも同意したことで、この計画は進行することになった。

 そこで問題なのが保育士は私一人では当然目が行き届かない人数である。

 なにしろ、0歳から5歳までのお子様二十人が保育園での預かり希望なのだ。

 それにもしかしたら村の中心地の商店の子たちも入ってくる可能性もある。


 そう考えたら、五十人前後の子どもたちの大所帯になることも想定しなければならない。


 「それで、ライラさん。ライラさん世代の子育て経験があって、少しでもお時間のある方々に保育園のお手伝いをお願いしたいんです。一緒に保育園やってくれそうなライラさん世代の方に心当たりはいらっしゃいますか?」


 そんな私の問いにライラさんは少し考えたもの、にこやかに頷きながら答えてくれた。


 「私も手伝えるし、数人当たれそうな人がいるわ。お手伝いについては私が交渉してみましょう」


 頼もしいライラさんに私はお手伝いの人員確保をお願いする。


 「あとは、五十人前後の子どもと十人前後の大人が一緒に過ごせる建物、子ども用トイレや洗面。それに給食室と事務室といったしっかりと区分けされた建物が必要なんだけれど、どこにどう建てるか……」


 そんな話し合いの最中に、カーライドさんが大きなガタイの良い男の人を連れてきた。


「ここに小さい子ども用の学び舎建てたいって聞いたから、この村一番の大工の息子連れてきたよ」


にこやかなカーライドさんに続いて来てたガタイのいい男の人は、頷くと一言。


「建物を建てるのは請け負う。その後のメンテナンスも。だからうちの子も預かってもらえないか?」


ガタイのいい大工さんな男性は名をサムさんと言う。話を聞いたら五人の子の父だと言うから驚きだ。

皆さんにも聞けば、村一番の子沢山夫婦だそうで……。

奥様は日々育児に追われて大忙し。

最近すっかりほっそりしてしまって心配なんだとか……。


そりゃ、小さな子が五人もいたらお母さん日々ヘロヘロでしょうとも!!

早急な支援が必要だと私も他のママたちも、この保育園計画の進行を安全かつ猛スピードで整えることを目標に動き出した。


私は、自分の世界の保育園基準より一人あたりの面積確保を重要と考えた。


なにしろ、子どもとはいえ仔羊なので人間の子どもの基準より大きいので、一人あたりの面積基準は大きく確保するに越したことはない。


それに小さくて困ることはあっても、大きくて困ることはそうないだろう。


建物の説明をガタイのいいサムさんに説明しつつ、どんな物とどんな部屋が必要でとか、作り付けの棚は出来るのかとかあれこれ話しつつ部屋のイメージ図を書いた。


保育士になるにあたって、私が練習したのはピアノと絵を描くことだった。


子ども達に分かりやすく、教えたりするために絵は重要なのだ。

そのため、私は絵を描くことも慣れたものだった。


イメージ図を見せると、サムさんは驚きつつ私をみて言った。


「凄いな。とてもわかりやすい。完成図のように書いてくれて、これなら後はサイズに合わせて上手く作れそうだ」



そんな感じで、色々詰めて話して安全面の配慮すべき事や場所を伝えて今回の初保育園を作ろう会議は閉廷したのだった。


 私の異世界で保育園計画は、その後も順調に進み建物を建設中の現在は一日のお預かりは難しいので午前中に私は畑と農場のそばの空き地であおぞら保育園を実施。

 農場と畑の仕事は朝早くからお昼までで落ち着くことが多いので、午前中のお預かりを敢行した。


 結果、お仕事の効率はとても良くなり仕事が早く終わったお母さんたちから保育園の助っ人も来るようになった。

 やはり、仕事に子どもを連れているのは大変なのだと実感したものだ。


 そして、午後は町の中心の商店の子たちを町の集会場である大広場でお預かりしている。

 商店が忙しくなるのはやはり午後からで、その時間のお預かりを敢行したのだ。


 お客さん相手のお母さんたちに、ありがたいと好評。

 それまでは当たり前に店の前で遊んでた子たちも、大きな場所で複数で元気に遊べる環境を気に入ってくれたようだ。


 そうして、私は午前と午後に二か所で子ども達の面倒を見て一日が終わる。

 夜にはすっかりクタクタだけど、お母さんと子どもたちの笑顔が見られるので頑張れる。

 そんな私に、ローライドさんは笑顔で出迎えてくれてライラさんは美味しいご飯を作ってくれて、カーライドさんはニコニコと甘いものを差し出してくる。


 すっごい甘やかされている感じがするのに、心地よすぎてすっかり甘えてしまっている。

 ローライドさんはハッとして、甘えすぎなことを反省する言葉を口にした私に小さく声を落として教えてくれた。


 「今でこそライラは元気だけれど、カーライドを産んだ後に体調を崩してなかなか二人目が出来なくって諦めたんだよ。ライラは娘を欲しがっていたから、今の状況が嬉しくって仕方ないんだ。だから、ハルナは申し訳なく思わずに甘えてくれると助かるよ」


 ローライドさんと話している今も、ライラさんは楽しそうにキッチンで料理をしている。

 私はその姿を眺めつつ立ち上がってローライドさんに言った。


 「うん、ありがとう。私も嬉しいから、甘えることにしちゃうね」


 そう言って、私はライラさんのいるキッチンに行き夕飯の支度のお手伝いをした。

 それは、ここに来る前にもあった光景。

 今頃、お母さんどうしているだろうか。

 私は元気にやってけそうだから、心配しないでくれると良いけど。

 娘が行方不明ってきっと心配してるよね……。


 帰れないけど、元気にやってることだけでも伝える術があったらよかったのに……。


 そういった思いもあって、私はここでの親代わりなローライドさんとライラさんに甘えつつ、本当の親にはできないことを恩返し的に孝行していこうと密かに決意したのだった。


 異世界人の私をこんなに温かく受け入れてくれたことには、感謝しかないから。


 こうして、自分のことでもいろいろ考えつつも日々は移ろい真夏を迎える前に異世界もふもふ保育園の園舎は完成を迎えたのだった。


 工事は急ピッチかつ丁寧に仕上げてくれて完成した園舎に、私やママさんたちは感動した。

 子ども達用の丸い角のないテーブルに椅子。

 作り付けの棚にも角は無く丸く仕上げてくれている。

 お手洗いの水場もトイレも小さな子どもサイズに作られた端に大人用が二つ作られていた。


 調理場は子どもが入らないようにしっかりとノブは高い位置に、鍵も締まるようになっているけれど、好奇心旺盛な子どもたちが中の様子を見れるように、子どもたちの目線の高さにのぞき窓が設置されるという、その創意工夫は私の絵の中にも無かったもので、とてもいい作りに感動した。


 「サムさん!素敵です!これなら安心して子どもたちと過ごせます! ありがとうございます!」


 私は興奮しつつ、そういうとサムさんは照れくさそうに教えてくれた。


 「ここののぞき窓は、うちの長女の提案でな。中が見えればドアを開けようとしないだろうっていう提案を採用してみたんだ」


 お姉ちゃん、よく分かっている。子どもは見えないものに好奇心を掻き立てられて、ダメってものは気になってしょうがない生き物なのだ。


 「お姉ちゃん、いいアイデアをありがとう。素敵な園が出来て嬉しいわ」


 そう微笑んで、私は可愛いサムさんの長女ちゃんを労ったのだった。


 さぁ、もふもふ保育園素敵な園舎でスタートです!

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