第1304話 それでいいのか父親よ。的なお話
お昼ご飯を食べ終わったら早速馬車に乗り込もうかね。
お昼からという話だけど、あんまり遅すぎるのもどうかと思うし、お昼自体ものんびりしていた事もあって遅めだったから早く行き過ぎという事も無いはずだ。
「あ、その馬車レント様が手配したんですか? そのような事は私どもに言っていただければ手配致しましたのに……。」
「へ? そんな事もしてくれるの?」
「はい。」
「そうなんだ……知らなかった。」
高級なお宿だと宿の人が色々としてくれるという話は聞いたことあるけど、まさか馬車の手配とかもしてくれるとはねぇ……てっきり宿の中だけの話だと思ってたよ。
「それじゃあ、次からはお願いしますね。」
「はい!」
まあ、そんな機会あるとは思えないけど、こういうのは言って水を差すのもどうかと思うし、無いと思うだけで本当にないとも限らない。
いや、無いだろうけどね。
馬車は2台の箱馬車で2頭引き。
華美な装飾が施されているわけじゃないが、目立った欠点もないし問題ないだろう。
俺は手配する時に同行できなかったからどんなのが来るのか分からなかったけど、これなら安心だ。
何が安心なのか知らないけど。
馬車で移動する事約20分。
昨日のリュウガミネ家は10分程だった辺り、家の大きさだけでなく場所も暗黙の了解的なのがあるのかもしれない。
まあ、これも定番だね。
あ、そういえばリュウガミネ家は奴らが関係しているんだし、なんらかの漢字もあるんだろうか?
こう……龍我嶺とか。
家のしきたりとかそういうのからも中二感を感じられるし、当たらずとも遠からずな気がする。
「いや、十分デカイよ!」
馬車を降りて速攻で突っ込んでしまったが、キサラギ邸も十分屋敷と言って通じる大きさだった。
小さいんじゃないの?
ちょっと待て。
本邸ならともかくとか朝言ってなかったっけ?
という事はだよ?
実家はもっと大きいって事だよね?
やっぱ大名家なんだなぁ。
「何奴?」
「彼は私の友人だ。」
「こ、これはユキノお嬢様!? し、失礼しました!」
屋敷の目の前に停まった馬車から出てきて速攻でデカイと突っ込んだ俺に対して門番さんが良くある誰何をし、そしてこれまた良くあるやりとりをユキノと門番さんがした。
今日は定番ネタ多いな。
珍しい。
となると、父親は何処の馬の骨とも分からん奴に娘はやらん! とか言ったりするのだろうか?
「良く帰ってきたな、ユキノ。」
「はい、父様。」
「そしてそちらが手紙に書いてあったレント君とその仲間達だね。歓迎するよ。」
あれ?
テンプレは?
テンプレな父親さんはどこに?
「それで父様、婚約の件ですが、手紙でも書いた通り私はここにいるレントと恋人になりました。なので全てお断りさせて下さい。」
「本当に彼でいいんだね? 二等大名からも誘いが来ているが断ってしまっていいのか? きっと今よりも裕福な生活が出来るだろうし、好き物はいくらでも手に入るはずだ。それでも断ってしまっていいんだね?」
「はい。知らない相手よりも私は自分が好いた相手と一緒になりたいと思います。それに、今の生活を楽しんでいますから。」
「そうか……。レント君……娘を頼む。少々変わった娘だが根は真面目で優しいいい子だ。絶対に幸せにしてくれ。」
「もちろんです。私は……自分が好きになった相手を、手放すつもりは一切ありませんから。例え相手が神であろうと奪わせませんよ。」
「そうか。まあ、周りにいる者達を見れば心配はしていないがな。それだけの女性に好かれるのならば男として優れている証だ。安心して任せられるよ。」
「そ、そうですか。」
そういうお国柄だとは知っていた。
複数の女性に好かれている方が魅力的に見られると。
でも女性の父親からも安心出来るなんて言われるとは思わなかったし、本当にいいのかと逆に心配になってくるんだけど。
それでいいのか父親よ。
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