第1303話 というか続けた。的なお話
馬車の手配をするとなると、まずはどこに行くかだな。
流石に馬車のレンタルとかしてる店が1つだけとは思えないし。
そこで重要なのが値段、サービス、扱っている馬車の種類。
値段は当然としてサービスは馬車だけを貸してくれるのか、御者も一緒に手配できるかというのも重要だ。
それに帰りの時間がいつになるか分からないから待たせる事になるけど、それでもいいというのじゃないと困る。
後は馬車の種類。
人数が多めだからね。
幌馬車とかならまあ詰めれば全員1台に乗れるだろうけど、それじゃあレンタルする意味がなくなる。
だからゆったりと座れる箱馬車がいい。
後見た目もねぇ……個人の偏見だけど幌馬車と箱馬車なら箱馬車の方が高級に見えるから大名家に行くなら箱馬車の方がいいと思う。
まあ、レンタルなんですが。
数は2台が好ましいかな。
1台は窮屈だが、かといって3台に分乗だと数が多すぎる。
そこまでいくと迷惑だろうから2台。
考えるべき事はこれくらいか。
お店の場所はユキノやコハルさんが知ってるだろうし、2人のどちらかと一緒に行こうかな。
「あ、レントはゆっくりしていていいぞ。」
「なんで!?」
「いや、流石に契約するのに変装したままというのは失礼であろう? かといって変装しなければ面倒な事になるであろうし、ならば出掛けぬに越した事はないからな。」
「折角、馬車を借りるならって前提で色々考えていたのに……。」
「それはすまんな。まあ、それよりもレントは他にしておくべきことがあるんじゃないか?」
「他に? 何かあったっけ?」
「あ、分かった! 多分あれだよね、ユキノちゃん。」
「うむ。あれだな。」
「あれって……?」
「アルバとマロンのご機嫌取り。ここのところずっと構えてなかったし、この後別の馬車に乗るんだよ? 今のまま何もせずに放置していたらどうなる事か……。」
「うっ……。」
頭突きどころか蹴られるかもしれん。
人の恋路は邪魔してないのに蹴られるのは勘弁願いたい。
◇
アルバとマロンに構っている間に結構な時間が経っていたみたいで厩舎から戻ってきた時には既に契約を結びに行った面々が帰ってきていた。
早いというべきか、長居しすぎたというべきか……。
「どうだった?」
「あー、やっぱかなり機嫌が悪かったな。何度頭突きされた事か……。」
「やっぱり……それで許された?」
「なんとかな。俺、馬に膝枕したの初めてだわ……。でもしかし、なんでこうも俺にだけ当たりが強いんだろうな? 好かれるにしても行き過ぎな気がするけど……、そこまで嫉妬深い種類だったりするのかね。」
「いやー、それはいつもの事というかなんというか……ねぇ?」
「ん。モテモテ。」
いやいや、流石に馬にモテるっていうのはなんか違くね?
だって人型ですらないじゃん。
懐かれているんだろう事は分かるけど、流石にそれはないよね?
ま、まあ、人化する事も無いだろうし気にしないようにしておこう。
うん。
俺に動物をそういう相手として見るような癖はないし。
「膝枕といえば……ユキノちゃんはまだレントにしてもらった事なかったよね?」
「膝枕の事か?」
「そうそう。」
「当然あるわけがなかろう。昨日の今日だぞ?」
「だよね? だからさ、話に出て丁度いいし今からやってもらったら? お昼ご飯までは後少しだけ時間あるしさ。」
「いや、それをしたら服が皺になるだろうし、それにそういうのは普通逆なのでは……?」
「逆って事は、ユキノさんもお兄さんに膝枕したいって事ですか?」
「そうは言っておらぬだろう!? いや、したいかしたくないかで言えばしたいが、でもそういうのは今するべき事じゃないだろう!?」
「だったらレントに決めてもらおうよ。したいかされたいかでさ。」
「ちょっと待て! その中にしないという選択肢が無いのだが!?」
「どうする?」
「え? そりゃあ、してくれるのならして欲しいけどさ。」
「というわけで、ユキノちゃんがレントに膝枕をするに決定しましたー。レントに膝枕してもらうのは帰ってからだね。」
「それも確定なのか!?」
セフィア達が有無を言わせぬ勢いでユキノを座らせてそこに俺が寝転ぶ。
柔らかい太ももに黒い髪に赤い瞳、そして恥ずかしさと照れくささで赤面する美少女を見上げるというこのシチュエーション。
端的に言って最高だね!
俺が動こうとしなかったというのもあるだろうけど、ユキノの膝枕はお昼ご飯の時間になるまで続いた。
というか続けた。
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