第1256話 どんだけ慌ててんのさ。的なお話
「なんだこの騒ぎは!?」
このままアデルを持ち帰り……じゃない。
アデル達を連れて武闘大会の会場に入ってしまいたかったけどそうはいかないようだ。
まだ酔っ払い達は武力行使をして来てないから警備の人達にはお引き取り願いたいんだけどなぁ。
「ちっ! おい、行くぞ。」
「あ、待て! まずはあいつらを捕まえろ!」
過激すぎやしないかい!?
そう思うも酔っ払い達は酔いのせいで移動速度が遅くすぐに警備の人達に捕まってしまう。
その間にリーダーらしき男がこっちの方にやってくる。
しかしこの人、警備をしていながら格好はそうは見えない。
多分、冒険者なんだろう。
流石に衛兵隊とかそういう人達だけではこの封竜祭の警備全てを賄う事は出来ないだろうし、そうなると臨時で冒険者とかを雇うというのも当然と言える。
「何があったか説明して欲しいんだけど、いいか?」
「俺はよく分かってないんですよね。連れが絡まれていたから割り込んだけど、すぐにあなた方が来ましたので。アデラードさん、何があったか教えてくれませんか?」
「あ、うん。レントがセフィア達を探しに行ってすぐにセフィア達がやって来たんだけど……」
「ちょっと待って。すぐにって言った?」
「うん。」
「そう……。」
マジかよ……つまりはあれか?
あの人の波を頑張ってかき分けながら探していた時間は全くの無意味だったって事?
しかもだよ?
俺がいなかったからこそ、絡まれたって見方も出来なくないかこれ?
いや、俺1人では大したことないかもしれないけど、それでも男がいるかどうかで変わってくるじゃないか?
なんで気付かなかったんだよ俺!
……はぁ。
空回ってんなぁ。
「続きお願い。」
「うん。その後しばらくしたらあの酒に呑まれたクソガキ共が絡んで来て、最初は軽く声を掛けてナンパしてくる感じだったんだけど、徐々に図々しくなって来たから少し強めに拒絶したところ……」
「アデラードさんをガキ呼ばわりしたと。」
「そうなんだよ。全く失礼しちゃうよね。」
この見た目で年上だとは誰も思わないだろうけどね。
そこが可愛いんだけどさ。
「そうですか。では、暴力行為などは無かったのですね?」
「うん。その前にレントが来て、君達が来たから。」
「そうですか……となると、今回は厳重注意をするだけという事になりますが、それでいいですか?」
「みんながそれで良ければ俺はそれで良いです。」
「うん。まあ、私も文句言って少しだけスッキリしたからそれでいいよ。それ以上だと手続きとか面倒になるだろうし。」
「セフィア達もそれで良いか?」
「うん。元はと言えば僕達が遅れたのが原因だしね。」
「いや、そこは関係ないだろ。酔って絡むという選択をしたのはそいつらなんだから。でも、気にしないという考えはわかった。」
そんな感じでこっちが訴える気がないというのは伝わったみたいだったので俺達はすぐに解放してもらえた。
酔っ払い達は厳重注意という名のお叱りを受けるのでもうしばらく留まることになったけどそれは自業自得というものだろう。
衆人環視の中で大の大人が叱られるというのは結構精神にくるだろうけど、ま俺が気にする事じゃないな。
酒は飲んでも呑まれるな。
定番の言葉だろ。
常識と言えるほど浸透してるか分からないから言わないけど。
酔っ払い達の相手が済んだので、次は本命の武闘大会だ。
誰も参加しないけど、折角一筆書いてもらったわけだし使わない手はない。
まあそれに、俺も気になるしね。
強さとかは別に最強を目指しているわけじゃないけど、それでもいつかはアデルの横に立ってても恥ずかしくない程度にはなりたいと思ってるし、こういうのを見ておくのも良い経験になると思うんだよね。
見る事も修行の一環じゃーってね。
「チケットを拝見します。」
「チケットではないですが、こんな物がありまして。」
「? 拝見させて頂きます……こ、これは!? い、今すぐ係の者を持って、いえ、連れて来ます! 貴方様方はそこを動かないでください。お願いします!」
えぇ……?
なんか、すっごい慌ただしくなったんですけど。
というか持ってきますって言おうとしたよね?
どんだけ慌ててんのさ。
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