第1257話 龍神だって出てくるだろうよ。的なお話
5分ほど待った所でさっきの人が何やら女性と思しき人を肩に担いでやって来た。
本当に持ってきたよ……。
というか女性を肩に担ぐのは男としてどうかと思うぞ。
男の矜持としてはもちろんのこと、セクハラになりかねない行動は控えたほうが身のためだ。
だが、お叱りは受ける事なく降ろされた女性は即座にこちらを向いて話しかけてくる。
「レント様でよろしいでしょうか?」
「あ、はい。」
ここでカツラと眼鏡を外す。
一筆書いてもらったけど、その内容までは把握してない。
多分仲間を入れてくれるようにとか、席を用意してくれとかそういうのが書いてあったんだろうけど、流石に変装の事までは書いてないだろうし今のままレントですと言っても理解してもらえないだろう。
だから変装を解いてみせる必要がある。
ふぅ〜。
カツラがズレないか心配で頭かけなかったんだよね。
蒸れるし、痒いしで結構大変。
眼鏡は結構簡単に慣れたんだけどね。
痒くならないし。
「では、どうぞこちらへ。」
無事に確認してもらえたので、そのまま案内されると、何やらすごく豪華な椅子やら机やら絵画やらがある部屋に案内された。
えっと……ここって王侯貴族が案内される場所じゃないのかな?
場所間違えてません?
というか間違えてて!
お願いします!
こんな所で観戦とか完全に場違いだよ!
落ち着かないよ!
「なにぶん急な事ですので席の準備がまだ出来ておりませんので、すぐに新しい椅子をお持ちしますので少々お待ちください。」
「あ、はい。」
お待ちくださいと言われても……どうしたらいいんだろう?
え、座っていいの?
でもそれもなんか場違い感があって本当に座っていいのか躊躇われる。
汚したらどうしよう?
絶対高いよねこれ。
イツキ家具店製なら凄く安心できるけど、流石にそう上手くはいかないだろうなぁ。
「新しい椅子をお持ちしました。」
そう言って何人かのスタッフさんを伴って部屋に入ってくるとすぐにセッティングをしていく。
その際になんか高そうなお酒とグラス、そして果物類や軽食なんかをも置いていく。
サービスなんだろうか?
そんな戸惑いをよそにすぐにセッティングが終わり全員が座れるようになった。
「では、私どもはこれで。すぐ外に控えておりますので何かあれば気軽にお申し付けください。それではごゆっくりどうぞ。」
えーと……とりあえず座るか。
突っ立ってるのもどうかと思うし、というかもう考えるのが面倒だ。
アデルなんかはこの程度慣れたものみたいで既に座ってるしさ。
座り心地はヤバかった。
お尻の下も背中もフワッフワで肘置きなんかは滑らかで触り心地が素晴らしい。
明らかに高級品だと分かる。
「お、お、お、おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! す、凄い! 本物だよこれ!?」
「どうしたんですか急に。」
「これだよこれ! 龍神だよ龍神! ヤマト幻の伝説のヤマト酒だよ!」
「それって前にアデラードさんが飲みたかったって言っていた?」
「そう! その龍神! なんであるのかは分からないけど、凄く興奮してきたよ! 飲んでいいよね? これって飲んでいいんだよね!?」
「た、多分そうだと思いますよ。」
「だよね!? じゃあ早速!」
「あ、俺の分もお願いします。折角なんで。アデラードさんがそこまで興奮するお酒を飲んでみたいですから。」
「いいよ。どう考えてもこれはレントのお陰だからね。」
あ、そうか。
なんでこんな扱いなのかと思っていたが、俺は国賓みたいなもんだったからか。
ただでさえ俺は勇者役として国に招かれたわけで、更にその上でミコの一筆まで見せられたんだ。
そりゃこうなるよね。
どうもこの国の人にとっては帝というのは絶対的な存在みたいだし、そんな人からの口添えがあったらこんな扱いを受けるのも納得できるというもの。
龍神だって出てくるだろうよ。
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