第1255話 抱きしめてよかですか? 的なお話
集合場所である武闘大会会場にたどり着いわけだが、セフィア達は見当たらない。
紹介状は俺が持ってるから先に入っているってことはない。
なので、まだ来てないって事なんだろうな。
お昼にはまだ少しだけ早いしもう少し待てばやってくるだろう。
そう思っていたんだけど、なかなか来ない。
もうかれこれ20分は待っている。
セフィア達がそんなに時間に遅れるなんて、これは何かあったんじゃないか?
心配だ。
まだ蒼井の奴が二度寝したせいで遅れるとか、蒼井が何かにハマって……例えばさっき俺達がやっていた謎解き細工に躍起になってたりとかして遅れているという可能性もある。
あるけど……やはり心配だ。
そこから更に10分ほど待ったけどまだ来ない。
おかしい……これは流石におかしい。
セフィア達がここまで遅れるなんてどう考えても……待てよ?
武闘大会の会場とは言ったが、細かな指定はしてなかった。
ならば、別の入り口付近で待っているんじゃないのか?
「ちょっとその辺見てくる。」
「あ、レント! ……あっ…から………んだ……」
アデルが何かを言っているけど、ごめん。
今はセフィア達が心配だから後で聞くよ。
会場の周りという事もあり、様々な屋台が立ち並ぶ。
会場で食べられるように片手で持てる物が多い。
食べ物以外にも飲み物やスープなんかも売ってる。
そして今はお昼半ば程なので当然のように人が多く、人を探している俺にとってはとても困った状況となっている。
くっそ。
めっちゃ探しにくい。
セフィア、リリン、ルリエなら豆粒くらいの大きさにしか見えなくても分かる自信があるが、ここまで人が多くてはその自信もクソもない。
だって見えないもの。
目の前に広がる人の波の前では、面影を見ることすら出来ない。
なんとか人の波をかき分けつつ一周したものの、結局セフィア達は見つからなかった。
本当に何があったんだろうか?
もしやすれ違ったりしたのか?
それとも、同じ時期に同じように会場の周りを回ったとか?
それなら会わなかったのも説明がつくが……とりあえずアデル達と合流しよう。
二次遭難というか、二次迷子になりかねないし。
「ん? なんだあそこ……って、何してやがんだコラァ!」
アデル達が、酔っ払いに絡まれていた。
しかも、アデル達だけではなくそこにはセフィア達までいたりする。
俺の苦労は一体……と思わなくもないが、そんな事よりも今はあの馬鹿どもを抹さ……始ま……消すのが先だ。
「だぁれがガキだってぇ!? お前らみたいな女性を女性として扱わないクソガキにガキ呼ばわりされる筋合いないわ!」
と思っていたんだが、その必要はなさそうだ。
どうやらあの酔っ払いども、アデルの逆鱗に触れたみたい。
大方、セフィア達には声をかけたりしたけどアデルに対してだけはガキに興味はないとかそんな事を言ったんだろうな。
圧倒的な強さに豊富な経験から来る数多の知識、それでいて幼い体躯という神秘的な雰囲気が素晴らしいというのに……全く見る目がないねぇ。
アデルはあんなに可愛いのに。
「はい、そこまで。落ち着いてアデラードさん。見る目のない阿呆の相手をしたところで時間の無駄ですし早く中に入りましょう。」
「だって、この馬鹿どもが……。」
「アデルが可愛いのは俺が1番知ってるから。それにそんなに怒ると可愛い顔が台無しだよ。」
ぐあぁぁぁ。
せ、背中が……。
宥めるためとはいえこのセリフはキツい!
背中がむず痒くなる!
本心だよ!
本心だけど、こんなの俺のキャラじゃない!
すっごく恥ずいしむず痒い!
「あ、うん……。」
だがしかし。
その甲斐あってかアデルには効果覿面だったようで、顔を真っ赤にしてる。
うん、可愛い。
抱きしめてよかですか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます