第1246話 相手にされるわけないよね…。的なお話

〜アルフレッド視点〜


この衣装を着ると、いよいよって感じがしてきて、緊張するな……。


「そんな緊張しなくても良い。失敗しても私がしっかりと援護する故、どんと構えておれば良い。」

「そんな分かりやすい顔してました?」

「うむ。今にも倒れそうだぞ。」

「そんなにか……。」


失敗したら愛想を尽かされるんじゃないかって気が気じゃないから仕方ないけど、でももう出来ることなんて何もない。

後は全力で演じるだけだし、頑張らないと。


「では行くとしようか。」

「う、うん。」


一旦深呼吸をして心を落ち着けてから、部屋から出る。

そこには既に着替え終わったキリハさんが立っていて、多分待っていてくれたんだと思う。


「やっぱり似合ってますね。」

「まあ、レントには負けるけどね。髪の色もレントは黒だけど僕は茶色だから。」

「いや、髪の色はカツラを被れば良いし、問題なく似合っておる。」

「ありがとう。」


まあ、似合ってるというのならそれはいい事だ。

英雄っぽく見えなかったらせっかくの演舞も台無しだから……自分が英雄には相応しくなくても、ね。


そして始まる演舞。

一挙手一投足、指先から足先に至るまで神経を張り巡らせていくが、やっぱりダメだ。

レントはもっとこう……キレがあった。

いや、今は自分の演舞に集中だ。

ここで一旦防御に周りキリハさんの支援魔法が完了するまでひたすらに耐える時。


ヒサギさんの猛攻を凌ぎ切り、次はこっちの攻撃……しまった!

力が強過ぎた。


「ぐぬっ……はぁっ!」


ありがとう、ヒサギさん。

強く打ち込み過ぎたが、しっかりと受け止めてくれた。

後でお礼を言わないと。


僕のミスがあったものの、それ以外は問題なく演じきり見てくれた街の人達も満足してくれたみたいだ。

良かった。

少なくとも見慣れているであろう人達にがっかりさせることにはならなくて。

これなら……えっと、これから、僕は告白するん……だよね。

どうしよう……演舞よりも緊張する。

やっぱり告白はやめようかな……?

レントよりも上手く出来た気がしないし……まだ早い、と思う。

うん。

まだ早いよ。

告白はまた別の機会に……。


「アルフレッド、居るか?」

「レント? あ、うん。居る。」

「入っていいか?」

「大丈夫だよ……って、なんでアザミさんが!?」

「連れてきた。がんばれ。」

「そんな無茶苦茶な!?」


いくらなんでも急すぎるよ!

それに僕は告白しないと決めたばかりなのに……。

助けを求めてレントの方を見るけど、無視されてるし……。

あー、もう!

振られたらレントのせいだ!


「アザミさん!」

「何?」

「ぼ……僕の演舞、どうでした?」

「良かったわよ。どこかの誰かさんは転んでいたらしいけどあなたはそうならなかったしね。」


その誰かさんというのはレントの事だろう。

言われた時少し表情を歪ませていたから。

そっか……レントでも失敗するのか。

あんなに強くて完璧だと思ってたけど、失敗したのか。

ちょっとだけ安心した。


「それなら、良かったです。それで、その、演舞が上手く言ったら言おうと思っていたことがあって、聞いてもらってもいいですか?」

「ええ、いいわよ。」

「……アザミさん。あなたの事がずっと好きでした。僕と結婚を前提に付き合ってください。」

「……え? え、ちょっ、ま、は? ええええええ!?」


ものすごく驚かれた。

でもそれって、そういうふうに意識してなかったって、事だよね?

それはつまり、多分そういう事なんだよね?

あはは……そっかぁ。

まあ、そうだよね。

元々僕となんか釣り合ってなかったししょうがないよね。

所詮僕はスラム出身の薄汚れた人間だ。

大名家の人間に相手にされるわけないよね……。

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