第1247話 上手くいって欲しいな。的なお話
アザミを連れて来たら後は立ち去ろうとしたんだけど、なんかアルフレッドが情けない顔でこっちを見て来た。
多分、ここで立ち去ったら逃げる。
もしくは告白せずなあなあで済ませるんだろうなぁ。
俺も、アカネに告白というか、そういうのをした時凄く辛かったし、アデルの時も泣きそうになったこともあった。
だから、怖いというのは、辛いというのは分かる。
でも、ここでアルフレッドが逃げたら次の機会があるとは思えない。
だから、立ち去らない。
ちゃんと告白するのを見届ける。
それが連れて来た俺の務めだ。
アルフレッドが告白して、アザミが驚きの声を上げる。
うるさっ!
めっちゃ声でかいな。
それだけ驚いたってことだろうな。
そして、その声を聞いてアルフレッドが泣きそうな顔してる。
なんでだ?
「ご、ごめんなさい! あ、いや、あなたの事が嫌いなわけじゃないのよ! ただ、なんて言うか、その……そう! お父さん! お父さんがなんて言うか分からないから! 私は別に嫌いじゃないし、どうしてもって言うのなら付き合う事もやぶさかじゃないんだけど、お父さんがなんて言うか分からないから……。」
「えっと……。」
「そ、そういうわけだから!」
「あ、アザミさん!」
逃げたよ。
アルフレッドが逃げるのを阻止したらアザミの方が逃げた。
何がそういうわけなんだとツッコミたいが、あの様子からして多分そういう事なんだろうなぁ。
ツンデレ乙。
「……結局僕は振られたんですよね?」
「は?」
「だって、ごめんなさいって言われたし、それにお父さんがって……だからだめなんだと思うんだ。ああ言ったのはきっと僕を傷つけないためで、アザミさん本人は親が決めた事には従うって事でしょ? そんなの、どう考えたって……。」
「待て待て待て! 何でそうなるんだよ!? あれはどう考えても照れ隠しだろ!」
「そっちこそ、どうしてそうなるの? 普段のアザミさんを知らない癖に。」
「いや、知らないけど……というか、1つ聞きたいんだけど、アザミって家継ぐ事が決まってたりする?」
「突然なんだい?」
「いやほら、もしそうなら相手もそれなりに格が必要だけどさ、そうじゃないならアザミは女だし絶対に大名とか貴族とかそういう生まれである必要は無いんじゃないかって。それに、アザミは婚約者がいるとは言わなかったし、親がなんて言うかというのは逆に考えれば親が認めれば付き合ってくれるって事になるだろ? ならさ、諦めるにはまだ早いだろ?」
「はは……そうだといいね。」
「どんだけ気落ちしてんだよ……。」
あーもう、こういう時どうしたらいいんだ?
教えてクルト先生。
なんでこういう時にいないんだよ。
いつもなら意味もなく突然現れるくせにさ……。
その無駄に振られて来た経験を今こそ活かす時だろうが。
「とりあえず、今は着替えて帰れ。ほんで、頭冷やせ。風呂入って頭冷やして、それから自分がどうしたいか考えろ。諦めるかどうかをさ。」
「……そうするよ。ごめんね、相談に乗ってもらったのにさ。」
「だから、そんな否定的になるなよ。いいからほら、とっとと着替えて休め。」
どう考えてもただのツンデレだと思うんだけどなぁ。
はぁ……良かれと思ってやったのに裏目に出ちまったかな?
でもあのまま何もしなかったらきっと本当に何も無いまま終わってた可能性もあるし……どうしたら良かったんだろうな?
分からない。
分からないけど、これからどうなるかは本当にアルフレッド次第か。
上手くいって欲しいな。
相談に乗って焚き付けた側としてはさ。
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