番外編 クリスマスif 〜日本編〜

「今年ももうクリスマスとは……時間が経つのは早いもんだ。」

「そうね。それにしても、本当に寒いわねぇ……ルナ、大丈夫?」

「寒い……辛い……。」

「まあ、バイト先はもうすぐだしそれまでの辛抱だ。」

「頑張る……。」


季節は冬真っ盛りというか、クリスマス目前。

折角のクリスマスという事でクリスマスパーティーをやろうという事になったのだが、金が無い。

家がそれなりに裕福なので小遣いも多めだったのだが、この時期はまあ、結構散財するんだよね。

油断してた。

なのでバイトをする事にしたら他クラスの2人も一緒になった。

その2人が金髪美少女のアレクシアさんと紫髪に褐色美少女のエルナさん。

この2人は幼馴染み……ではないらしいが、同じように海外から来たという事で随分と仲がいい。

アパートの部屋が隣同士らしいし。


「でも本当にいいの? 折角のクリスマスパーティーなんでしょ?」

「ああ。確認したら是非って言ってたし。と、そろそろ着くな。」


バイト先は割と定番なのかは分からないがケーキ屋。

漫画とかではよく見るけど、実際にやってるかと言えば微妙なんだけど、今回は運良くバイト募集してた。

クリスマスシーズンで書き入れ時なんだろうな。


「あ、来たね。待ってたよー。」


この子供に見える人はアレクシアさんのはとこで大学生のアデラードさん。

見た目小学生だけど歴とした女子大生。

飛び級もしてないらしいけど……いまだに信じられない。

人体の神秘だな。


「ねぇ、レント……今変な事考えなかった?」

「い、いえ、何も考えていません! サー!」

「そう。」


こえー。

なんで分かるんだよ。

やっぱり見た目は本人的にかなりのコンプレックスのようだ。

ここは逃げの一手。


「じゃ、じゃあ、俺着替えて来ますんで。」


着替えるのは当然の如くサンタ服。

俺みたいな素人がケーキ作りに参加出来るはずもなく、仕事内容はケーキの売り子兼イートインコーナーへの配膳だ。

エルナさんとアデラードさんはケーキ作りを手伝うけど。

2人ともケーキに限らず料理も上手いらしい。

それはアレクシアさんも一緒らしいけど、俺1人に売り子を頼むわけにもいかないからと俺と一緒の内容となっている。


「な、何よ……?」

「いや、やっぱり似合うなと思って。」

「そ、そう……ありがと。」


やっぱりサンタ服を着た金髪美少女は最高だ。


「あら、やっぱり2人とも似合うわね。2人を選んだ私の目に狂いは無かったわ。これなら集客率アップ間違いなしね。それじゃあ2人とも、よろしくね。」

「「はい!」」


まあ、俺がどの程度影響力あるかは分からないけど、アレクシアさんのこの似合いっぷりならば問題なく集客率アップするだろう。

こんなのテレビでもなかなかお目にかかれないレベルだし、むしろ漫画やアニメの世界レベルと言っても過言じゃない。


「いらっしゃいませ〜。」


スマートフォン片手にしながら3人の女子高生が入店して来た。

最近はスマートフォン片手にってのが割とデフォルトになってるなぁ。

足元見えないの怖くないのかな?

俺は怖い。


「本当に居た。イケメン&美少女店員……。」

「でしょー。SNSで話題になってたんだもん。地元でこんな話聞いたら来ないわけにはいかないっしょ。」

「だよねー。」


どうやら俺はイケメンらしい。

見た目は割と整っているとは思っていたが、かといって俺イケメンなんだ〜なんて堂々と言えるほど肝が据わっていないし、そもそも自分の審美眼にはあまり自信がないから。

とはいえ、流行とイケメンには目がないであろう女子高生が言うのだから、ある程度イケメンであると思ってもいいのかもしれないな。

……やったー!


「ご注文をどうぞ。」

「私はクリスマス限定ショートケーキで飲み物はカフェオレ。」

「私はブッシュドノエルと同じくカフェオレ。」

「えー、ブッシュドノエルカットで食べるの? 普通一本まるまる買わない?」

「それだと太るじゃん。」

「それもそっか。じゃあ私もブッシュドノエルで。飲み物はアールグレイでお願いしまーす。」

「ご注文繰り返させていただきます。クリスマス限定ショートが1つ、ブッシュドノエルのカットが2つ、カフェオレが2つにアールグレイが1つでよろしいでしょうか?」

「よろしいでーす。」

「では合計で2380円となります。」

「私が一旦払うから後で代金頂戴よ?」

「分かってる分かってる。」

「もちろん。」


さっきの女子高生ズが注文した後も次々とお客さんがやってくる。

SNSで話題になってたって言ってたけどもしかしてこの後も……まさかね。



そのまさかは的中した。

全然客足が途切れないし、予約しに来る客も俺とアレクシアさんを見に来る客もクリスマスシーズンだからとケーキを食べに来る客も来るのでもうてんてこまいで、もう本当に大変だ。


「チーズケーキ上がったよ!」


「店長、クリスマスケーキホール予約5件追加です!」


「今度はチョコレートケーキ無くなりました!」


「倉庫からイングリッシュ・ブレックファストの茶葉持って来て!」


「フォーク足りないって!」


あれが足りない、これが足りない、そんでクリスマスケーキの予約はどんどん増えていくが、なんとか学生ラッシュと奥様方の注文ラッシュが収まったが……あー、もう、疲れた!

2時間近くひっきりなしだったよ。

人数はそこまで多くないから休むことすら出来なかったし、本当大変だった!


「波も収まったし順番に休憩していって。あ、それと一品だけなら商品のケーキ食べていいから。」

「じゃあアレクシアさん先に休んでいいよ。」

「え、いいの?」

「俺まだ体力余ってるから。」

「それじゃあ、先に休ませてもらうわね。」


嘘です。

もう本当に疲れてます。

でも俺だってちょっとくらい見栄張りたい時くらいあるよ。


「おーっす。ちゃんと働いてるかー?」

「……なんだ狗瑠人か。お客様? お帰りはあちらになります。」

「帰れってか!? まだ来たばっかだろうが!」

「お客様。他のお客様のご迷惑になるのであまり大声は出さないでもらえませんか? というか、出すな。」

「命令したよこの店員!」

「いくら芸人志望だからってこんな時まで練習しなくていいだろう。というかあまり巻き込むんじゃない。」

「お前のせいだろうが!」

「まあまあ、狗瑠人も落ち着いて。」

「なんだ、魔理奈さんも居たのか。ご注文は何になさいますか? おすすめはこちらのクリスマス限定ショートケーキとなっております。」

「対応に差がありすぎだろ!」

「お客様のご注文はうさぎでよろしいでしょうか?」

「なんでだよ! うさぎなんて買って何すんだよ!?」

「あ、私はクリスマス限定ショートケーキとダージリンを下さい。」

「かしこまりました。」

「おい!」

「で、注文は?」

「急に冷めんな! こっちが恥ずかしくなるだろうが……ったく。レアチーズケーキとホットコーヒー。」

「アイスミルクとホットコーヒーのブレンドですね?」

「それただの生ぬるいコーヒー牛乳!」

「合計で1520円となります。」

「無視か!」


ま、流石に生ぬるいコーヒー牛乳は持っていかないけどな。

えーと、魔理奈さんが限定ショートとダージリンで狗瑠人がレアチーズケーキとホットコーヒーだったな。

全部用意すると狗瑠人がホッとしていた。

なんでだろう?

あんなのただのボケだろうに……。


「お疲れ様。休憩終わったから次休んで。」

「ああ。分かった。」


アレクシアさんと交代で休憩を取った後、再びバイトを再開するが、時間もそれなりに経っているという事もあって客はそこまで来る事もなく、そのまま閉店時間の午後7時になってバイト終了となった。


「それじゃあ、明日もよろしくね。」

「「「はい。お疲れ様でした。」」」


仕事も終わり、4人で駅に向かう。


「バイト前の話の続きだけど、クリスマスパーティーって何が必要なの?」

「取り敢えず各自で食べ物とかお菓子とかジュースとか持ち寄って、プレゼント交換とかする予定。後はまあ、定番だけどゲームするかな。」

「え、クリスマスパーティーするの!?」

「しますよ。アデラードさんも来ます?」

「いいの!?」

「折角ですから。」

「嫌だって言っても絶対行くからね!」

「言いませんよ。」


なんとなく誘ったが、こんだけ喜んでくれるなら誘ってよかった。

女子大生ならそういうのいくらでもやってそうとは思うが、まあ、誘いにくいんだろうな。

色んな意味で。


「ねぇレント君。讃美歌は?」

「讃美歌? あの海外ドラマでやってる?」

「あー、日本だとそういう認識なんだ。」

「キリスト教の教会とか行けばやってるかもしれないけど、一般人はまず歌わないな。」

「そうなんだ。」

「食べ物、何持ってけばいい?」

「と、そうだな。ウチがチキンとパン、サラダ、スープを用意するから他のみんなはそれ以外で好きなのをって話だよ。じゃなきゃみんなチキンを持ってくるなんて事になりかねないしな。」

「ありそうね……。」


そんな事を話している間に駅まで着く。


「じゃあ、私達はこっちだから。」

「じゃあ、また明日もよろしく。」

「ええ。」

「はい。」

「クリスマスパーティー絶対行くからね!」

「はいはい。待ってますよ。」


さて、そんじゃま、帰りますか。

しかし、3人追加か。

当日がより楽しみになったな。

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