第1240話 紹介するタイミング無かったね。的なお話
場所を移したが、まだ人通りは多い。
今は封竜祭の真っ最中。
しかもその初日だからね。
当然人は祭りを見るために出歩く。
だからこうして大通りから外れた場所に来ても結構人が歩いていたりする。
それでも大通りの方に比べたら少ないんだけど。
「ここでもまだ人多いしどこか適当な店に入るけどいいよね?」
「構わぬぞ。」
「ま、しょうがないしね。」
うーむ。
まだ険悪なムードだなぁ。
リリンに一緒に連れてきてもらったであろうリナさんとアイリスさんは話についていけなくというよりも、険悪なムードに気後れして縮こまってしまっているし、なんとかしないと。
えーと……あそこは宿屋っぽいな。
この世界の宿屋は基本食堂とか酒場も兼業しているし、あそこなら人も少なそうだ。
今の時間帯で祭りをやっている中わざわざ食堂に居座る理由なんて無いだろうし。
そんなわけで宿屋併設の食堂で簡単につまめるものを注文して席に着く。
客は案の定というか予想通り居ないしここならば話をするのには打って付けだろう。
まだ店の人がいるけど。
でもそれは店だから仕方ないし声の大きさを抑えればなんとかなる……はず。
ーーパチンッ!
「防音結界を張った。これで話もしやすいであろう?」
「そうだな。助かった。」
「で、結局、これはなんなのさ?」
「妾をこれ呼ばわりとは……怖いもの知らずだの。」
なんでどんどん険悪になっていくんだよ!
「こいつは火神子。この国の帝で地球は日本の初代女王で太陽の神天照大御神の娘だそうだ。」
「は? 待って……日本って言った? というか神の娘……?」
「そうらしい。」
「……神って、面倒なのばっかりなの……?」
「いや、ダンジョンの時のはともかくアリシアさんの時のは自業自得でしょうに……。」
「妾を面倒なの前提で話すのはやめてもらえぬかのう……。」
「で、こっちがアデラードさん。西方大陸にある迷宮都市と呼ばれるリステルって街の冒険者ギルドのギルドマスターでグラキアリスの男爵でもある。一応、望めば大体の爵位は貰えたらしいんだけど、面倒だからって男爵の爵位だけもらったんだったかな。勇者の師匠でもある。後、俺の恋人。」
「ほぅ……恋人、ねぇ。」
「なんだよ?」
「いや何、こういうのが趣味なのかと思っての。」
「人をロリコンみたいに言うな。普通に歳上だし、それに見た目だけで選んだわけじゃなくて、見た目とか内面とかそういうのを全部ひっくるめて好きになったんだ。たまたま好きになった人が見た目ロリだっただけだ。」
「おい、私を子供扱いするな。」
「ごめんなさい。」
声が、マジトーンだった。
凄く怖かった……。
「素性は分かったけど、それでなんでレントがこの人とデートしてたのさ。」
「で、でで、デートではないわい!」
「怪しい……。」
「そんなんじゃないよ。アデラードさんなら分かると思うけど、立場が上になると窮屈で羽を伸ばしたくなる時とかあると思うんだよ。」
「あるね。いつもそうだよ。」
「いや、もう少し仕事しようよ……。まあ、そういうわけで偶には出歩きたいって言っていたんだけど、1人だけでってのは味気ないし、かと言って一緒に行くほど気安い関係の人もなかなか作れない。そんな中で白羽の矢が立ったのが俺だったってわけ。半神半人でこの世界の出身じゃないから対等な立場とはいかなくともそれなりに近い関係の人なんてまず居ない。でも俺は同じ日本出身で神とも親しいからね。それに、これまでも結構仲良くしてたってもあるし。」
「言いたい事は分からなくもないけど……。」
「それに、この祭りの真実とかも知っちゃうとほっとけなくてね。」
「真実……そう。ならしょうがないか。今日の残り、レントを貸してあげる。」
「よいのか?」
「まあ、私も色々と面倒な立場だからね。気持ちは分からないでもないから。でも、今日だけだし、遊びに行く事しか許さないから。」
「ふっ、分かっておるわ。」
なんかよく分かんないけど、許してくれるみたい。
「私達、完全に空気っすね。」
「そうですね。」
そういえば紹介するタイミング無かったね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます