第1239話 どう考えても不味いだろうしね。的なお話
屋台巡りをする事10軒目でようやく満足したようだ。
というか、これまで何度も集りに来てたというのにあれでまだまだ加減していたんだと知って驚いている。
どんだけ食うんだよ……。
全部で2万リムも使った。
高級なお店とかなら2万も珍しくない……いや、珍しいな。
そうそうないぞ、そんな店。
それなのに屋台で2万ってのはどうかと思う。
しかもまだお昼がわりに食べているだけでだ。
この後他の土産物とか遊ぶのとかそういうところに行くかもしれないと思うと……ね。
「どんだけ食うんだよ……。」
「流石に全部を今すぐ食べはせぬ。時間もかかるしの。それよりも次に行くぞ。」
次ってどこですかね……?
金魚掬いとか?
「あ、やっぱりレントだった。」
「セフィア? それにみんなも……。どうしてここに? やっぱりって?」
「んーと、アデラードさん達と祭りを見て回っていたんだけど、そしたらレントの匂いがしたから探してたんだ。」
「私も気配で気づいた。」
「私は声で分かりましたよ。」
何それウチの嫁達ヤバくない?
そんなんで分かるとか……普通に凄いんですけど。
そうなると他のみんなはどうなのか気になるのでそういう意味を込めて見てみる。
「いや、私達はそんなこと出来ないから。出来るのはその3人だけよ。」
それでも3人は分かるのに変わらない。
これじゃあ隠れることも出来ない。
しないけど。
何も隠すようなことないし。
「それよりもレント……その子誰かな? 私達を放っておいてデート?」
「あ、いや、この人は……」
「妾はミコと言う。アデラードと言うたか? お主の言う通りデートじゃ。レントからしつこく誘って来おってのぅ……あんまりしつこいものじゃから仕方なくこうして付き合うておる。」
「ちょっ! 何言って……」
「嘘だね。レントが自分から女の子を誘うなんてあり得ない。そんな軽薄な人間だったら私達は好きになんてなってなかったよ。」
「ほぅ……?」
アデル……。
「ねぇ、レント……あの人、火神子様だよね?」
「あ、分かる?」
「そりゃ変わってるのは髪の色と眼の色だけだからね。」
「そうだけど、髪の色と眼の色って結構な変化だぞ。特に元の姿が強烈だから余計にな。」
「そうかもだけど、さっきレントはこの人って言ってたから。見た目は同い年くらいなのにこの人って目上の人みたいに言ってたから。それと顔を見れば分かるよ。」
「なるほどな。それで、どうしてアデラードさんが?」
「ほら、祭り本番になったらまた呼ぶって言ってたじゃない。」
「あー、そういえばそうだった。大名とか演舞とかで頭一杯で忘れてた。」
「それ、3人には言わない方がいいよ。」
「分かってる。」
どうやら分かってないのは後から来た3人だけのようだ。
とはいえ、ここで正体を明かしていいのだろうか……。
ここ、普通に人いっぱい居るから。
こんな所で帝だって言ったら騒ぎになりかねないし……どうしたものか。
なんて考えていたのが悪かった。
「流石に、加護持ちなだけはあるな。」
ミコがそう言った瞬間、アデルの雰囲気が変わった。
「どこでそれを?」
「別に大したことではないがな。」
一旦場所を移した方がよさそうだ。
アデルの雰囲気が変わった事に気づいた周りの人が急に距離を取り始めたし、このままだと衛兵を呼ばれかねない。
他国の貴族と帝が揉めたとかどう考えても不味いだろうしね。
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