第1189話 最高のものにしよう。的なお話

今日は朝に演舞本番時の衣装の採寸をするだけで後は何もないし、どうしようかな?

もうまともに休めるというか、自由な時間が今日と明日だけというのがまたなんとも残念というかなんというか……何かしなくてはという気にさせてくる。

もっと休みをくれてもいいんだよ?


そんな直談判なんて出来るわけないので予定には従いますけど。

なので今もこうして採寸の為に役所に向かっているわけですし。

そうして役所まで後少しという所でアルフレッドと遭遇した。

採寸、同じ時間にやるのか……。

正式採用と補欠なのに同じ時間というのは……凄く気まずい。

それは向こうも同じようで、なんとも言えない表情をしていた。


「えっと、おはよう。」

「あ、ああ、おはよう。」


無言です。

何を言えばいいのか分からないから俺は無言だし、向こうも向こうで無言なので凄い静寂感。

実際は周囲の声とか雑踏の音とかあるから静寂ではないんだけど、なんかここだけ音が無くなったような、そんな錯覚を覚える。

付き合いたてのカップルか! とツッコミが聞こえていそう。

聞こえないけど。


お互い気まずいまま役所に到着して、そのまま採寸に。

どうやら採寸に関しては別部屋でやるみたいなのでそこは凄くホッとした。


「入室早々で申し訳ありませんが、早速測らせてもらいますね。」

「お願いします。」


採寸する人は何故か女の人だった。

普通こういうのって同性の人がやるもんじゃないかな?

しかも無駄に美人でボディタッチが多いと来た。

これはあれか?

ハニトラ的な?

それともただの歓待の一種か?

まあ、いいか。

どうでも。

俺には美人美少女な嫁さん達がいるのでこの程度の誘惑、どうということではない。

昨日はたくさんイチャイチャしたし。


「はい。これで全部測定が終わりました。この測定結果を元に衣装を作成させていただきますが、どこかこうして欲しいという要望はありますか?」

「元々の衣装を知らないことには何とも……。」

「そういうと思って、見本を持って来ました!」


テンション高っ!

採寸した人、ひょっとして生産職?

服を作るってなるとテンション上がっちゃう系の人?


「あ、微妙にデザイン違うんですね。」

「そこは人によって骨格や動きの癖によって変わりますし、元来の造形を踏襲しつつも作り手と纏い手の個性を出すことも重要なんですよ。国にとって大事な祭りだからこそ、それまでの見た目を真似るだけの手抜きではなく、全身全霊をかけ、より観客を魅せる事を考えないといけないんです!」

「そ、そうですか……。」


グイグイくるな……。

でもこの様子だと歓待とかそういうのは無さそうで単に熱心に仕事するあまりガードが甘くなってるだけなんだろう。

分かるわ〜。

物作りに集中すると余計な情報って中々頭の中に入ってこないんだよね。


「えっと、じゃあとりあえず基本の形で作ってもらって、それを試着してから意見を出すって流れでいいですかね?」

「分かりました。ではひとまずはそれで。」


予想外の展開になって驚いたが、この祭りに関わる人みんなが一丸となってより良いものにしようと頑張ってるんだな。

なんかそういうのって、良いよね。

文化祭って、こんな感じなのかな?

俺は高校入ったばかりでこっち来たから良く分からないんだよね。

中学の時も文化祭はあるにはあったけど、漫画とかで見る高校の文化祭とは規模も賑わいも全然違ったから、ちょっと憧れてたんだよね。

でも結局それは叶わなかった。

今回の祭りは、味わえなかった分も頑張って最高のものにしよう。

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