第1188話 リリンは油断も隙もないな。的なお話

「ひとまずは満足しましたわ。」

「そうですか……それは良かったです……。」


質問責めにあうのって、かなり疲れるんだね……初めて知ったよ。


「途中で気になる事があった場合はまた聞きに来ますわね。」

「勘弁してください……。」

「では私はこれまでの事を本にしないといけないので、これで失礼しますわね。」


スズランはそう言いながら去っていった。

それはいいが、出来ればこれまでので満足してもう聴きに来ないでもらいたいものだ。

有名人の人達ってこんな大変な事をしてたんだな。

尊敬する。

封竜祭で英雄演舞をすれば有名になるかもしれないが、それは気にしないようにする。

目をそらすとも言うが……。


「この後どうする?」

「どうって?」

「もう3時過ぎだから今から街にっていうのも微妙かなって思うけど、みんなにどこか行きたい所があるのなら付き合おうかなって思ってね。どう? どこか行きたい所はある?」

「うーん、今特にないかな。それよりも……えい!」

「どうした?」


セフィアが後ろから抱きついてきて、端的に言って、凄く、いい香りです。

それにさらさらの髪が頬に触れて擽ったいやら気持ちいいやら。


「レント、明後日から忙しくなるんだよね?」

「そうらしいな。」

「んーと……うわぁ、大変そうだね、これ。」

「でも明後日の採寸はそれほど時間はかからなそうだぞ?」

「でも3日後からは朝から日が暮れるまでびっしりだよ。」

「それもまあ、仕方ないだろ。封竜祭は準備もあるから3週間後を目安に稽古の進捗具合で前後するか。あんまり遅くなりすぎるとなんか申し訳ない気持ちになりそうだし、そうはならないようにしたいなぁ。」

「レントなら大丈夫だよ。」

「だといいんだがな。」

「とまあ、そんなわけで触れ合える時間が減るわけで、その分を今の内に補充しときたいわけですよ。」

「そういう事か。」


それでこうして抱きついてきたのか。

だが、そういう事であればこちらとしても大歓迎。

これからしばらくのんびりと出来ないわけだし、今の内に嫁達とのんびりまったりとしながら嫁酸を摂取しますかね。

奥酸かもしれないか?

どっちでもいいか。

まずは後ろから抱きついてきているセフィアの頭をなでなで。

ちょっと撫でづらいかな。

顔が見れないのも減点ポイントだ。


「リリンさん? そういうのは夜にしようね。」


そしていつの間にか忍び寄っていたリリンがズボンを脱がそうとしていたけど、それはインターセプトさせてもらった。

まだ日も沈んでない時からそういうのは流石に爛れ過ぎてると思う。

触れ合いたいとはいってもそういう方向ではなくもっとソフトで健全なのがいいの。


使者さんとスズランさんと相対していたソファーから立ち、忍び寄って来ていたリリンを代わりに座らせる。

そして取り出したるはリリン用のブラシ。

そっち方面に持ってかれるのは良くないので真っ先に構う事でそういう事に思考がいかないようにという魂胆だったりします。


「リリン、結構髪伸びたよね。」

「ん。ポニテにしたかったから。」

「ポニテに? なんで?」

「レントが好きだから。」

「確かにポニテは好きだけど、無理に伸ばさせてまでさせるつもりはないよ?」

「大丈夫。好きでやってるから。」

「ならいいけどさ。」


リリンの髪を梳きながら話をし、ある程度済んだところで髪紐を取り出してポニテにしてみた。


「んー、まだもうちょっと伸びた方がバランスがいいかもしれないけど、これはこれでかわいいな。」

「もっと伸ばす。」

「そうか。」

「レント。次は僕の番だよ。」

「その次は私もお願いします。」


自分でやればいいなんていうのは野暮というもの。

ちなみにルリエは元からポニテだったりするけど、まあ、気にしないでおこう。


「2人もこっちこいこい。」

「私はいいわよ。」

「私もそのような事をさせるわけには……。」

「まあまあ。」


渋る2人の意見を無視してそのままみんなポニテにした。

それにしても、ポニテにするとアカネはルリエと姉妹に見えるな。


「何いい仕事したみたいな顔してるのよ。」

「まあいいじゃないか。実際似合ってるしかわいいぞ。」

「な、何言ってんのよ……。」


たまにはこうして髪型を変えたり揃えたりするのもアリだな。

あ、それはそれとして……リリンはそのままステイしてようね。

全く、リリンは油断も隙もないな。

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