第1187話 それはちょっとおかしくないか? 的なお話
「それでこれからの事なんですが、明日は一度役所まで来ていただき英雄演舞の際に着る衣装の採寸を行い、その2日後、つまりは今日から3日後に英雄候補が決まった事を帝様にご報告の為に御前へと参じていただきます。そしてその翌日は国民への告知を行い、さらにその翌日からは本格的な稽古を行います。」
うわぁ……過密……圧倒的過密スケジュール。
休みなんて明後日だけじゃないか。
その稽古の後はそのまま本番になるんだろ?
全然休めなさそうだ。
こりゃ観光は無理そうだ。
出来るとしても封竜祭が終わってからになりそうだよ。
とほほ……。
「本当はすぐにでも帝様にお会いしていただきたいのですが、残念ながら予定がありその日になりました。」
こっちとしてはすぐにならなくて良かったよ!
なんでそんな詰め込もうとするんですかね……というかそんな突発的に帝に会って大丈夫なのか?
「あの、帝様に会うにしても服も無いですし、礼儀も……。」
「それなら心配要りません。元々そういう情報を入っていますのでよほど見窄らしい格好で無礼な言葉を使わなければ問題ありません。」
「あ、そうなんですか……。」
うーむ。
正直に言って、会いたくないなぁ。
だって帝だよ?
ようは国王みたいなものだろ?
ヤマト1の権力者。
そんなの会いたくない……流石に俺もそんな相手と会うとなると緊張するし、それだけで胃に穴が……空くかなぁ?
身体機能はかなり向上してると思うし、意外と心労があっても胃に穴は空かないかもしれない。
それはそれとして、緊張は間違いなくするので会いたくない。
まさかそんな大物が出てくるとは思わないじゃないか。
ユキノも見ることができる程度にしか言ってなかったぞ?
でも、そんなわがままなんて言えないんだろうなぁ。
「細かい日程についてはこちらの資料を参照してください。」
「分かりました。」
「最後に、何か質問等ございませんか?」
「いえ、大丈夫です。」
「そうですか。では私はこれで。補欠合格者の方にも伝えなければなりませんので。」
「わざわざご足労いただきありがとうございました。」
使者さんを見送って、ようやく一息。
はぁ〜……まさか帝とね〜……。
そういえば上からの声がって言ってたけど、あの紅白巫女だったりして……。
一等大名の娘か何かだろうし、それなりに権力もあるのだろう。
それが無くても合格してたみたいだけど、感謝とかした方がいいのかな?
「合格おめでとうございます。では早速ですが今の心境は?」
「……本当に早速だなぁって思いました。」
「いえ、そういうことでは無く……。」
「分かってますよ……ちょっとした冗談です。心境といっても、まだ現実味がなくて嬉しさ半分戸惑い半分といった感じですよ。せっかくユキノが選んでくれたのだから受かりたいと思って頑張ってきたので嬉しいとは思うんですけど、そう簡単に受かるとは思ってなかったので、なんかふわふわした感じです。」
「そうなんですね……貴重な意見ですしメモしておかなくてはいけないですわね。」
「では次に、稽古の期間中に1番苦労した事はなんですの?」
「力加減ですね。これでもBランク冒険者で、ステータスだけ見ればAランクでも十分通じるらしいので観客が観れる段階まで加減しないといけないのが大半でした。」
「それって自慢ですの?」
「ただの事実ですよ。過小評価も過大評価もしないつもりなだけです。」
自己評価が異常なほど低かったり、高かったりするのを側から見ると苛立ったりするだろうし、ならちゃんと評価した方がいいと思うんだよね。
ちゃんとしたらしたで自慢ととられるかもしれないけど。
この後もスズランさんからこれまで聞けなかった三次試験に関する事についての質問をされ続けて気付けば1時間近く経とうとしていた。
いやいや、使者さんの話よりも長いってそれはちょっとおかしくないか?
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