第1181話 もう一部屋のみんながどうするかだな。的なお話

「出来たよー。」


フランが運んできたものは鍋だった。

もちろんただの調理用の鍋ではなく土鍋的なの。

というかそれどっから持ってきたの?

少なくとも俺達はそんなの持ってなかった気がするんだが……。

今度どこで買ったか教えて。

買うから。

日本人だもの。

土鍋とか欲しいに決まってるし。


土鍋が4つだから多分3人で1つかな?

結構大きいし。

蓋を取ってみると中は驚くほど赤く、匂いも刺激的でどうみても辛い奴です。

これはあれか?

キムチ鍋とかチゲ鍋とかそういう系の奴じゃないか?

俺辛いのはあんまり得意じゃないから食べた事ないんだよね。

ちょっと怖いな。


「これは北方大陸の方を遊び歩いていたら見つけた奴で、ここ数年は春が続いているけど、寒い時はこれに限るって言われたんだよ。」

「そりゃこんだけ赤けりゃね……。」


辛い物を食べれば体が熱くなる。

つまりはそういう事なんだろう。

ただ、辛い物なら先に言っておいて欲しいが……。

人によっては……いや、この赤さを見るに大抵の人は食べられないんじゃないか?

え、何?

フランって辛いの大丈夫系な子なの?

普段妖精みたいな見た目してて甘いの大好き、甘いのしか食べた事ないみたいな雰囲気なのに?


「見た目ほど辛くないから。」

「そうは言うが……。」


鍋の中身は赤い。

こんなのを見てそうなんだってあっさりと食べる事が出来るわけがない。

出来るわけがないが……折角フランが勉強して習得してきてくれたレシピなんだから、食べないわけにもいくまい。

南無三!

……南無三ってどういう意味だろう?

漫画とかでたまに見るけどよく分からないが、意を決してとかそういう時に使ってるし、多分そういう意味なんだろう。

というわけで、今度こそ南無三!


「辛い! でも甘い? でもやっぱり辛い!」


辛味と甘味と旨味の連続攻撃。

確かに辛いが、それでも見た目から想像していたような辛さではない。

それに辛味だけでなく甘味と旨味もあるので、次の一口、もう一口と食べたくなる。

とはいえ、辛さに耐えられる限界もあるので、その限界が来たら少し休憩してまた食べる。

その繰り返し。

食べていくうちに汗が吹き出すがそれでも食べる手はあまり止めないで、気付けば鍋の中身はあらかたなくなっていた。


「ここで締めにご飯を投入します!」


それは絶対に美味しい奴!


「最後に卵を乗せれば完成っと。」


食べなくても分かる。

これは美味しい奴。

食べなくても分かるが当然食べるよ。


辛味と甘味と旨味がご飯に吸われ、そして卵が辛味をマイルドにしてくれてとにかく美味しいとしか言えない。

最後の雑炊みたいなのもあっという間に無くなり完食となった。


「すごい美味しかったよ。ありがとな、フラン。」


うん。

本当に美味しかった。

満足満足。


「ところでこの鍋の名前はなんて言うんだ?」

「赤鍋だって。」

「そりゃまんまだな……。」

「キムチもチゲも韓国の料理名でしょ? ここは世界が違うんだからその名前なわけないじゃん。それで料理の名前なんて調理法や素材、見た目で決まるのが基本でしょ?」

「その通りで。」


キムチは確か韓国の辛子を使った漬け物全般のことだっけ?

いや、知らないけど、なんかそんな記憶がある。

で、日本にもみぞれ鍋っていう大根おろしをたっぷり入れた鍋もあって、それは見た目がみぞれみたいだからっていうんじゃなかったっけ?

ミルフィーユ鍋は見た目がミルフィーユ状で、ちゃんこは……分からないな。

ま、いいか。

ちゃんこは。


「それで、この後どうする? どっか遊びに行ったりする?」

「私も?」

「フランが良ければ、だけどな。」

「いいの!? 行く行く! 行くに決まってるよ!」

「じゃあ、決まりだな。」

「みんなはどうする?」


と、聞いたのだが部屋のみんなは全員行くとの事。

後はもう一部屋の方のみんながどうするかだな。

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