第1182話 まずはどの露店を冷やかそうかね? 的なお話
もう1つの部屋にいるみんなに聞いてみたが、他にやりたいことがあるわけでもないからということで全員が一緒に行くことになった。
そんなわけで早速街へと繰り出す。
「それでどこに行くの?」
「土鍋だ!」
「は?」
「土鍋を買う! その後の事はその後に考える。」
俺は見た。
食べ終わった後の土鍋や食器を宿の人達が持っていっているのを。
それはつまりあの土鍋達は宿に借りたという事で、この国の宿で使われているという事でもある。
ならば、探せば見つかるに違いない。
というか見つける。
「折角レントと遊びに行けると思ったのに……その目的が土鍋だなんて……。」
「土鍋が買えれば、その後はフランの行きたいところでいいぞ。」
フランはまだ目覚めて……3年くらい?
あれ、意外と時間経ってる?
まあ、それでもこの世界で生きる者としてはかなり短い時間だとは思うし、もっと色々と見たほうがいい。
それは俺もだろうけど。
こっち来て3年と……いくらだろう?
少なくとも半年は過ぎてるだろう?
それから……流石に1年は経ってないだろうし、10ヶ月とかか?
その辺曖昧になってるなぁ……色々あったり、何にも無かったりで時間の感覚があやふやになってるし。
まあ、大した問題じゃないか。
「土鍋ならここだろう。」
土鍋を見つけようと思っていたが、ユキノに心当たりがあるとかで案内してもらって、すぐに見つかった。
普通に店先に並んでるんだもの。
俺の心構えをした時間を返して。
買うけどさ。
土鍋だけでなく他の陶器系の食器なんかもある。
丁度いいのでこの機会に茶碗や湯飲みなんかも買っておこう。
目指せ和食御膳用食器セットコンプ。
後は小鉢とかに主菜副菜なんかを入れるお皿、そしてお碗。
お椀に関しては他の国でも木製の品があったからそれを使ってもいいんだけど……欲を言えば漆器がいいかなぁ……なんて。
この世界に漆器があるとは限らないし、妥協をするしかないかな。
箸も別の店か。
まあ、これは当たり前だな。
陶器系なんて重いし割れやすいしで使い道ないだろうし。
この店で買えるものは一通り買ったので前言通りフランの行きたい所へ行くことにする。
箸やお椀に関してはまた後で考えよう。
「フランはどこに行きたいんだ?」
「ここっていうのは特に無いから、適当に露店とかを回りながらぶらぶらと歩きたいかな。」
「観光といえばそんなもんか。よし分かった。じゃあそうしよう。」
行きたいところがあるのならいいが、そうで無いなら街中を見て回るってのも観光の醍醐味。
そうして街を歩く事でその街の雰囲気なんかを楽しむんだ。
とりあえず街の中心へと向かい、その後は適当に街中を散策していく。
これまでに通った場所もそうで無い場所もあるので俺達も十分に楽しめる。
「そういえばフラン。」
「何?」
「フランはお金とか大丈夫なのか? もし無いなら渡そうか?」
「普通そこは、俺が払うから安心しろ! とか言うもんじゃないの?」
「そうか?」
恋人同士や片思いの相手ならともかく友人相手の分もお金って払うものなのか?
「そうなの。それと、心配しなくてもちゃんと持ってるわよ。いろんなところを見て回った際に仕事をしたりもしたんだから。」
「フランが自分で働いて稼ぐなんて……成長したんだな。」
口元に手を当てて泣くふりをする。
「あんたは私のお母さんか!」
うん。
ナイスツッコミ。
とまあ、ふざけるのはここまでにして、まずはどの露店を冷やかそうかね?
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