第1178話 フランがやって来ました。的なお話

「ダンジョンは洞窟の奥は全て森林となっており、次の階層もその次も森林だったそうだ。調査出来たのは今の所5階層までだが少なくともそこまでは森林となっていたそうだ。」

「それで、モンスターパレードの危険性とかはあるんですか?」

「それなら問題なさそうだ。」

「問題ない?」

「ああ。たまたまレア魔物が牛鬼だったお陰でな。証拠となるものは何も無いが、調査隊が言うにはダンジョン内の魔物の数が異様に少なかったそうだ。その内訳もほぼ全てのダンジョンで必ず居るゴブリンやスライムといった魔物がおらず、居るのは毒耐性のある魔物だけだったそうだ。それはダンジョン周辺の森も同様だった。その事から恐らくだが牛鬼の毒によって魔物が死滅したのだろうよ。だからその手の問題は心配ない。」

「そうですか。それなら良かったです。」

「まあ、そのせいで稼ぎ時を見失った一部が不貞腐れて飲んだくれてるがな……このままならぶん殴って追い出さないといかんな。」

「ああ……そういう事ですか。てっきり魔物の脅威があると思っていたのでギルド内はピリピリしてるかと思ってたんですが、そうじゃなかったので少し変だなとは思ってたんです。でも、ダンジョンがあるのならいずれ稼げると分かると思うんですけど。」

「それはまだ立ち入りを禁止しているからだな。ダンジョンが出来たとなれば調査せねばならんが、今は封竜祭の時期で人手が足らんし国とも連携を取らねばならん。幸い、ダンジョンから出てきたのが牛鬼で周囲の魔物を殺してくれたお陰でモンスターパレードの心配も無いからな。今は高ランク冒険者を手配して監視と間引きに留め、封竜祭が終わってから国と連携して本格的に調査するという方針で決まった。まあ、そのせいでまだ当分はダンジョンは解放出来んがな。」

「ああ……そりゃ不貞腐れもしますね。それに森は森で牛鬼の毒で魔物が死んでますし、他所から来るにしても毒の影響が完全に無くなってからだろうから……。」

「そういうこった。それでもあんまり酷いとぶん殴るがな。」

「殴るんですか……。」

「殴る! 邪魔にしかならんからな。」


過激だなぁ。

カインもリステルもギルドマスターがまともで良かった。

……まとも?

あれ、なんか、アデルが無駄に空回っていた時や美味しいものがあればたとえ一冒険者の家であろうと躊躇なく招かれ、たらふく食べていた姿が思い浮かぶんですけど……。

ま、まあ、武力行使はしてこなかったし温厚ではあるんだろう……多分。


「そういえばお前さん達は快復してからは何してたんだ? 毒の影響があるとはいえ、数日前には治っていたはずだが。」

「一昨日まで英雄役候補の三次試験があったのでそれに参加してました。」

「お前さんが!? そうだったのか……。あの時ちゃんと断っといて良かったぜ。もしも強引に誘おうものなら周りから何言われるか分かったもんじゃ無いからな。」


そんなにかよ。

そこまで重要な役なんだな、英雄役。

いや、それだけ過去にいたという英雄の事を誇りに思っているって事だよな。

その気持ち、少し分かるな。

ウチの地元には名を馳せた偉人や英雄なんかは居ないが、それでも有名人の出身県としてはなんだから嬉しいやら誇らしいやらそんな感覚はあったから。

そこまで大きな繋がりでなくても。

それが自国の英雄ともなれば、そうなるのも仕方ないのかもしれないな。


「とはいえ、何も問題はなさそうなら安心しました。」

「そうか。それなら良かった。この後はどうすんだ?」

「特に予定は無いですしこのまま宿に帰るつもりです。」

「そうか。試験、受かってるといいな。」

「そうだといいんですけどね。では、失礼します。」


ギルドマスターに言った通り、何もせず宿へと帰還。

コハルさんだけを連れてどこかに行くってのもおかしいしね。

そんでとりあえずお昼まではのんびりと過ごして、お昼食べてから午後の予定を決めようと思っていたんだが、そうは問屋が下さないそうです。


「私、参上!」


フランがやって来ました。

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