第1176話 俺も楽しみだ。的なお話

と、アイリスさんの事ばかり見てないでせっかく来たんだし俺も何か見ないと勿体ない。

これが欲しいってのは無いけど国が違うから仕様が違ってたり真新しい物があるかもしれないし。


「んー……財布に鞄にポーチに鎧……どれも欲しいってのは無いなぁ……。」


財布と鎧はアイリスさんの所で作った物があるからここで買い換える必要性はなし、鞄にポーチもストレージがある現状、持ってても使わない。

ストレージ自体は特殊上位互換だけどアイテムボックスを持っている人はそれなりにいるから珍しくなくわざわざ偽装する必要がない。

ファンタジー物だとアイテムボックス系が珍しいから偽装の為ってネタがあるけど、こっちだとそうじゃないから。


「お、これはパスケース……じゃない。カードケースか?」


カードといえばギルドカードだな。

これはギルドカードを入れる奴なのか?

なるほど、その考えはなかった。

でも色々と処理とか操作とかするのにカードケースが邪魔になったりしないのだろうか?

とりあえずこれは保留だな。


この辺はどうやら小物類が置いてあるようで、パスケースの他にも筆入れにブックカバー、これは……なんだろうな?

何かを入れるんだろうけど、形状からじゃよく分からない。

細長い何かを入れるという事しか分からない。


店の奥の方に行ってみると椅子やソファーが並んでいる。

そして看板にイツキ家具店との共同開発品と書いてあるので、どうやらこの座る部分と腕置きとかの部分にここの店の技術が使われているみたい。

確かにこの辺も革製品と言えなくなくもないな。

まあ、買わないけど。

今買っても当分は使う予定ないし。

まだまだ家に帰る予定もないのだから。


で、候補を絞ろうとしたんだけどこれが欲しいっていうのが無かったという……。

結局俺は何も買わずに終わって、アイリスさんもこんな考えが……と言いながらいくつかの小物類を買うだけだった。

多分買った奴は今後のための資料とか参考にするんだろう。


お店を出ると外はすっかり赤く染まっていてもうすぐ日が暮れる時間帯。


「さて、そろそろ夕食の時間だけど、どうする? どこかで食べていく?」

「それなんだけどね、レント達の泊まっている宿で食べられたりしないかな? 昨日見た感じかなり高級な所だと思うし、そういう所の料理も食べてみたいんだけど、どうかな?」

「それも宿側に聞いてみないことにはなんとも……。じゃあとりあえず一旦宿に戻るって事でいいかな?」


反対意見は特に出なかった。

というよりも反対する理由がなかったって感じか。

そんなわけで宿に戻って聞いてみた。


「ではお連れ様の分までご用意いたしますので、出来上がるまでの間に先にお風呂に行かれてはどうでしょう?」

「そうですね。ではそうさせていただきます。」


どうやらOKらしい。

やっぱりお金持ちが多く泊まるから無茶振りになれてるのかな。

というわけでこの宿自慢の温泉へ。


「じゃあ後でね。」

「うん。楽しんで来て。」


みんなは女湯へ。

そして俺は1人で男湯へ。

……別に寂しいとか思ってないし。

俺はぼっちじゃないから寂しくなんてないし。

なんだったら1人で大浴場を独り占め出来る可能性がある分お得だし……。

はぁ……早く入ろ。

温泉好きだし、それ自体に不満はないしね。



1人温泉を済ませて外でのんびりと夜風に当たって火照った体を覚ましているとみんなが出てきた。

ルナの浴衣の時は特殊だったが、そういうタイプでないなら何も問題ないようで当たり前のように宿の浴衣が出されたみたい。

アデルのは多分子供用だと思うが、何も言わないでおこう。


「それじゃ部屋に戻ろうか。」

「どんな料理なのか楽しみ。」

「アデラードさんの場合、料理もだけどお酒もでしょ。」

「まあね。」


さて、今夜の夕食はどんなのかな?

俺も楽しみだ。

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