第1175話 頑張れ、アイリスさん。的なお話
革細工の商品や革製の防具などを取り扱っているというお店へと到着。
店に向かう道中迷いなく進んでいたからユキノはヤマトにいた頃からよく来ていたんだろうな。
まあ、重くなくて強度のある防具を求めれば自然と革製品にたどり着くよな。
ユキノは異世界人から伝わったなんちゃって忍者に憧れて実際にそんな事ができるようになっちゃうような子だから、動きを阻害して重い金属製の防具は選びにくかったんだろう。
それでも鎖帷子は着用していたけど。
「ここがヤマトの革専門店っすか! やっぱり革のこの匂いがいいっすよね!」
ごめん、それちょっと分かんない。
「んー、やっぱり地元でも見るような素材もあるんっすね。お、こっちのは見た事ない素材っすよ!」
はしゃいじゃってまあ……リステルにいた頃はあんなアイリスさんは見た事ないから新鮮だなぁ。
ひょっとしたらリステルでも初見の素材とか見たら興奮していたのかもしれないけど俺は仕事中は基本的には近寄らないようにしてたから。
忙しかったってのもあるけど、仕事の邪魔しちゃ悪いって思っちゃってね。
「これは一体何の目的が……あ、そういう事……なるほど、ヤマトにはこんな考え方があるんっすね……。」
革鎧を眺めて観察しているアイリスさん。
何やら学ぶ事があったみたいだが、こっちとしてはちんぷんかんぷんだ。
そもそも俺、革専門店ってあんまり行かないし。
精々カインにいた時に使ってた店とリスティーンくらいだし。
それにしても、やっぱり真剣な顔しているアイリスさんはいいね。
瞳が輝いているし、職人としての美しさがあるよ。
女性としての美しさは微妙だけど。
なんせ、革鎧を眺めて観察しつつ、時折匂いとか嗅いでますもの。
知らない人が見ればドン引きだろうね。
「アイリスさん、どう?」
「あ、レントさん! いやー、やっぱり国が違うと色々と差もあって面白いっすねー。特にこの部分。分かるっすか?」
「いや、全然分かんない。何が違うんだ?」
「縫い方っすよ! 多分っすけど、自分がやるよりもこっちの縫い方の方が1.5倍くらい強いっす。やり方とかは何となく分かるんで帰ったら試してみたいっすね。」
「そうなのか……?」
やべぇ。
全然分かんない。
自分の防具を眺めてみたがやはり分かんない。
専門家と一般人の差なのだろうか?
「後はやっぱり素材っすね。見覚えのあるものあるけど初めて見るのも結構あるっすよ。この赤鬼と青鬼とかはオーガっぽいっすけど色が違う。でも数からして亜種や異常種とはまた違うみたいっすから多分そういう種類の魔物がいると思うんっすよ。」
「ああ、居たね。弱かったけど。」
「あ、そうなんっすか?」
「まあね。セフィア達を変な目で目見てたから抹殺した。」
「あー……なるほどっす。納得したっすよ。というか、光景が目に浮かびそうっすね……魔物の姿を知らないから浮かばないっすけど。」
浮かばないんかい!
「それでどうする? 素材の入手先とか聞いたりするの?」
「んー、それなんっすけど、やっぱりお金がねー……嗜好品と素材だとどっちが高いかは分からないっすけど、それでも取り寄せるとなるとかなり値段が上がりそうっすよね?」
「多分ね。価値が上がれば上がるほど警備とかその辺の事もあるだろうから倍率も上がりそうだ。」
「そっすよね……んー、ここで大量に買ったとしても基本その一回限りな上にどうやって手に入れたかが問題になりそう……下手したら同業者に色々探られそうっすから……やっぱりやめておくっす。」
「アイリスさんのお店だから、そう決めたのならそれでいいと思うよ。」
「とりあえず今日は学べるものがないか見るだけにして、仕入れはお店がもっと大きくなってから考えることにするっす。」
個人経営の店を大きくするのは大変だとは思うけど、頑張れ、アイリスさん。
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