第1153話 その細い体のどこに入ったんだ? 的なお話
「それで、なんでまたここに?」
ベンチに座ってまずはそれを聞く。
何せこの紅白巫女は謎がいっぱいというか、謎しかない。
最初に見た時は俺しか見てなかったようで幽霊か何かだと思っていたし、もう見る事もないと思っていた。
しかし、現実は昨日また現れサイコロステーキを美味しそうに食べていたわけで、本当に幽霊なのかどうかという疑問が出てきた。
異世界なら食事のできる霊体なんかいるかもしれないけどさ……。
それでも、あの喋り方はどう考えてもレアキャラ的な存在だろ。
確かに、また見える事もあるだろう的なことを言ってはいたけど、まさかその翌日に会う事になるとは思うわけないだろ!
だからまずはそれを聞く。
正体に関しては聞かないし、聞いても教えてくれるとは思ってないからそこはいい。
「なんでも何も、また見えると言うたであろう? 故に、また会いに来たということじゃな。」
「確かに言ってはいたけど……こんな感じでホイホイ会いに来るとは思わないでしょ……。」
「細かいことは気にするでない。それよりも、ほれ、今日もあるのであろう? はよう出すがよい。」
この紅白巫女、自前の箸まで用意して来やがった……。
言葉遣いとその存在感から高貴な存在ではないかと思うから一応言葉遣いには気を付けてるけど……1発殴っちゃダメかな?
「あ、ありますけど?」
苛立ちを抑えて愛妻弁当を取り出す。
今日も美味しそうだ。
「そうそう、今日は妾も持って来たのでな、若者が好きだというシェアとやらをしようではないか。」
「はぁ……いいですけど。」
自分のを持って来たというのであれば、まぁ……いいのかな?
しかし、若者が好き、ね。
この人何歳なんだ?
この世界じゃ年齢なんてなんの意味もないけど、でもちょっと気になる。
聞かないけどね。
女性に年齢の話はいけないってそれ世間の常識。
「これが私の弁当だ。」
重箱だ。
それも三段重なってるガチの重箱。
おせち料理とか入ってそうな重箱。
これ、この人全部食べれるの?
というか食べてたの?
「では早速いただくとしよう。」
そう言うと紅白巫女は箸を俺の愛妻弁当に迷いなく伸ばした。
いや、まずは自分の食べなよ!
「うむ、美味いなこのみにはんばーぐは。それに、昨日のもそうであったが、今日のも愛情が詰まっておる良い料理だ。」
その愛情は全部俺に向けられてるんですけどね。
愛情を全部取られるわけにもいかないので、負けじとってわけではないが“自分”の弁当に箸を伸ばしてミニハンバーグを食べる。
うん、小さいけどしっかりとハンバーグしている。
一口で食べられるサイズで噛むと途端に口の中に肉汁が溢れてくる。
文句なしに美味しい逸品。
次は……ってまた俺の!?
そんな豪勢な重箱の弁当があるんだからそっち食べればいいじゃないか!
大体シェアするって言うんだったらメインは自分ので気になったのを分け合うのが普通じゃないの!?
この人若者が好きだというって言ってたし、シェアの意味を知らないのか!?
そもそも、シェア自体この世界の言葉じゃない。
それなのに存在するということは過去の奴らから広まったんだろうけど、その過程か、あるいは根付いた後に少しずつ普通が変化したのかもしれない。
少なくとも、俺の知るシェアではないことだけは確かだ。
そんなわけで、何故か競うようにして俺の愛妻弁当を先に食べ終わってから謎の紅白巫女の弁当を食べる事になったよ。
味自体は見た目が豪勢なだけあって上品でいて美味しい、正に高級な料理といった感じだったよ。
ちなみに4:6で紅白巫女が多く食べてたよ。
その細い体のどこに入ったんだ?
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