第1146話 買取の準備をお願いできませんかね? 的なお話
「あ、ちょっと待って!」
「何ですか?」
「その、出来ればギルドまでの道も教えてもらえると、助かるかなぁ〜って……。」
「……分かったわよ。案内するわよ。全く……何で私がこんな……。」
嫌なら道を教えてくれるだけでいいんだけど、そこで自ら案内する辺り、そう悪い人ではないんだろうなぁ。
「アザミって、昔からユキノのこと知ってるんだよな?」
「そうだけど?」
「じゃあ、昔のユキノってどんな奴だったんだ?」
「昔のユキノは、今もそうだけど生真面目だったわ。それに堅苦しい喋り方なんかしてるから人付き合いもそんなには無かったように見えたわね。」
あいつ、昔はボッチだったのか……。
「だから学校でも結構孤立してたわね。」
「ちょい待ち! あいつ、学校に通ってたのか?」
「聞いてないの?」
「聞いてない。」
「私もあの子も大名の娘よ。それ相応の教育を受けるのは何らおかしいことじゃないわ。」
「そりゃそうだ。」
「それで、1人でいるところに何回か声をかけたことあるんだけど、人の名前は全然覚えないわ、取り合ってくれないわ、それどころか毎回はじめましてなんて言ってくるのよ! 頭にくるじゃない!」
「そう、なのか?」
「そうよ! それなのに、船で会った時は仲間と仲良く話してるのよ! こっちは仲良くしようと何回も声をかけたのに全然相手にしなかったくせによ!」
「それで最初の言動か……。というか、仲良くしたいんだな。」
「うっ……だって、昔のあの子は髪も長くて、すごく綺麗だって思っちゃったんだもの……そりゃ、仲良くしたいに決まってるじゃない……。」
綺麗でかわいいから仲良くしたかった。
でも、家同士……というよりも親が一方的に嫌ってるからなかなか素直になれず、それで学校で1人でいるところを見計らって声を掛けてもまともに相手にされず……か。
なんか、本当に不憫というかなんというか……。
「外野がとやかく言うことじゃないからここでの話はユキノには言わないでおくが、ユキノと仲良くなれるといいな。」
「あんた、意外といい奴なのね。船の中でのチンピラっぷりからは想像出来ないわ。」
チンピラって……そりゃ嫁さん狙われりゃ粗暴にもなりますよ。
「それよりも、そろそろ着くわよ。」
「お、見えた。案内ありがとな。」
「別にいいわよ。ホムラの娘として、恥ずかしくない行動をしただけ。次にあった時は敵よ。私が選んだアルフレッドがあなたを負かしてみせるから覚悟してなさい。」
「お手柔らかに頼むよ。」
そうか。
あいつ、アルフレッドっていうのか。
初めて知ったわ。
アザミと別れてギルドの中に入る。
時間が時間なので閑散としているかと思いきや、意外と人が多く居て少し驚く。
そして妙にピリピリしてる。
まあ、昨日の今日だしそうなるのも仕方ないけど。
まあ、今回は俺達は不参加だ。
あんまり気にする事じゃないな。
本当にヤバそうになったら手を貸すけどそうじゃないなら任せる。
それにまだ3人は寝込んでいるから戦力が落ちていることに間違いはないんだからな。
買取カウンターに行くと今度はなんだ? って感じの顔をされた。
「まだ鵺の競りは行われてませんよ。」
「今回は別件です。また買取をお願いしたいんですけど、いいですか?」
「ええ。構いません。今度は何を狩りましたか? 牛鬼ですか? 夜叉ですか? 九尾ですか?」
大物ばかり名前をあげますね……。
そんなのとそうそう遭遇するわけないと否定したいところだけど、今回はその中に入ってるのなんですよね……。
「牛鬼です。」
「えっ……? 冗談ですよね?」
「本当です。」
「そういえば、対策会議をするって……その情報をもたらした冒険者パーティは牛鬼と戦ったって……まさか……?」
「そのまさかです。」
「また大物とかどうなってるんですか!?」
そんなの知りませんよ。
それよりも早く買取の準備をお願いできませんかね?
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