第1145話 応援したくなるなぁ…。的なお話

ただ帰るだけというのもつまらないし、何かお土産でも買って行こうかな。

とはいえ、何を買うかが問題だよなぁ。

普通の病人であるならば、病人でも食べられそうなもの……例えば果物とかプリンとかゼリーといったものを買ったりするものだろうけど、今回のは毒だからなぁ。

毒の成分で果物とかが変質して体に悪影響を及ぼすとか、無いよね?

流石にそんなピンポイントな毒は無いはず。

…………でも、ひょっとしたら。

いやいや。


となると……なんだろう?

こういう経験あんまり無いし、ホントどうしたものか……?

あ、あれなんていいんじゃないか?

お香。

リラックス効果とかありそうだし……やっぱやめよう。

お香のイメージが湧かずにお線香のイメージが……。

寝込んでいる人にお線香とか洒落にならねーよ。


仕方ない。

特に案も浮かばないし、無難に果物のしておこう。

毒の成分とかは気にしないで、なんだったら快復後に食べて貰えばいいんだし、そうしよう。

となれば、早速買いに行こう。

確かこっちの方に食料品店があったはず……。

ここを右に……?

あれ?

こっちだったかな?


「…………迷った。」


出発地点が違えば見えてくる景色も違う。

そうなるとこっちの方だった気がするという考え自体間違っているように思えてくるから不思議だ。

そして自分の考えに疑問を持ってしまったらもうだめだった。

こっちかも、あっちだったかもと、ふらふらと動いてしまい結果こうして見たことのない場所へと来てしまった。

こうなると、店に行くどころか宿に着けるかどうかすら怪しい。


そこから更に彷徨っていると見覚えのある人が目の前を歩いていた。

あんまり仲良くないどころか話した事自体ほとんどないけど、もう誰かに頼るしかない!


「アザミ、だよな?」

「誰……って、あんたはユキノの!?」

「あの、市場ってどこかな?」

「……迷子なの?」

「恥ずかしながら……。」

「……はぁ〜。しょうがないわね。案内してあげる。」

「すまない。助かる。」


気まずい。

案内してもらえてはいるけど、会話がなくて空気が重い。

ここは俺が何か言うべきなのだろうか?

だが、一体何を言えばいいんだ……?


「ねぇ……。」

「な、なんだ!?」

「その、ユキノは……今どうしてるの?」

「ユキノなら今は寝込んでいるな。」

「はぁっ!? なんで!? 何があったのよ!?」

「牛鬼と遭遇戦してな。倒したはいいが毒にやられて今は寝込んでいる。薬を飲んだし死ぬ事はないから心配すんな。」

「牛鬼!? そんなのいたの!?」


うん。

やっぱりこの反応が普通だよな。

遠距離から一気に決めたけど、それまでの拘束も結構ギリギリでそれだけでもパワーの凄さが窺える。

そして強力な毒もあるというかなり危険な魔物。

こういう反応じゃない方がおかしい。


「本当に大丈夫なのよね!?」

「大丈夫だって言っただろう。というか、やっぱりユキノと仲良くしたいんだな。」

「ややややっぱりって何よ!?」

「いや、別に……ただそう思っただけだが?」

「わ、私は別に、ユキノと仲良くなんか……。」

「家の問題があるからな。」

「知ってるじゃない。なのにそんな事よく言えたわね……。」

「家の事と個人的な事は別物だからな。」


まあ、フィクションだと仲良くしてても家にバレて引き離されたりするわけだが、ここは現実だしバレなければ問題ないと思うけどな。


「……そろそろ着くわよ。」


何か思うところがあるのか、あるいは言いたくない事でもあるのかは分からないが、アザミの口数が減った。


案内してもらった先で適当にお土産になりそうなカゴ盛りを買っていたらアザミからもお見舞いの品としてカゴ盛りを渡された。


「早く良くなりなさいって言っておいて。じゃあ、私はこれで。あとは自分で帰れるでしょ。」


ツンデレか?

やっぱりアザミの事は応援したくなるなぁ……。

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