第1119話 別に全力を出したわけじゃ無いですよ? 的なお話
良かった……ちゃんと覚えていてくれた。
今日が試験だという事は覚えていてくれたようで昨日みたいに全然眠れないなんていう最悪の事態だけは避けられた。
避けられたけど……覚えていたんなら襲わなくてもいいじゃないか……。
宿の朝食をいただいた後はのんびりと過ごす。
街中を見て回るのもいいとは思うけど、それは試験が終わってからなんの気兼ねなく楽しみたいと思ってるから後回し。
和食に使う調味料とかは大体集まったとは思うけど、気付いてないだけで他にもあるかもしれないし、そういうのを見て回りたい。
だから今日の二次試験はしっかりとやらないとな。
だけどまあ、まだ時間があるし今から気負いすぎるのも疲れるからのんびりと……
「セフィア、ちょっとこっちゃこいこい。」
「え、何?」
セフィアを招いて尻尾をモフる。
「急にどうしたの?」
「いやー、試験までまだ時間があるし、のんびりリラックスして過ごそうかなって。」
あー、癒される〜。
普段からの手入れのお陰もあってサラサラで気持ちいい。
一緒に髪も梳いて、耳もモフる。
なんて幸せな時間なんだ。
そうやってセフィアをモフってるとリリンが櫛を持って待ち構え出した。
「じゃ、次はリリンね。」
リリンをやればルリエが待ち構えるので、そのまま嫁さん達みんなの髪を梳く事に。
ついでに軽めのスキンシップをする。
うん。
こういうのでいいんだよ。
夜のはそれはそれで嬉しいけど、こういうのんびりと、それで軽めのでいいんだよ。
宿でお昼を食べたらギルドの訓練場に向かう。
3時からだからその前にウォーミングアップをしておこうかなって。
昨日は慣らしで今日はウォーミングアップ。
なのでそこまで激しく動かず、ランニングや素振りといった物。
あ、ストレッチはちゃんとやってる。
普段の冒険者家業はそんな暇ないけど、それ以外なら怪我の予防目的にやっておくに越した事ない。
そして3時。
試験時間です。
試験会場は軍か何かの施設にある広場。
多分普段はここで軍属の人とか衛兵とかそういう人達が訓練をしている場所なんだろうな。
試験官は……なんだろうな?
侍っぽい格好をしているんだけど、髪の色が金だ。
目の色が緑だ。
すっごい違和感……。
顔立ちも丸顔で背も少し小柄なせいか、和風っぽく感じて余計に違和感がある。
「じゃ試験を始めるけどね、あくまでもこれは戦闘技能を見るのが目的だからあまり気負わずに伸び伸びとやってちょうだい。」
「分かりました。」
…………あれ?
えーと、この場合はどうすれば……?
伸び伸びとやってくれと言われたからまずは一撃と思って近付いて一閃したらそのまま試験官さん気絶して動かなくなってしまったんですけど……。
これって試験になってるの?
どうしようかなと、周りを見ていると普通とは違う何かがあるような、そんな感じのする人がこっちを見ていた。
髪は白く、肌も陶磁器のように透き通っていて神秘的な雰囲気がある人。
服は巫女服のようなデザインだけどこの人の服は全て緋色。
普通は下だけなのだけどこの人のは上も緋色でほんの僅かだけ白色が使われている。
しかし、その人は目を話した隙にいつの間にか居なくなっていた。
試験だからとついて来ていたユキノに聞いてみても気付かなかったと言ってるし、気配察知にも反応が無いらしい。
まさか……幽霊?
いやー、遂に俺も見える人になっちゃった?
なんかちょっとワクワクして来た。
ちなみに試験は合格だって気絶から目覚めた試験官さんが教えてくれた。
戦闘技能なんて全く見せれてないけど、自分を倒せたのだから資格は十分とかなんとか。
いや、あなたに勝てたからって何なんですかね?
さっきのあれ、別に全力を出したわけじゃ無いですよ?
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