第1116話 その間軽く運動でもしてようかね。的なお話
「一次試験合格おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「それで、二次試験の日程ですがいつ頃がよろしいでしょうか?」
「いつでも構いません。」
「そうですか。そうなると……この時間はどうでしょうか?」
「明日の午後3時ですか。ではその日でお願いします。」
ん?
なんか受付の人の後ろの方でなんかざわざわしてるな。
なんでだ?
んー?
まあ、いいか。
ひょっとしたらお偉いさんが視察とかしに来たのかもしれない。
だってなんか人々が慌ただしくしてるから。
「さて。これで二次試験の日程も決まったわけだが、帰る前にちょっとギルドに寄りたいんだけど、ユキノ、案内頼めるか?」
「ギルドにか? って、ああ。アレがあったな。」
「そそ。そんなわけでよろしく。」
「分かった。」
そうして案内されたのは役所近くの建物だった。
ただ、ギルドが世界中に点在していてその存在は国に支配されない独立した組織だからか、ギルドの景観はこれまでのギルドとそこまで差はない。
差はないが、だからこそ目立ってる。
外側くらいはこの国に合わせてもいいと思うんだけどな。
「ようこそ、冒険者ギルドヤマト本部へ。」
「ヤマト本部?」
「はい。当ギルドはヤマト全体の冒険者ギルドの統括も行っておりますので。」
「あ、そういう事。」
「それで、当ギルドへはどのようなご用件で?」
「魔物の買取をお願いします。それと、ここって訓練場はありますか?」
「魔物の買取はあちらとなっております。それと、訓練場ですが、あちらのドアの先が訓練場となっております。」
「分かりました。ありがとうございます。」
買取カウンターの方へ向かっているとユキノが声をかけてきた。
「何故訓練状の場所を聞いたのだ?」
「二次試験は明日だろ? だから軽く体を動かしておこうと思ってな。」
「なるほど。ならば私が相手をしてやろう。」
「頼めるか?」
「任せておけ。」
ユキノが相手をしてくれるのなら助かるな。
「すみません。買取お願いします。」
「分かりました。魔物の大きさは買取カウンターに乗る大きさでしょうか?」
「えーっと、騒ぎになるかもしれないので、奥の方とかでいいですか?」
「分かりました。」
そんなわけで奥にある解体場で鵺や鬼達とその他をストレージから出していったわけだが、鵺を見た瞬間案内してくれた受付さんも解体場にいてこっちの方を見ていた人もみんな口を開けて驚いている。
そんなに驚くほどのことなのか?
まあ、かなり厄介な相手だったけど、それでもこれくらいの相手なら見慣れてそうだけど。
一応ここが本部なわけなんだし。
「はっ! し、失礼しました。確かにこれは外で出せば騒ぎになっていたかもしれませんね。申し訳ありませんが、ギルドカードを見せていただいてもよろしいですか? ないとは思いますが、誰かの戦果を横取りした可能性もありますので。」
「構いませんよ。」
ちゃんと真っ二つにしたのでギルドカードには問題なく記載されている。
相変わらず、凄い謎技術だ。
これ神様が作ったって言われても信じられるな。
「はい、確かに……って、レント様!?」
「はい、レントですけど?」
「あ、失礼しました。実は昨日ミウラ家の使いの方が訪れて御令嬢をとある冒険者パーティに護衛してもらったと伝えられたそうです。なのでその冒険者パーティのリーダーであるレント様には後ほど受付にて依頼達成の手続きを行ってもらいます。」
「え? ギルドを通してない依頼でもいいんですか?」
「商人や大名が移動中になんらかの危機に見舞われ、それを助けられてそのまま道中も護衛をしてもらうということが無いわけではないので。ただその場合だと双方から護衛を行ったと確認が取れるか、あるいは護衛を行ったという証拠がある場合に限りますが。証拠もなく冒険者だけが一方的に商人の護衛をしたと言って依頼達成数を水増しするなんて事が過去にあり、その結果今の形になったそうです。」
「そうなんですか。全く知りませんでした。」
「知らないって、Bランクになのにですか?」
「討伐と納品、後は指名依頼とかしかやってませんので。」
「そ、そうですか……。」
そんなわけで護衛依頼の達成手続きをしてもらった。
しかし、知らなかったな。
ギルドを通してなくてもいいなんて。
俺達みたいなのは稀だとしても、途中であった人の護衛をするってのにわざわざ街にまで戻るというのはおかしいし、言われてみれば納得できる。
買取は査定に時間がかかるそうなので、その間軽く運動でもしてようかね。
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