第1096話 本当に結構ですから!! 的なお話
お城に戻ると、城の入り口にて土下座している人がいた。
というかフミカゲ様だ。
また頭下げてるよこの人。
今度はなんだ?
「また我が街の者が迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ない!!」
「ひょっとして、さっきの泥棒の事ですか?」
「左様です……。」
「その事も別にフミカゲ様が悪いなんて思ってませんから。」
悪いのは盗みをした人だよね。
まあ、生活に困っていて盗みを働かなければ生きていけないってなると、本当にその人が悪いとは言い切れないんだけど。
生きる為に必死になって、っていう場合だと怒りにくいかな。
今回の場合がそれに当たるかは分からないけど、それでもやっぱりフミカゲ様に悪い所があるわけじゃない。
盗みを働くような人を放置していたとか、また三等大名の娘に迷惑をかけたとか、そういう感じで問題にされたりするかもしれないけど、俺は問題にしようとは思ってない。
「で、ですが……私がもっとしっかりと政を行っていれば、このような事には……。」
「誰もが不自由なく笑って暮らせる世界なんてそんなの、どうやったって無理なんですから、フミカゲ様が悪いなんて思わないでください。」
実際、神様ですら時にはやらかすしね。
あのダンジョンは凄く大変だった……。
その理由が妹を取られたからという嫉妬だというのがまたなんとも。
それにレイカーさんは割とドジで忘れ物とかしたりするし、何も無い所でこけたり、後何故か毎回やってくる度に激突してくるし。
そういえば最近は無いな。
それだけ来る回数が減ってるって事だけど。
「し、しかし……。」
「それに、直接被害にあったわけじゃなくて、たまたま事件に遭遇してそれを解決しただけです。迷惑だなんてほどじゃないですから。そういうわけですから、頭を上げてください。」
「……かたじけない。」
そう言ってフミカゲ様は頭を上げると即座に近くにいた人に指示を出した。
「徹底的に調べ原因究明を急げ。組織犯罪かそれとも単独犯か、もしも組織的なものなら背後関係の洗い出し。単独犯ならば盗みを働くに至るまでの経緯を調べ上げろ。」
「はっ!」
「とはいえ、何もしないというわけにも行きませんから。皆様はとりあえずお風呂に入って来てはどうですかな? お風呂から上がるまでには夕食の準備が終わるようにしておきますので。」
「ありがとうございます。」
ビシッと指示を出す姿は様になっていて、そういう姿を見ると本当に大名なんだなって実感する。
これまでは頭下げてるところしか見てないからね。
勧められた通りにお風呂に入らせてもらう。
流石に温泉とはいかなかったけど、それでも立派な檜風呂……多分?
この見た目だしきっと檜だろう。
この世界に来た時にアリシアさんからヒノキの棒とか貰ったからきっとヒノキがあるはずだし。
それに、男女で分かれてるからその辺は日本に似た国ヤマト。
お風呂がしっかりしてるのは高評価ポイントだね。
それに日が傾き赤く染まった空がよく見えるのもいい。
このまま日が沈むまでのんびりと眺めていよう。
ちょいと長風呂してしまったな。
まあ、そのおかげでいいもん見れた。
そして部屋に戻るとフミカゲ様の言う通り夕食の準備が整っていた。
お願いしたという事もあってとても豪華だ。
ミウラの時のように大名様と一緒に食事というわけでもないので夕食を存分に堪能できる。
海の幸、川の幸、山の幸が存分に堪能できるメニューで、お昼にあれだけ食べたというのにまた食べ過ぎてしまった。
満腹満腹とぽっこり膨らんだお腹を撫でていると再び女中さんが現れる。
ん?
なんだろ?
そういえば、「お口にあいましたかな?」とか言って途中で顔を出すくらいはするかもと思ってたけどフミカゲ様は現れなかったな。
ひょっとしてそれを聞きに来たとかか?
「この街1番の花魁をお呼びしました。今夜は存分に「結構です!」……え?」
何故か花魁を連れて来た。
なんでだよ!?
いや本当に、心の底から言うよ?
本当に結構ですから!!
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