第1073話 おや、誰か来たようだ。的なお話

ゲロ吐きしたスズランさん。

落ち着くのを待ってから話を聞く。

ちなみに場所は少し移動してます。

臭いので。


「それで、なんであんな所に潜んでいたんですか?」

「いえ、私も一緒に京に連れて行ってもらおうと思って……。」

「それでなんで這い寄る混沌になるんですかね?」

「混、沌?」

「ああ、いや、なんでもない。」


這い出てきたからついニャルラトホテプが出てきた。

そういえば、クトゥルー系って詳しくないんだよな。

まあ、あの神話体系の神はキモいのばかりだからあんまり興味が行かないから別にいいんだけど。

せいぜい、ゲームとかでニャルラトホテプが出てくるなーってくらいか。

作品によってはナイアルラトホテップとかナイアーラトテップとかになってたりするけど、本当にそれくらいしか知らない。

後、貞子も思い出したけど、そっちも知らない。

ホラー系も好きじゃないから。


「どうして潜んでいたのか? どうして京? に行きたいのか? それは私達に同行しないといけないことなのか? その辺の事を教えて欲しいですね。」

「私は昔から封竜祭の英雄演舞が大好きで、今回は運良くその英雄候補に会う事が出来ました。この機会を逃したくなくて、それで……」

「それで忍び込んだと?」

「はい。」

「一緒に行ったからって何か変わるものじゃないでしょうに……。それに私が英雄役に選ばれるとは限りませんよ?」

「いーえ、間違いなく選ばれます。その黒髪黒目、体格、容姿……何よりお父様に圧勝したその実力。選ばれない理由はありません!」

「見てたの?」

「はい! お父様は国防を担う三等大名ということもあり、ヤマトでも名の通った実力者なのですが、それを歯牙にも掛けない実力。英雄役はあなた以外考えられないでしょう!」


国防を担う三等大名?

うーん、王族以外の貴族を上から順に数えていくと三等は辺境伯辺りになるし、そうなると国防を担うっていうのも、そういう事なのかな?

もしかしてヤマトの沿岸部に位置する大名はみんな三等大名かも知れないな。


しっかし、どうしたものか。

連れて行く理由がないんだよな。

というかむしろ連れて行く事自体がデメリットになる。

まず、第一に足手纏いということ。

ヤスカネさんの娘ということで、多分ある程度戦えるんだろうけど、連携の訓練とかしてないから戦力として数えられない。

第二にスズランさんと一緒に行動すると京? に着いた後にアデルとかをこっちに連れてくる事ができなくなる。

転移魔法は隠すべきものだから、無関係の同行者がいると使えない。

スズランさんとアデル達のどちらを優先するかなんて考えるまでもない。

第三は第二に似てるけど、手の内を見せたくない。

転移魔法に限った話ではなく、俺達は少々特殊な立場なのでそういうのを権力者サイドにはあまり見せるべきではない。

そして第四、というかこれが1番の理由。

勝手に連れて行ったら間違いなく誘拐だと思われる!!


結論、送り返す!

それ以外ないでしょ!


「来た道を引き返すか……。」

「忘れ物かしら?」

「ええ、まあ、余計な人を連れてきてしまったので返し忘れてました。」

「ちょっ、なんでですか!? 連れて行ってくれてもいいじゃない!」

「なんでも何も、このままだと俺達誘拐犯に思われるからに決まってるじゃないですか! 嫌ですよそんなの!」

「ユキノ! 三等大名、ミウラ家の名において命じます! 私を京に連れて行って!」


どこの南さんだよ!

というか強権発動しないで!


「え、いや、その……。」


ほら、ユキノも困ってるし。

というか、そんなの聞いてられるか。

なので、送り返そう。

その為にもまずは馬車を……馬車を……どこで反転させよう?

街の中で這い出てくれれば良かったのに、街を出てからだから街道だからそんな反転させるほどの道幅が無いんだよ。

ストレージを使えば問題ないけど、それをするのもなぁ……絶対騒がれる。

街の近くだから歩いて連れて行くことも出来なくはないけど……納得してついてきてくれるだろうか?

それは最後の手段か。

どうし……


「レント殿ー!」


おや、誰か来たようだ。

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