第1062話 本当によく分からない現象だ。的なお話
「……すんなり入れたな。」
「何がだ?」
「何って、街の中にだよ。」
白い壁に大きな門、その側に立つ衛兵のような人がいたのだけど、何故だか軽く会釈されただけでそのまま素通りできてしまった。
普通こういうのって滞在許可とか、身分証明とか、入場審査とか、そういうのがあるもんじゃないの?
仮にも港街で、これ見よがしに壁で囲ってあるんだよ?
そしてその側に立つ衛兵。
どう考えてもあるでしょ。
そう伝えると俺が何が言いたいのか納得したようで軽く頷く。
「そういう事か。その辺の事は先ほど済ませただろう? それで十分だからだよ。」
「それならなんであんな風に衛兵が立ってんのさ?」
「それは魔物対策だからだ。あの壁は魔物の襲撃から街を守る為のもので、衛兵は異常が無いか見張る為だ。」
「じゃあ、関所とか検問所ってわけじゃ……」
「ないな。」
「なんて紛らわしい……。」
「そうかもしれないが、必要な事なのでな。」
「それはそうなんだが……。」
港の壁が第一防衛ラインでさっきの壁が第二か。
あるいは港の壁で時間湯を稼いでいる間に壁と壁の間の何もない空間に防衛陣を敷いて対処するのかもしれない。
その為のものであって入国審査の為ではないと。
でも、一応他国から来るわけなんだし、もう少し慎重でもいいと思うんだよなぁ……。
日本に似た国が滅ぶのは世界の損失なんだし。
「それよりも、ずっと来たがっていたヤマトだぞ。他に何か言う事があるのではないのか?」
「そうだな……まずは馬車を預けられる場所を教えて欲しい。このままだと邪魔になるだろうし。」
「「ヒヒンッ!?」」
あ、アルバとマロンが驚いて振り返った。
本当に、賢いよな。
現在はユキノが先導し、その後をかなり速度を落とした馬車で追うという形なんだけど、馬もデカけりゃ馬車もデカい。
通りの半分くらい使用してるから周りの目が気になるんだよね。
だから何をするにしてもまずは馬車をどうにかしたい。
「そういう事ならまずは城に向かうとしよう。」
「えっ!? いきなり!?」
「ここは私の家とは関係ないが、祭りは国の一大行事なのでな。その関係者に対しては協力を惜しまないのが暗黙の了解となっているのだ。だから、言えば馬車くらい置かせてもらえるだろう。」
城に行って事情を説明したらあっさりと預かってくれた。
いや本当に、協力を惜しまないのな。
それどころか「船旅でお疲れでしょうし我が城で休まれてはいかがか?」なんて言ってくる始末。
お疲れも何も、まだお昼前なんだけど?
とはいえ、断るのは申し訳ないので、1日だけ泊まらせてもらう事になった。
そしてその翌日からヤマトの首都を目指して移動をする、と。
そうなるとこの街にいられるのも今日限り。
というわけで初ヤマトを堪能すべく街へと繰り出す。
「この国の服って、和服なんだね。」
「ああ。私もアニメを見て
今なんか変じゃなかった?
和服と言っている筈なのに何故かヤマト服と言っているようにも聞こえた。
これは一体……。
そう思ったのは俺だけじゃないようで、アカネと蒼井も首を捻っていた。
日本組だけ?
セフィア達は特に気にも止めていないようだ。
……もしかして、これは異世界言語適応の弊害か?
日本語で1は『いち』だが英語なら『ワン』、フランス語なら『アン』中国語ならば『イー』となる。
だけどどれも同じ1を表している。
同じものを指していても国によって言い方は異なる。
それと同じように、俺達にとっては和服だけど、この世界にとってはヤマト服で、どちらも同じ。
ならば和服として聞こえてもいい気がするけど、異世界言語適応を持つ者同士でありながら同じ物を別の言葉で話したせいで相互干渉を起こして両方の言語で、両方の認識で聞こえてしまった……とか?
うーむ。
分からない。
分からないけど、こっちの世界ではヤマト服と呼称されると、そう認識しておこう。
その後、そう認識したからなのか、何故かヤマト服で統一されたて聞こえてくるようになった。
本当によく分からない現象だ。
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