第1050話 何が転がってるか分からないものだな。的なお話

近くの縁から縄梯子とロープが投げられる。

縄梯子は分かるけど、ロープはなんで?

そう思っていたら海に飛び込んだ恐らく海狩人だと思われる人が、片手で鷲掴みしていた魔物の脚に括り付けていた。

あ、なるほど。

倒した魔物を上に上げる為のロープか。

それで、海の魔物は……うぇっ!

何あれ?

エビの足にカエルの前足、さらに飛び魚のような長いヒレが付いている魚のような生き物で出来の悪いキメラみたいな見た目で、はっきり言ってちょっとキモい。


「あー、こいつか。ハズレだったな。」


なんかよく分からないけどハズレらしい。

何がハズレなの?


「ハズレって、何がですか?」

「ん? ああ、こいつはあんまり美味くないんだよ。」

「え、これ食べるんですか!?」

「本当に食料がない時はな。でも普通ならわざわざ食おうとは思わないくらいには美味くない。」

「そうなんですか……じゃあそれどうするんですか?」

「まあ、見てくれはこんなだけど一応使い道はあるからな。」


それを何をどう使うのか気になるところだけど、想像したくないので聞かないでおこう。


と、ここで海狩人が縄梯子を登って来たので軽く会釈をして挨拶をしておく。

その際に失礼だとは思うけど少しだけ観察させてもらう。


海狩人でしかも航海中の船の近くで戦うのだからもっとこう、海との親和性の高い、シーマンとか魚人のような人かと思っていたが、全然そんなことはなく、普通の犬人族だった。

あ、尻尾が海水で濡れてしおしおになってる。

なんかちょっと寂しい気がする。

相手男だけど。

でも犬(人)だし。


魔物は無事に討伐されたので、なんの心残りもない。

というわけで甲板から出てさっさと自分の部屋に戻る。

何かをするにしても、何もしないにしても、とりあえずはみんなと合流してからだろう。


そして部屋の中に入ってすぐに驚く。

内部と外部の音量の差に。

普段は入りっぱなしか、外に居っぱなしだから知らなかったけど、ここまで完璧に音を防いでいたのか。

流石は神様がくれた魔道具なだけはあるな。


「あ、レント。お帰り。遅かったね。」

「ああ、アルバとマロンがなかなか解放してくれなくてな。後適当に散歩してたら甲板に出たんでちょっと海眺めてた。」

「そうなんだ。」

「そんで魔物が襲って来たのを海狩人が退治してた。」

「え、そうなの!? 全然気づかなかった……。」

「知ってた。」

「リリンは流石だな。」

「……私は気付かなかったわよ。悪かったわね、気付かなくて。」

「何も言ってないだろ。」


蒼井はどうかなと思って少し視線を向けたらなんかふてくされた感じで返答が来た。

別に悪いとか思ってないんだけど。


「それで何を見て……あ、そうか。」

「え、何!? 急にどうしたの!?」

「なんかちょっと怖いんだけど!」


なんでこんな簡単な事に気づかなかったんだろう?

術式を刻んだ接続部の強度に不安があるのなら、そこを強化すればいいだけの話なのに、なんで気付けなかったんだ?

いや、魔道具ということに囚われすぎていたんだ。

まずはとにかく、メモに残しておかないと忘れてしまいそうだ。


みんなが見ていたのは戦隊ヒーロー物。

ハッキリ言ってアニメと言っていいのかは分からないけど、そのおかげでこうしてブレイクスルー出来たのだから今回はすごく助かった。


まずは推進用の接続パーツを書き出して、それを固定する為の機構を作る。

これはできれば頑丈な仕組みの方がいいけど、自分の技術的にはそう細かいのは無理だ。

せいぜい穴を開けてそこに螺子を使って固定するくらい。

そこから更に覆うようにして固定用のパーツをセットし、そこもネジで固定。

一つでダメなら二つ、二つでダメなら三つと増やしていけばいい。

多少傘張ろうとも本来なら石突きの部分だから多少大きくなっても問題はない。


戦隊ヒーローのロボットが合体して強化される姿を見て思いついた。

まさかこんな所にヒントがあるなんて。

どこに何が転がってるか分からないものだな。

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