第1051話 丁度タイミングよく席が空いたそうだし。的なお話

時間も忘れ設計図にひたすら書き込んでいく。

最初は螺子で固定しようと思った。

しかしよくよく考えてみれば螺子で固定するのなら対となるナットとかそういうのも必要になるんじゃないか?

少なくとも、ただ螺子で固定するよりかはより安定するだろう。

でも俺にそれを作るだけの技量はない。

俺に出来るのは鍛造と細工。

細工ならばナット単品なら作れるだろう。

だけど、それはナットだけだ。

螺子と噛み合うナットになるかは分からない。

螺子も同様。


だから少し考え方を変えて螺子は作る。

しかし通す穴より少しだけ太くして、無理やりねじ込む形にする。

きつい状態だから多分より固定されるはず。

その後に先の部分を潰して溶接……って、待て待て!

交換出来るようにしないとダメだろ。

固定する事にばかり意識が向いていて大前提を忘れていた。

今のは無し。


あー、そうか。

それも含めて考えないといけないのか。

となると……やっぱり固定具をどうにかしないとな。

うーむ。

ナットの方の金属を螺子よりも柔らかいのを使って、溝を強引に作るとかどうだろう?

強度は落ちるだろうけど、仕方ないか。


それとは別に、固定する以外に衝撃を吸収する仕組みを用意しておこう。

そうすれば溶接なんていう最終手段を使わないで済むかもしれないし。

ま、無難な所だとスプリングと緩衝材だな。

ゴムがあればいいんだけど、それには心当たりがない。

ないが、代替物として柔軟性に優れた物に少しばかり心当たりがある。

まだ可能性の段階だけど、多分あるはず。

それを接続部の奥に仕込んで、噴射部によって発生する反作用のエネルギーを少しでも減衰させる。


それらを踏まえていくつかのデザイン案を用意する。

理想としては螺子とナットが上手く用意できてスマートになっている案1がいいな。

というか、なんで全部自分で用意しようと考えたんだ?

ヤマトは日本に似た国だし、もしかしたら物作りの国で螺子やナットなんかが見つかるかもしれない。

うん。

まずは色々と見てみよう。

それからもう少し手を加えよう。


「んっ……ふぅ〜。」

「終わった?」

「セフィア? どうした?」

「どうしたって、もう2時間近くずっとそれやってるんだよ?」

「え、そうなのか? 気付かなかった……。」

「相変わらず集中すると周りが見えなくなるわね。」

「蒼井……居たのか?」

「居たわよ!」

「まあまあ……それでもうお昼の時間だからご飯食べに行こうって話なんだよ。」

「あ、そうか。もうそんな時間なんだ。」

「もう12時半過ぎてるんですけどね。」

「それはすまん。」


蒼井に怒られつつみんなでお昼を食べに食堂へ。

出遅れたせいで席が埋まってて食べられるようになるまで少し時間がかかるとのこと。

まあ、仕方ない。

自業自得だからな。

だから、蒼井からの視線も甘んじて受けようじゃないか。

目が、あんたのせいよ! って訴えてる。


「お集まりの皆さんにご報告があります。進路上に雨雲があり、本日の夕方から雨が降り、海が荒れると思います。その為船が揺れる可能性がございますのでご注意ください。また、安全上の都合により、雨天時の遊戯室及びダンスホールの使用を禁止させていただきます事をご了承願います。それでは引き続きお食事をお楽しみください。」


雨か〜。

そんで遊戯室の使用が禁止ね。

こればっかりは仕方ないか。

午後からどうしよう?

設計図の方はひと段落したし、次は鞘のデザインでも考えようかな?

それとものんびりとアニメ鑑賞でもしようかな?

ま、とはいえ。

まずは腹ごしらえかな。

丁度タイミングよく席が空いたそうだし。

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