第1049話 性分的にも冒険者が向いていたみたいだ。的なお話

昨日は……うん。

まあ、楽しかった。

ビリヤードを満喫して、夕食を堪能し、そして襲われたりしたけど、うん、まあ、楽しくはあった。


3日目となる今日はどうしようか?

3日連続で遊戯室に行くというのも芸がないというか、なんか、それはダメな気がする。

そういえば俺、まだ馬房には行ってない気がする。

船に乗っている間ずっとアルバとマロンに会わないでいようものなら、突進からの踏みつけを食らいかねない。

ジュネーシアさん曰く好かれているらしいんだけど、俺に対しては当たりが強い気がするんだよなぁ……なんでだろ?

ともかく、まずはアルバとマロンの様子を見に行くか。

その後は適当に船の中を歩こうかな。

何もしないでいると体も鈍るし、少しくらい運動した方がいいだろうし。


「俺はちょっとアルバとマロンの様子を見に行こうと思うんだけど、みんなはどうする?」

「うーん、邪魔しちゃ悪いし遠慮するよ。」

「邪魔? なんの?」

「なんでもないよ。それよりも、魔道具出して。アニメ見るやつ。」

「あ、ああ、分かった。後中の音を漏らさないようにこっちも渡しておく。」

「ありがとう。」


よく分からないけど、1人で馬房に向かう。

馬房には俺以外にも何人か人がいてそれぞれが馬の世話をしている。

商人なんかもいるだろうし、馬を連れて来てるのは俺達だけってことはないよな、そりゃ。


アルバとマロンは……お、あそこか。

あまり怒らせないようににこやかに、笑顔を絶やさずにして接近していく。

それが効果あるかは分からないけど。

それでも、何もしてないよりかはいいだろう。

頭突き、結構痛いから。

されないようにできることはしておきたい。


「ブヒン!」

「がふっ!」


意味なかった。

アルバに頭突きされた。


「ヒヒン!」

「あだっ!」


続けてマロンからも頭突きを貰いました。

普通に痛いです。

そして頭突きをした二頭はというと、プイッとそっぽを向くが2撃目は飛んでこないところを見るに、今回はこれで許してやるって事らしい。

本当に、馬らしくない馬だなぁ……。


アルバとマロンはそっぽを向いているけど、なんとなく何を考えているのか分かる。

多分だけど、早くブラッシングしろと考えている。

だからブラッシングをしていく。


「ヒヒーン。」

「ああ、はいはい。反対側ね。分かってるよ。」

「ブヒヒン。」

「マロンはもう少し待ってくれ。」


二頭のブラッシングを終えた後、しばらくの間にマロンとアルバに挟まれたままのんびりと過ごす。

というか、挟まれてるのでたいして動けないんですけどね。

そうしてしばらく経ち、ようやく満足したのかアルバとマロンが解放してくれた。

この行動になんの意味があるのかは分からないけど、ここしばらくはあんまりスキンシップ取れてなかったし、たまにはいいかと思える程度には愛着が湧いている。

というか、今更この二頭以外は考えられないかな。


馬房を後にし、俺は適当に船の中をプラプラと歩いていく。

軽い運動にしかならないけど、何もしないよりかはいいだろう。

ずっと室内だから体を動かすくらいはしておきたい。

今の俺はなんかそんな気分。


そして気付けば甲板に出ていた。

もはや船の中ではないが、約分すればここも実質船の中だから……。

とはいえ、折角甲板まで来たのだからちょっとばかり海の様子でも眺めてみようかな。

船の上から海を見るなんて初めてだし。

窓からも見られたけど、こうして風に当たりながら見てこそだから、ちゃんと初めてだろう。


海を眺めていると、ザザザと白波を立てながら何かが接近して来ている。

もしや、海棲の魔物か!?

この船は金属で覆われているし、多分大丈夫だと思うけど、一応念のため警戒しておく。

しかしその警戒は無駄に終わった。

誰かが海に飛び込み、ほんの数分で魔物を倒してしまったから。

直ぐそばに陸がない中、なんの躊躇いもなく海に飛び込むのは凄いと思った。

それと同時に、俺はそれを怖いと感じた。

もしも、船に置いていかれそのまま海を漂流したら、と考えてしまったから。

やはり陸の方が安心出来る。

どうやら俺は性分的にも冒険者が向いていたみたいだ。

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