第1048話 逃げるのは一苦労だったよ。的なお話
泥仕合を楽しんでいる間にどうやら他の代でも決着がついた模様。
リリンは案の定というか、予想通りという感じで無事に決勝進出。
みんなの会話の内容からどうもぶっちぎりで勝ったという感じでは無いようだけど、それにしては雰囲気が暗い。
なんでだろ?
後で聞こうっと。
そして最後の決勝進出者はレイダさん。
槍の使い手だから突くという動作には一日の長があるのかもしれない。
でもそれだけだと多分アカネには勝てないだろうな。
あの技術を見る限り……。
「それじゃあ決勝戦だけど、今回は折角の決勝という事で先に3勝した人が優勝ってことでいいかな?」
「本来のルールとは違うけど、まあ、お遊びだしね。」
「問題ない。」
「勝てる気がしません……。誰か変わってくれませんか?」
「えーと、それじゃあ試合開始という事で。」
レイダさんがそんな!? という感じで見捨てられた子犬みたいな顔をしているけど、俺にはどうすることも出来ません。
とりあえず、俺もその絶望を味わったのでお仲間です。
「さて、決勝が始まったわけだけどさ、2人はなんで雰囲気暗かったの?」
決勝が始まったので雰囲気が暗かった理由をリリンと同じ組だった2人、シアとユキノに聞いてみた。
「あー、うん。リリンと同じ組だったんだけどね……。」
「それは分かってるけど、だからこそ気になったというか……。」
「実はね、どうもリリンもビリヤードは初めてやるらしかったのよ。だから、これなら勝てるかもって思ったんだけど……リリン、あっという間に上達していってご覧の有り様よ。上達速度の差に愕然としちゃってね。」
「あー、そりゃそうなるわ。」
というか、リリン初めてなのかよ。
そうなると流石のリリンでもアカネに勝つのは無理そうか。
レイダさんは最初から勝てると思ってない。
ちょっと酷いかもしれないけど本人が勝てると思ってないしね。
「それじゃあ、私からやらせて貰うわね。」
バンキングの結果、アカネ、リリン、レイダさんの順番に決まったようだ。
アカネの一打目。
ボールが弾けるが残念ながら落とすことはできず、そのままリリンへ。
リリンは直接狙ったり、壁に反射させたりして次々と落としていくが、次の数字の球の位置が悪く、狙いきれずに失敗。
レイダさんに交代。
そして棚ぼたでレイダさんが9番を落とした。
「あれ? 私、勝っちゃいました?」
打った本人が1番驚いているよ。
まあ、気持ちは分かるけど。
2ゲーム目、アカネの一打目にて運良くボールを落とす事に成功し、そのまま続行。
そこで神業を披露していき見事パーフェクトゲームを達成する。
いや、あの、遊びの範疇超えてない?
「なるほど……。」
3ゲーム目はアカネの一打目では落とすことが出来ずにリリンに交代。
そしてリリンの番なわけだけど、先程の呟きが気になる。
そうしてゲームを見守っていると、リリンが突然台の上に腰掛ける。
強烈なスピンをかけて弧を描くようにして手前の球に当てずに奥の球に当てる高等技術じゃないか!
名前は知らん!
そしてそれは、先ほどアカネがやってみせた技。
リリンは狙いを定めて一気に突くが、カーブを描いて手球は進んでいくが、狙っていた球には当たらず。
流石に初めてやってそのまま成功とはならなかったか……。
レイダさんが漁夫の利というか、棚ぼたで再度勝利し王手をかける。
このまま行くとレイダさんの勝ち!?
え、まじ?
4ゲーム目。
今回もアカネは初手で落とすことが出来ずにリリンに交代。
そしてリリンは先ほど失敗したカーブを描くショットに再度挑戦し見事成功させる。
2回目で成功とかプロの人が浮かばれねぇ……。
多分、何回も練習したはずだよ。
それなのにこれはね……ちょっとかわいそうだ。
そのままフィニッシュして1勝。
5ゲーム目。
アカネがパーフェクトに決めて2-1-2となる。
6ゲーム目はリリンに交代し、リリンが手球をジャンプさせる技……これも名前は知らない。
で難所をクリアしてそのまま勝利。
次がラストゲーム。
アカネが8番を狙うもボールが穴の目の前で止まるというミスをする。
確か、一緒に手球も落としたらダメなんだっけ?
これは厳しいか?
もしかしてレイダさんのまさかのうっちゃり勝ち?
リリンの勝負を決める一打。
ここでなんとリリンは更なる妙技を放つ。
それは今までアカネがやって来てない技なのに、リリンはなんと自分の力だけでその考えに至った。
その技は、手球に強烈なバックスピンをかける事で途中で手球が戻ってくるというもの。
それを使い、8番を落とした後手球は元の場所へ。
「やられたわね。」
アカネの言う通り、リリンが勝利を収め見事優勝をした。
うん。
それは凄いし、見応えあったけどさ……2人ともやり過ぎ。
プロ顔負けの技の応酬に、いつの間にかギャラリーが出来て万雷の拍手が降り注いでいるもの。
ギャラリーから逃げるのは一苦労だったよ。
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