第1046話 当たらないよりかはいいか。的なお話

ガオニャーガオニャーという謎の音に起こされました。

いや、本当にこれ、何の音?

俺、こんな目覚ましかけたかな?

というか持ってたっけ?

…………。

だめだ、まだ少し寝ぼけてる気がする。

とりあえず考えてもわかりそうもないし、音源を探そうか。


うーん。

隣の部屋から聞こえてくるわけじゃないみたいだ。

となると……外?

窓から外を見てみると、一面に広がるのはキラキラと朝日を反射する見渡す限りのマリンブルー。

そして雲一つない爽やかなスカイブルー。

いや、違う。

青以外の色もある。

……何あれ?

なんか、随分とゴツい鳥が飛んでる。

その鳥が口を開く度に、目覚ましとなったガオニャーという音が聞こえる。

……えーと、ひょっとして、これってあの鳥の鳴き声?

もしかすると、あれは異世界のウミネコだったりするのかな?

あの鳴き声に虎柄……どちらかといえば海トラか。

どうでもいいけど。


そんな事を考えていたおかげで目も覚めた。

みんなを起こして朝食を食べる。

今朝の献立は魚じゃなくて肉だった。

てっきり全部魚かと思ってたんだけど、肉もあったんだね。


「今日は何をする?」

「昨日出来なかった奴をやるでいいんじゃない?」

「ダーツとか?」

「そうそう。」

「じゃあそうするか。」


というわけで朝食を終えて再び遊戯室に。

昨日も思ったけど、人が結構いるな。

しかも種族がバリエーション豊かで、あそこにはエルフ、あっちにはドワーフ、そこには獣人、遠くの方に魔族っぽい人もいる。

しかし、そのほぼ全てが俺の嫁恋人でカバー出来ているという不思議。

アデルもドワーフの血を継いでるから実質コンプリートしてるようなもの。

……そういえば、鬼人さんは居ないな。

てっきりユキノみたいに鬼人さんもなんとか員として活動しているかと思ったんだけど……まあ、タイミングが合わなかっただけだろう。

ラノベじゃないんだし、鬼人は国外に出てはいけないなんて決まりがあるとも思えないしな。


さて、何をしようか。

……まずはさっき話に出したダーツでいいか。

何気にダーツって初めてなんだよなぁ。

地球にはダーツバーなる場所もあるらしいけど、当時どころか今現在もまだ二十歳なってないからそんな所に行った事あるはずもなく。

学校行事でもダーツをやる事なんて無かったから完全に初めて。

まあ、それでも戦闘では一応投げナイフとかも使ってるし、当てられないこともないはず……。


フォームは確かこんな感じだったよな?

指で軽く持ち、体は軽く半身にして、腕を真っ直ぐに伸ばしながら手首のスナップを使って真っ直ぐに投げる。


ーーぺすっ


…………。

床に落ちました。

あっれー?

おっかしいなぁ……テレビではこんな感じでやってたんだけどなぁ。


「何やってんのよ。なっさけないわね〜。」

「いや、意外とこれが難しいんだって。」

「私に任せなさい。地中海旅行が目玉商品の東京友達園とか観てた私なら……やっ!」


ーーぺちっ


蒼井が放ったダーツの矢は近くにいた係の人の足元に落ちました。

こらえろ俺。

笑っちゃだめだ。


「…………ぷふっ。」

「何か?」

「い、いや……何も……。」


ちょっと漏れた。


「もー、あんまり笑っちゃだめだよ。いくら自信満々にしてたからって、ユウキちゃんだって恥ずかしいのは頑張って堪えてるんだから。」

「ぐはっ!」


あ、クリティカルだこれ。

セフィア、えげつない……。


「あ、あれ……?」

「はいはい。そういうのはまた後でね。次私が行くわ。」


場の空気を変える為か、アカネが前に出てきた。

そして放たれた一矢は真っ直ぐに飛んでいって見事ど真ん中に命中した。

スッゲーな。

令嬢として色々と教わっていたって話だし、ダーツなんかの投擲とかも教わっていたのかもしれないな。

でも、フォームに違いは見られないし、俺の何がだめだったんだろう?


その後もみんなで楽しくダーツで遊んでいく。

リリンはまあ、予想出来ていたけど、結構な好成績でアカネといい勝負をしていて、そこに食らいつくのがユキノ。

手裏剣とか苦無とか色々投げてきてるからかこういうのが得意なのかもしれないな。

俺は俺で、試しに遊びで投げナイフのようにして投げてみたら意外と当たったりしてる。

俺が求めていたのはこういうのじゃないんだけど、まあ、当たらないよりかはいいか。

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