第998話 競り落とす人を狙いたいものだね。的なお話
宿へと帰還し、夕食とお風呂をいただいた後、嫁達はいそいそと服を脱いでそういう事の準備を始める中俺は……即座にベッドへと潜り込み、さっさと寝ようとした。
「ちょっ!? 何で寝ようとしてるの!?」
「私達に飽きた?」
「え、そんな!?」
「何言ってんだ? そんなことあるわけないだろ。ただ、俺は是が非でもマグロを手に入れたいだけだ。その為に早起きしたいから早く寝るんだ。」
俺のイメージではマグロに限らず漁船というのは朝早く……というよりも夜遅くに出発して明け方に帰ってくるっていうの。
この世界ではどうなのか、そもそもマグロはその時間帯に回遊しているのかといったことは分からない。
なので朝早く起きて行ってもなんの意味も無いのかもしれない。
でも、今日お昼前から色々と回ってみて午後も探しても何処にも見当たらなかった所を見ると、朝早くに行かないと手に入らないのではと思わされてしまう。
だから早くに行動して出来る限り手に入れられる可能性を高めるのだ。
「その通りよ! 明日早いんだからあんまり騒がないでよね。」
そしてさらりと俺の隣をキープしつつアカネがそう言う。
なかーま。
「えぇ……アカネちゃんまで? って、何レントの隣をキープしてんのさ!」
「別にいいでしょ! いつもセフィア達なんだから!」
「どうでもいいけど早く寝かせてくれ。」
「むぅ〜……。」
セフィアがむくれてる。
それはすごくかわいいのですが、今は寝ることに集中しよう。
後、そうこうしている内に反対側をちゃっかりとシアがキープしてたりする。
ま、セフィア達の不満も分かるし明日は少し長めにそういう事をしようかね。
少しだけだけど。
流石に前みたいに一晩中は勘弁だ。
◇
ただいまの時刻は午前5時。
今いる場所は港。
一緒に居るのはアカネと蒼井のみ。
流石にまだ早いというか早過ぎる時間という事もあってみんなはまだ寝ていることにしたようだ。
聞けば普段よりもかなり早い時間に寝たものだからなかなか寝付けなかったとかなんとか。
そんなわけでみんなは宿で寝ている。
それに対して蒼井は俺と同じ思考結果に至ったみたいで、早くに寝て漁師が帰ってくるのを今か今かと待ち構えている。
考えが一致したことを喜ぶべきかそれとも恥ずかしがるべきか……。
ま、そこは同じ日本人という事か。
似たような考えになるのも仕方ない。
蒼井は少しアホなところがあるが頭が悪いわけじゃないからな。
そうして暫く待っていると少しずつ水平線の彼方が明るくなってくる。
日の出だ。
その光景は凄く綺麗でこれが見れただけでも儲け物だと思わされるほど。
その光景を日が完全に登るまで無言で眺めていると遠くの方に小さな明かりがいくつも見えてくる。
あれがきっと漁船の灯りなのだろう。
その予想は当たったようで次々と漁船が帰ってくる。
帰ってくるが……あれ〜?
普通漁船って水揚げした魚を運び出したりするものだよね?
なのになんで誰もそんなことせずに普通に船から降りてきてるの?
ひょっとして全員ボウズ?
釣果なし?
そんな事はなかった。
漁師全員アイテムバッグ持ちなだけだった。
漁から戻ってくる間ならアイテムバッグで十分保存できるという事か。
それに重さがカバン分だけで済むし船に魚を入れる水槽を用意する必要もなしとメリットしかないし考えてみれば納得だ。
マグロは何処だと思っていると競りが始まる。
その競りでマグロが売られている。
競りってどうやって参加すればいいんだろうか?
そういう権利とか資格が必要な可能性もあるし……むむむ。
「ねぇ、どうする?」
「私達みたいな素人じゃ競りに参加なんてやっぱり無理だよね?」
「分からん。分からないけど、とりあえず競り落とした商人の顔を覚えておこう。卸売りなのか小売りなのか、はたまた料理屋なのかは分からないけど、辿っていけば俺達が買うことができるかもしれない。でも1人だけだと料理屋経営かもしれないから何人か覚えておこう。」
「そ、それもそうね。」
さて、誰が競り落とすのか……。
どうせならこの世界で最も美味いらしい黒金マグロとやらを競り落とす人を狙いたいものだね。
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