第946話 それも結構な額だよ? 的なお話

アデルの型抜きが終わった時に後ろから突然拍手の雨が降り注ぐ。


「「うわっ!? ビックリしたー!」」


目の前のクッキー? に集中してたから気付かなかったけど、いつの間にかたくさんの観客が集まっていた。

え、何?


「すげーな嬢ちゃん! まさか全クリするとはよ!」

「ここのスッゲーむずいし、クリア出来ないと思ってたよ。」

「私にも出来るかな?」

「いやー、やめといた方がいいぞ。俺2000リムスったし。」

「いやそれは失敗し過ぎだろ!」

「あの男の子も惜しかったよねー。」

「ねー。でも十分凄いよね?」

「それにかっこいいし、本当に凄いよね。」


あー、うん。

なるほど。

ここのは難しくて、それが凄い勢いでクリアされてったから注目されたってわけね。

というか、嬢ちゃんって……。

いやまあ、見た目はそうかもしれないけど、一応ギルドマスターだよ?

役職柄そう前に出るようなものでもないだろうけど、ここは迷宮都市なんだしそれくらい知っておこうよ。


軽く会釈をしながら人混みを抜けてみんなと合流する。


「全部クリアなんてすごいですね!」

「まあね。それよりもレント。約束覚えているよね?」

「ああ。まあ、お手柔らかにお願いしますよ。」

「そこは保証しかねるな〜。」

「本当に頼みますよ!」

「あはははは!」


うん。

楽しそうで何よりです。

でも、あんまり高いのはやめてくださいね。

そこら辺のなら大丈夫だけど、偶に頭おかしいんじゃないかってレベルの値段の物が露店で売ってたりするし。


「それで、賞金が出るらしいけど幾らだったの?」

「ああ、全部合計したら1万だったよ。アデラードさんの方は2万かな。」

「へー、結構安いのね。」

「それは違うぞ。最近はなんだかんだで稼ぐ事が出来ているけど、1万や2万は普通に高額だからな。」


最近稼げてて金銭感覚が狂ってきてるのかもしれないな。

ルリエの実家である紅の帽子亭で1泊する場合、基本500リムだ。

日本円で考えれば大体5千円くらいの価値じゃないかな?

まあ、こっちの物価と向こうの物価が同じとは限らないけどさ。

それでもそんくらいじゃないかな。

10万や20万……一高校生にしてみれば十分高いと思う。


「へー、それなら私も参加してみるっすかねー。針捌きには自信があるっすから!」

「あ、じゃあ私もやる!」


アイリスさんがお金に釣られたのか、それとも革職人の琴線に触れたのか、それは分からないが参加すると言い出せば、釣られるように蒼井も参加すると言い出した。

で、結局みんながやる事に。

俺達はもうやったし、お店側からしてもまた賞金を持ってかれるのは勘弁してほしいだろうし、参加はしない。

変に恨まれるのもどうかと思うしな。


みんなそれぞれ2つ3つはクリアしているが、流石にそこまでのようだが、アイリスさんは違った。

自信があるというだけあって次々にクリアしていき、最後の1つ手前の奴まで来た。

そのまま一気に行くのかと思った矢先……


「へっくし!」


ーーパキッ


「……あ。」


10人近くが一斉にやっていたせいか、舞ってしまったクッキー? の粉を吸い込んでしまいくしゃみをしてしまったようだ。

その結果力が入ってしまい割ってしまった。


「うぅ……くしゃみが無ければ……あそこでくしゃみをしなければ全部いけたはずなのに……。」


まあ、アレは悔しいよな。

実力的には問題ないのにほんのちょっとのミスで水の泡なんだもの。


「えーと、ドンマイ。でも、十分凄い結果だしさ、そんな気を落とさないで。」


ちなみに、みんなは大体1000リムとか1500リムだったけど、アイリスさんは7000リムほど稼いだ。

最後までいけなかったとはいえ、それも結構な額だよ?

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