第945話 ぐぬぬ……次は負けないからな。的なお話
後はアデルのか……。
でも俺、貴族向けの店なんて前にアカネと夜会に出るからとアクセを買った店くらいしか知らないぞ?
しかも、アカネに連れてかれただけだから場所とかも結構自信ないし、実質全く知らないぞ?
「後はアデラードさん向けだけど、どこかいいところ知らない?」
というわけで聞いてみた。
本人に。
「それ、私に聞く?」
「いやだって、知ってそうなのアデラードさんくらいしか居ないし。」
「そうだけどさ……。でも、私はそういうのいいよ。」
「え、なんで?」
「なんでって、そんなところに行ってもかたっ苦しいだけでみんな楽しめないでしょ? だったら私は無理してもらわなくていいよ。それに私、そういうの必要だから持ってるだけであんまり趣味じゃないんだよね。無駄にゴテゴテしててさ、品がないよ。そういうのが好きな人が多いから買ってるけどね。」
あらま。
酷評してるなぁ。
まあ、分かるけどね。
無駄にキンキラキンなのって、どうかと思うし。
デザイン性ガン無視してひたすら高いですよとアピールしてるだけな気がしてどうもね。
「まあ、そういうわけなんで気にしなくていいよ。それよりももっとこの辺見て回ろうよ。私ちょっと興味あるのがあったんだ。」
手を引かれればついて行くしかないだろう。
アクセよりも楽しみたいようだしな。
「で、興味があるってこれ?」
「うん。なんだかんだ仕事とか多くてまだやった事なかったんだよね。そもそも遊びに出る事自体あんまり無かったし。」
アデルが興味あるって言ったのは型抜き。
日本にあるようなピンクとかの奴とは違ってクッキーのようなもののようだが、間違いなく型抜きだ。
これも奴らが元凶なのだろう。
この世界にはヤマトっていう日本っぽい国もあるから似たような発展をして型抜きが自然と生まれた可能性もあるけどね。
「そういえば俺もやった事なかったな。」
「そうなんだ。」
「ああ。日本にもこういうのがあるんだけどさ、子供のお小遣いじゃあんまり屋台で遊べないからね。だから基本的には見て回るだけで、たまに食べたい物を食べるってのが基本だったかな。」
「へー。じゃあ、ちょっと勝負しよっか?」
「いいですね。勝ったら次による出店の料金を払うって事で。」
「オッケー。」
ありゃ?
俺アデルの前でオッケーなんて言葉使ってたっけ?
少なくともこっちの世界の言葉じゃないけど、まあ、よく使いそうな言葉だしいつの間にか意味も含めて覚えられたって事かな。
そして始まる型抜き対決。
どちらも初体験で、簡単に勝負がつくと思うかも知れないが、そういう問屋は下させない。
こちとら鍛治に細工と手先を使う経験は積みまくりなんじゃい。
おまけにステータスも無駄にDEXが高い仕様。
そう簡単に失敗するわけがない。
だが、それはアデルも同じ。
400年生きてきたのは伊達ではないし、その400年の間に色々な趣味や技術を身につけている。
だから当然DEXも高いだろう。
お互い、最初の1番簡単な奴はあっさりとクリアし、続けて次の難易度の奴へ。
それもクリアすれば更に次の難易度へと移行していく。
しかしお互いにミスする事はなくどんどん進みついに最高難易度までノーミスできてしまった。
流石に店主も予想外だったようで少しだけ顔が青くなっている。
ここの型抜きは難易度によって値段は違うが、成功すると賞金が出るのだ。
そしてこれまで全てノーミスでそれが2人もいる。
なんか、ごめんなさい。
でも手は抜けないんで諦めてください。
最後の型抜き。
モチーフはドラゴンで尻尾が細長くてくるんってなっててそこが1番難しそうか。
そこは最後に回すとして他を……待って。
何これ。
硬っ!
おいおい、クリアさせる気なさすぎだろ……。
こなくそ……絶対クリアして……。
「あっ!」
パキリと、胴体が真っ二つに。
折角ここまできたのに……。
まあ、これまでのクリア分でも十分過ぎる戦果なんだけどさ。
ちなみに、アデルはきっちり全クリしてました。
ぐぬぬ……次は負けないからな。
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