第930話 久しぶりのエリュシオン邸へ。的なお話
商業都市クルスラウトを出てから1週間。
やっぱり魔物は出ない。
まあ、何となくそんな気がしていた。
本当に何も無いもんだから移動が順調で順調で……あ〜暇だなぁ。
こんなにも何にも無いとだれてくる。
……お。
まだ先だけど、迷宮都市が見えてきた。
時間的には……お昼までに着けないか。
近場でお昼にする。
いつものように食材と調理器具を出して後は待つだけ。
そうして待っていると……何も無いな。
する事もないし魔物も襲ってこない。
本当に、何もない。
これはリアルだからいいけど、小説とかだと大問題だろうな。
何も無いんだから。
お昼を食べたら再び馬車での移動。
2時間ほど進み無事に迷宮都市リステルへと到着した。
まず最初に向かったのはアイリスさんが居るであろうリスティーン。
「レントさん!? 帰ってきたんっすか!?」
「あー、またすぐに出るんだけどね。」
「でも今すぐってわけじゃ無いっすよね?」
「まあね。とりあえず今日明日はこの街に居ようかなって思ってる。」
「そうっすか。それでどこに泊まる予定っすか?」
「それなんだけど、やっぱアデラードさんの家じゃないとダメだよね?」
「まあ〜、そりゃアデラード様としては泊まって欲しいでしょうっすけど。そういえば泊まってた宿の方はどうなってるっすか?」
「そういえば特に何も言ってないな。ひょっとしたら部屋はもう別の人が泊まってるかもしれないな……なら、今回もアデラードさんにお世話になるか。」
「それがいいと思うっすよ。」
「でも今はまだ仕事中だろうし暫くここにいていい?」
「勿論っすよ。」
ということでしばらくの間アイリスさんとお喋りをする。
でも流石に店の真前に馬車を置きっぱなしというのは問題があるので少しずらしておく。
「それで、カインでの用事は済んだっすか?」
「一応ね。契約自体は切れてたけどリリンの師匠でカインにいた時に色々教わってた人が代わりに借りてくれてたから、なんとか事なきを得たよ。」
「そっすか。それは良かったっすね。」
「その後はその師匠の人のパーティと一緒に食事して、翌日に久しぶりの街を満喫して、で更に次の日からまたこっちに向かってきたってわけ。そうそう、クルスラウトに着く直前に魔物に襲われてる馬車を助けたんだよ。その時初めて乗合馬車を見たんだ。」
「え、見たこと無かったんっすか?」
「ああ。日本にはもう馬車なんてほとんど無いだろうからな。あるとしても観光地が客寄せにやってるくらいだろうし。こっちの世界でも馬車はギルドから借りるか自分で買うかしてたから使うことも無かったから。」
「なるほど。」
「クルスラウトでは風来亭って所で一泊して、そのままここにって感じだった。」
「へー。」
「でも残念なのは移動中何も無かった事かな。」
「何も無いのならそれでいいじゃないっすか。」
「そうなんだけどね。でもさ、本当に何も無かったんだよ? 野生の魔物も野生の盗賊も、本当に無くて、あったのは乗合馬車を襲ってるゴブリンで、それだって俺達が襲われたわけじゃないからね。小説だったら大問題だよ。」
「でもここは現実っすから。それに、私としてはレントさん達に怪我が無く無事に帰って来てくれた事の方が重要っすから。」
「……そうだね。っと、あれ? そういえばみんなは?」
「そういえばいつの間にか居なくなってるっすね。」
ひょっとしたら気を利かせてくれたのだろうか?
この半月程、ずっと会えなかったから2人きりにしてくれたのかもしれない。
「多分、気を利かせてくれたんだろうね。」
その後、みんなが戻ってくるまでの間2人でずっとお喋りをしていた。
◇
「さて、それじゃそろそろアデラードさんの家に行くとしますか。アイリスさんは?」
「私はリナを誘ってから行くっすよ。」
「そう? じゃあまた後で。」
「はいっす。」
そして俺達は一旦アイリスさんと別れ、久しぶりのエリュシオン邸へ。
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