第929話 そろそろ行こうかな。的なお話

朝になり朝食のお時間です。

目の前に広がるのはおそらく高いのであろう料理達。

割とよく見かけるメニューもあるし本当に高いかは分からないが、多分高いんだろう。

素材が良いとかそういう感じで。

でもこの場にはまだ俺しか居ない。

みんな寝てるから。

俺も朝食が来る直前に目が覚めたからまだ眠い。

いやまあ、それはいい。


個人的に残念なのは、朝風呂が! できなかった!

せっかくの大浴場。

そこでの朝風呂はきっと気持ちいいだろうと思っていたのに、なんで俺はもっと早く起きなかったんだ!?

5時くらいに起きるつもりだったのに!

更に残念なのはそもそも朝風呂がやってなかった事。

日本じゃ珍しくもない……いや、珍しいかもしれないけど、割と知られている朝風呂のある温泉宿。

でも異世界にはそんな文化無いのか、配膳に来た人に聞いてみたら何ですかそれ? って顔された。

後普通にやってないって言われた。

仕方ないので朝食後に部屋の風呂に入ろうと思う。


「おふぁよ〜。」

「おはよう。朝食もう来てるぞ。」

「え、そうなの?」

「ほら、この通り。」

「本当だ。じゃあ僕みんなを起こして来るね。」

「ああ。あ、後3人分は向こうの部屋だから。」

「分かった。」


3人が向こうの部屋に戻り、4人が席について朝食となる。

しかし、今更ながらこの人数を相手にしてよく生きてられるな、俺。

その点だけはあのスキルには感謝だ。

それが原因でエスカレートしてると思わなくもないけど。


朝食を終えたら朝風呂。

特に意味は無いけど、大浴場が無理だったからな。

代償行動って言うんだっけ?

目標が達成出来なかった時、別の目標を立ててそれを達成することで充足感を得るっていう……。

何だっていいけど。

気分が良ければ。


朝風呂から出て出発の準備を行う。

防具を身につけ武器の装備。

そして片付け。

まあ、ストレージにポイするだけの簡単な作業だけど。

向かい部屋のみんなと合流したらエレベーターに乗って受付へ……って、あれ?

エレベーター止まったぞ?


待つ事15分。

ようやく動き出したエレベーター。

何故止まったのだろうか?

地震があったわけでもあるまいし……分からん。


「ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。」

「え、あ、はい。」

「お客様が乗っているタイミングで魔石の魔力が尽きてしまい、昇降機が停止してしまいました。一昨日確認したばかりなのでまだ大丈夫と慢心しておりました。本当に申し訳ございませんでした。」


魔石の魔力って尽きるんだ……やっぱそうなんだろうけど、今まで経験したこと無かったから知らなかったな。

今回のは慢心してたって言うけど、3日かそこらで簡単に使い切るものなのだろうか?

昇降機の規模が大きく、その分魔力消費が大きいのかもしれないな。


「そんな気にしてませんから。次からはこういう事が無ければそれでいいですから。」

「2度とこのような事が無いよう従業員一同、気を引き締めて行きたいと思っております。本当に申し訳ございませんでした。」


硬い硬い硬い。

本当、こういうの慣れないなぁ……。

ここまで下手に出られるとどうすればいいのか分からなくなって来るよ。


受付に鍵を返して外へ。

受付に居る間に連絡が入っていたのか既に馬車がスタンバイしていた。

側にいるのが馬車の管理と馬の世話をしてくれるっていう孤児院の子供かな。

ちょっと生意気そうな女の子だ。

でもアルバもマロンも機嫌は悪くないし適当に扱われていなかったようで安心した。


移動の準備してる間も女の子はこっちをじって見てる。

えーっと……あ!

あー、そういう事か。

みんなが乗り込んだのを確認した後御者台から手招き。

すると嬉しいのを隠すような表情をしながら近づいて来る女の子。

なんかちょっと可愛い。

近づいてきた子にチップを渡す。

多分これが欲しかったんだろうな。


「はいこれ。ウチの子達の面倒見てくれてありがとうね。」

「あ、ありがと……。」

「後これもあげる。お仕事頑張ってね。」


追加で渡したのはなんて事はない、ただのヘアピンだ。

アクセサリーを作る時に肩慣らし程度に作った奴のどれか。

いつ作ったっけ? って思い出せない奴だからあげても懐は痛くない。

まあ、女の子なのに髪飾りの1つも無いというのはちょっと寂しいかなって思ってね。

ついでに頭もなでなで。

まだ10歳くらいなのに頑張ってて偉いね、と。


恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしているしそろそろ行こうかな。

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