第920話 それくらい許してくれるよね? 的なお話
日も暮れてきたしウィンドウショッピングもそろそろ終わらないとな。
「おっちゃん。これとこれくれ。」
「はいよ。」
露店でアクセサリーを2つ購入する。
細めの腕輪と黒い腕輪だ。
「はいこれ。ユキノとリィナさんの分。」
「え、いや、私はいいぞ。」
「私も、服を買ってもらったわけだし……。」
「でももう買っちゃったんで、貰ってくれないと困るんですよね。」
「そういう事なら……感謝する。」
「すまない。それと、ありがとう。」
ここまで来たら8人も10人もそう変わらない。
それに、2人のだけ買わないというのも仲間外れみたいだなんか嫌だ。
「さて、それじゃそろそろ帰ろうか。」
「外で食べて行かないの?」
「それもいいんだけど、家で落ち着いて食べるのってしてないだろ? 朝だって俺が作った簡単なのだったし。だから折角ならセフィア達の手料理がいいかなって。駄目かな?」
「もう、そんなこと言われたら嫌だなんて言えないじゃない。それじゃ急いで買い物しないと。」
「そういうわけなんで、俺達はこれで。」
「え、あ、ああ……。」
「ああ、後明日は9時くらいには家を出ようと思ってるので。」
見送りに来てくれると嬉しいけど、リィナさんにも予定があるかもしれないし、あんまり期待するのもよくないか。
他の人はどうしよう?
うーん、まあいいか。
一応挨拶はしてあるし。
カインに住んでいた時によく来ていた八百屋や肉屋等を回って食材を買い込んでいく。
ストレージの中にはまだあるけど移動中に結構消費したから丁度いいしその分も買い足す。
香辛料も買い足さないとな。
いやー本当に、ラノベとかにあるような香辛料がバカ高い世界じゃなくて良かったよな。
地球でも昔は胡椒は砂金と等価とかなんとかって話はあったし、可能性はあったけどそうじゃなくて良かったとつくづく思う。
買い物を終えて家に帰る。
1年前のように、帰って来たらまずはセフィアから使う食材やら調理器具などを聞いてそれをストレージから取り出し、それが終われば風呂場へ直行。
入りはするけど、その前にまずは風呂掃除。
この流れも懐かしいな。
前は水魔法が使えなかったからリリンにお湯張りを任せてたけど、今の俺は一応水魔法を覚えている。
掌からチョロチョロと水鉄砲のように出していく。
魔法で出す水はある程度温度調節が出来るけど、習熟具合が足りねぇ。
めっちゃ温いや。
仕方ないから火魔法で温める。
「はぁ〜。この世界に来て2年以上経つのに、なかなか魔力の扱いが上手くならないな……。」
つい愚痴を零してしまうが、本当になんとかならんもんかねぇ?
元々無かった能力なんだから不出来なのは仕方ないけどさ。
「準備出来た?」
「リリン。そっちの方はいいのか?」
「大丈夫。人手は十分。」
「まあ、料理が作れるのはセフィア、リリン、ルリエ、シア、ルナ、アカネ、レイダさんと7人居るし、1人居なくても余裕だろうけどさ。」
「だから一緒に入りに来た。」
「なるほど。そういう事ね。」
前もこうして一緒に入ったっけなぁ。
本当に懐かしい。
お風呂を出た後はみんなも交代で入っていき、そして料理に舌鼓を打つ。
久しぶりだからなのかすごく豪勢でとても美味しい。
料理上手な嫁が貰えて俺は幸せものだな。
〜セラ視点〜
「で、結局告白は出来なかったと。」
「うるさい……お前にだけは言われたくない。」
「あーもう、酔っ払っちゃって……。少しは落ち着きなさい。」
「私は酔ってなんかない!」
「酔っ払いはみんなそう言うのよ。」
家に押しかけた際には居なかったものの、その後運良く合流できたらしいけど、告白出来ずにやけ酒か。
お姉様なんて時々呼ばれてるのに好きな男を前にすると本当にウブね。
こんな姿を見られたら幻滅されるんじゃないかしら?
「そう言うお前はどうなんだー!?」
「私はまだ仕事があるし。それに、いざとなったらギルマスに出向なりなんなりお願いして迷宮都市に行くもの。」
「ずるいぞこの野郎……。」
「野郎じゃないわよ。」
まあ、それが通るか分からないけどね。
しかし、9時ね……ふむ。
ちょっと遅刻する事になるけど、それくらい許してくれるよね?
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