第914話 グッズでも買おっかな。的なお話
落ち着こうとしている俺を無視してセフィア達がリィナさんに話しかけていく。
いやまあ、俺だけしか話しちゃいけない決まりなんてないから何も問題ないけどさ。
「その服似合ってますね。どこで買ったんですか?」
「どこだったかな……? セラに連れ回されて買ったものだったから。」
「連れ回されて?」
「ああ。この手の服は1着も持ってなかったくて、その話をしたら、な。」
「そうなんですか。でも本当に似合ってます。」
「ありがとう。」
「馬子にも衣装。」
「それは……どういう意味だ?」
「着飾ればどんな人も立派に見える。」
「つまり、服がいいだけで私はそうではないと、そう言いたいのか?」
「冗談。よく似合ってる。」
「……全く。ふざけるのも大概にしてくれ。」
随分と仲良く話してる。
その間に俺は無事に落ち着きを取り戻した。
「そういえばリィナさんはここで何を?」
「えー、あー、その、だな。レント達の家を訪ねたのだが留守でな、それで折角外に出たのだから街の中を見て回ろうとした所でさっきの奴らにナンパされていたんだ。」
「つまり、さっきの奴らはナンパを断られた腹いせに暴力を使ってたんですか?」
「いや、あまりにもしつこいので少し振り払ったんだが、力加減を間違えてな。それで頭に血が上った感じだ。」
「つまり、師匠の責任でもある。」
「いやだが、断ってもしつこくしてきたし、何より剣を抜こうとしたのは向こうだろう。どう考えても自業自得だ。」
まあ、リィナさんは被害者な訳だし、圧倒的に向こうが悪いんだろうけど、ほんの僅かだけど少しくらいはリィナさんにも責任があるとは思う。
力加減を誤って痛みなり怪我なりを与えてしまったんだし。
……にしても、リリンはリィナさんと話す時は意外と意地悪な所があるんだな。
初めて知った。
気楽な間柄という証明でもあるんだろうけどね。
「それで、訪ねたって言ってましたけど、何か用があったんですか?」
「その、だな……折角帰って来たのだし、一緒に街でも見に行かないかな、と、思って……その、まあ、そういう感じだ。」
「そういう事なら一緒に行きましょうか。俺達も1年ぶりのカインを見て回ろうって話になってたんですよ。」
「そうか! そうか、そうか。うむ、では一緒に行こうじゃないか!」
ここからはリィナさん追加で街を回る。
吟遊詩人さんは……全部歌い終わってしまったようだな。
今はおひねりを求めてる。
内容に関しては色々と言いたいことはあったけど、それなりに楽しませてもらった事だし一応入れとくか。
次は……あそこにしようかな。
劇場。
今やってるのかは分からないけど。
というかそもそもこの世界娯楽施設が少ないしそういうやってるかどうかも分からない所に頼るしかないんだよな。
日本なら劇場はどちらかといえば下から数えた方が早いし、他にも映画、遊園地、水族館、美術館、動物園、ゲームセンターといった娯楽施設が多いからむしろどこを回るか考える必要があるけど、ここだとそこまで選択肢無い。
その分楽といえば楽なわけだけど。
劇場では運良く劇をやるようで、次の公演は15分後。
タイミング良すぎ。
とりあえず、トイレ休憩をし観劇中に食べる物を買ったら席に着く。
前にデートで見た時は何故かダ◯の大冒険だったっけ。
今回はなんだろう?
ロ◯の紋章か?
それとも冒◯王ビィトか?
こっちの世界の小説でした。
予想が前回のに引っ張られすぎだったな。
劇は一般兵Aとでも呼ぶべきごく普通の兵士でしかない主人公がある日見た貴族の令嬢に一目惚れした所から始まった。
地元の田舎村には居ない気品溢れるその姿に魅了され、しかし身分が違い過ぎるために付き合うどころか口を聞くことすら出来ない。
それでも諦めない主人公は一目惚れした時から変わった。
普通に仕事をしているだけだった彼は変わった。
毎日遅くまで鍛錬に精を出し、才能を開花させメキメキと実力をつけ、頭角を現していく。
そんな中、隣国が宣戦布告をしてくる。
戦争で死ぬかもしれない。
しかし、大好きなあの人に想いを告げる前に死ぬわけにはいかないと、必死に戦い、そして勝利する。
その時の功績によって貴族となった主人公は遂に貴族令嬢と結ばれるというお話。
戦闘シーンが多く、男性が好きそうな内容だが、貴族令嬢視点での展開も織り交ぜられており、ちゃんとヒロインしていた。
貴族令嬢側としては、度々見かける遅くまで鍛錬をしている主人公の姿に徐々に惹かれていき、陰ながら応援していたり、主人公の活躍に胸躍らせたり、身分の違いに葛藤する様なんかもあり、最後の戦争においては、主人公が戦争に行くと知り、毎晩主人公の無事を神に祈っていたりと、バトル物でありラブストーリーでもある内容で、デート中のカップルでも楽しめるものとなっていた。
まあ、あれだな。
普通に楽しませてもらいました。
売店でグッズでも買おっかな。
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