第910話 色々あるだろうし楽しみだ。的なお話
朝か……あー、やばい。
もうすぐ朝食の時間が終わってしまう……急いで食堂に向かわなくては……って、そうだった。
今居るのはカインの家だった。
食堂ないし、朝食は出来てないんだった。
ってかどうしよう?
宿住まいが当たり前になってて朝食は起きたら出来てるものって認識になってるわ……これじゃダメだ。
セフィア達はまだ寝てるし、仕方ないから自分で用意しよう。
大丈夫。
これでも親がいなくて自分で朝食を用意した事があるし、なんとかなる。
親がいないの2回しか無かったけど。
しかもインスタントのスープとサラダとパンとスクランブルエッグ(オムレツにしようとして失敗した)だったけど、きっとなんとかなってくれる。
えーと、まずはパン。
これは買い置きがたんまりあるからそれを出すとして、次は卵料理。
目指せオムレツ!
まずは卵を……1人1.5個として15個割る。
それに塩胡椒で味付けしてかき混ぜて、後は人数分焼……人数分?
これ、3個ずつ割ってやった方が良かった系?
ひょっとして失敗しちゃった?
いや、まだ大丈夫。
容器を5つ用意して、そこに均等に分け、その容器の1つから半分程フライパンに注げばこの通り、1人分になる。
後はオムレツを……オムレツを……オム……。
……全部スクランブルエッグになりました。
俺は最初からスクランブルエッグを作ろうとしてたんだ。
うん。
そういう事にしておこう。
気を取り直してお次はスープ。
スープ……スープ……コンソメの素とか……無いよね。
インスタントもないし……ミソスープ?
俺に作れるスープはミソスープだけだよ。
日本人としてはパンとスクランブルエッグにミソスープというのは違和感しかないけど、こっちの人なら抵抗なく受け入れてくれるんじゃないかな?
というわけでミソスープを作った。
ワカメ、豆腐が無いのが残念だけど。
豆腐って豆乳にニガリを加えると固まるんだっけ?
ニガリってそもそも何?
ん?
バタバタと音が聞こえる。
誰か起きてきたか。
「ごめん! 寝坊した! 今から作るから!」
「ああ、気にしないでいいよ。後少しだからセフィアはゆっくり座ってて。」
「本当にごめんね。」
「謝られるほどのことじゃ無いって。そもそも簡単なものしか作れないし、本当に大したものじゃないからさ。」
うん。
本当に大したものじゃない。
買い置きのパンにスクランブルエッグ(オムレツの失敗作)に味噌汁だ。
後はここに燻製のお肉をカリッと焼いてサラダとフルーツをカットすればそれで完成だ。
味は……まあ、単品では割と美味しくなった。
パンと味噌汁のマリアージュがどうなるか未知数だけど。
ゾロゾロと起きてきたみんなに朝食を提供し、みんなで食べるのだが、ブーたれているのが1人。
「パンと味噌汁ってありえないんだけど!?」
「しょうがないだろ。汁物、それしか作れないんだから。それに、お前だって朝食を作ろうとしたらこうなるんじゃないのか?」
「うぐっ!」
そもそも米自体、ここら辺では手に入らない。
米があればまだなんとかなるんだけど、無いのだからしょうがない。
図星を突かれた蒼井はおし黙り、渋々といった感じで朝食を食べ始める。
さて、もう1人の日本人は……って、いっ!?
な、泣いてらっしゃる……そんなにありえない組み合わせなのか?
「あ、アカネ? 急にどうしたんだ?」
「ご、ごめん……私のお母さん……日本の方のね。お母さん、朝食は楽だからなのか、いつもパンに味噌汁なの。だから、懐かしくてつい……。」
「そうか……。」
涙を流しながら食べるアカネ。
それをからかう者は誰もいない。
ほんの少しだけしんみりとした朝食となった。
◇
「それで、今日はこれからどうする? 俺としてはせっかくカインに帰ってきたのに何もしないというのもどうかと思うし、久しぶりのカインを見て回ろうと思うんだけど、どうかな?」
「いいんじゃないかな。僕は賛成だよ。」
「私も。」
「いいですね。私も賛成です。」
「ルリエは紅の帽子亭に行っててもいいんだよ?」
「いえ、レントさんと一緒に居たいですから。それに、何も寝る時間まで回るわけじゃないでしょうし、夜は帰るとして、それまでは一緒に居ようかなって。」
「そっか。みんなはどうする?」
そう聞いてみたが、1年ぶり(ユキノは初)ということもあってみんな行きたいとの事。
というわけで早速準備をして、30分後に出発だ。
懐かしいものや目新しいものとか色々あるだろうし楽しみだ。
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