第909話 私達はアベルに説教をした。的なお話
「それじゃあ僕はそろそろ帰らせてもらうね。」
時刻も9時を少し過ぎたくらいに突然カイルさんがそんな事を言い出した。
まだ早い気がするけどカイルさんは家庭持ちだからな。
あんまり遅くまで出歩けないのだろう。
お子さんもまだ小さかったはずだし。
「そういえば2人目が生まれるんだったな。」
「え? そうなんですか!?」
「本当だよ。今7ヶ月でね。アンナのお腹もだいぶ大きくなって来たからあんまり遅くなるのもね。というわけでお先に失礼するよ。」
「あ、はい。お疲れ様です。」
カイルさんが帰っていった。
その後ほんの少しだけ紅の帽子亭にいたけど、もう結構な時間居るしお腹も十分膨れているしという事で解散という事になった。
キャロルさんが長旅で疲れてるだろうしここらでお開きにしようと提案してくれたお陰だ。
じゃなければまだ暫くはアベルさんに捕まってただろうし。
「あ、そうだ。最後になっちゃいましたけど、皆さんにお土産があります。」
「おお、本当か? ありがとな。」
セフィアがリリンのアイテムバッグから取り出して黄昏の皆さんに渡していく。
リィナさんには既に渡していたので飛ばし、残りの4人に。
カイルさんの分はアベルさんに預かっていてもらうようだ。
そしてそのままクレアさんとセラさんにも渡していく。
いやー、本当に出来た嫁だよ。
俺なんかすっかり忘れていたのに、買っておいてくれて、それだけじゃなくてクレアさんの分まであるんだからさ。
黄昏の皆さんにはそれぞれの役割に合わせたアクセサリーになっている。
リィナさんのだけ魔道具なのは斥候がとても重要な役割だからなのか、それとも師匠という立場だからなのかは分からないけど。
で、アベルさんにはATK、ダインさんはDEF、トリアさんはMDF、キャロルさんはMATがそれぞれ上昇するアクセサリーとなっているらしい。
「そしてクレアさんのは既に同じ効果のを持っているかもしれませんが疲労軽減です。ギルドマスターは色々と疲れる仕事だと思うので。」
「ありがとうです。ちゃんと使わせてもらうです。」
「セラさんにはこれを。疲労回復効果のあるネックレスです。」
「ありがとうございます。」
全員に渡し終わったので今度こそ解散だ。
暗いけど家路は流石に分かるはず……ちょっと心配だし帰る時はシアに光魔法で照らしてもらおうっと。
「れ、レント!」
「? リィナさん? どうかしましたか?」
「え、あ……その……す、す、す………〜〜〜、ゆ、ゆっくり休めよ。」
「え、あ、はい。分かりました? それでは、えと、おやすみなさい。」
「あ、ああ、おやすみ。」
す?
なんだろう?
何か言いたいことがあったんだろうけど、流石にすだけじゃ察せない。
なのでとりあえず、すにはスルーしておやすみだけ言っておく。
まあ、そこまで緊急性のある話ではないだろうし、言いたくなったときにでも聞かせてもらおう。
そして家に帰り、お風呂に入って歯を磨き、後は寝るだけという所で嫁達が雪崩れ込んできた。
あの、今日くらいゆっくりさせてくれないかな?
あ、無理ですか。
そうですか。
……今夜は長くなりそうだ。
〜セラ視点〜
「ちゃんと言えなかったわね。」
「うるさい。黙れ。」
「いいの? 次はいつ帰ってくるか分からないのよ?」
「うるさいと言っている。それに、お前はどうなんだ?」
「私はまだいいわ。少なくともAランクの依頼を受けれるようになるまではね。それからどうするかは未定だけど。」
「そうか……。」
まあ、仕方ないよね。
雰囲気も何もなく突然告白なんて、私だって無理だもの。
それを男運なくてろくな誘いを受けてこなかった初心なこの子じゃあ、到底無理な話。
「でも、もしもちゃんと話をして雰囲気とか作れていたら告白出来た?」
「かもしれん。だが、もう後の祭りだ。」
「それもそうなんだけど……でも、そうなった原因にはお仕置きはしておいたほうがいいんじゃないかな?」
「それは……確かに、その通りだな。」
「というわけで、ア・べ・ル? そこに正座。」
「え?」
「せ・い・ざ。」
「え、あの……。」
「そうね、それは私もそう思うわね。というわけでアベル? 座ろっか?」
「と、トリアまで……?」
「「「せ・い・ざ。」」」
「………はい。」
それから小一時間ほど、私達はアベルに説教をした。
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