第911話 店の売りにしちゃえばいいと思う。的なお話
早速準備しようと思い部屋に戻る途中でふと思い出す。
そういえば、昨夜の惨状をまだ片付けて居なかったことを。
洗濯する時間、あるか?
というか時間間に合うか?
いや、間に合うかどうかじゃない!
間に合わせるんだ!
覚悟を決めた所で部屋の前に。
いざ!
って、あれ?
綺麗だ……。
実はそこまで酷くなかったのか……?
いや、そんなはずはない。
そんなはずはないが、この状況……つまりはそういう事なのだろう。
ルリエに感謝だな。
お陰で余裕を持って準備することが出来る。
ファッションセンスに自信のない俺はセフィア達にコーディネートしてもらい……というか着せ替え人形になり、セフィア達の服はいくつかの組み合わせの中から選んでと言われ、軽くイチャつきながら準備を済ませる。
みんなと合流して街へと繰り出す。
さて、最初はどこに行こうかな?
まあ、最初は適当にぶらついて気になるところに寄るって感じでいいかな?
みんなにそう提案してみた所、基本はそれでいいそうだ。
基本はというのは、シアがちょっと立ち寄りたい所があるそうで、そこに寄ってからという事に。
立ち寄った場所は浮雲亭という宿屋。
何故ここかと聞いてみると、どうもここがシアとルナがカインに来てからずっと泊まっていた宿のようで、それ故に挨拶をしておきたかったんだそうだ。
成る程な。
「こんにちはー。」
「いらっしゃい。泊まりですかな? おや? 貴女は……。」
「お久しぶりです。」
「おお、そうです。1年ほど前まで贔屓にしてくれていた、確か、アレクシアさん、でしたね?」
「はい。当時はお世話になりました。」
「本日はどのようなご用件で?」
「ちょっとこっちの方に寄る用事があって、それでマスターがどうしてるかちょっと気になりまして。」
「おお、そうですか。それはありがとうございます。実は先日孫が生まれましてね、公私共に順調ですよ。」
「そうなんですね。おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「アレクシアさんの方はどうですか?」
「私も日々充実しています。」
「そうですか。それは何よりです。」
柔和な表情というのだろう。
優しげな老人スマイルを見せるマスターさん。
確かにこんな人なら挨拶もしたくなるというものだ。
浮雲亭を後にし、俺達は適当にぶらぶらと街を歩く。
とりあえず街の中心にでも行こうかなというタイミングでまたもやあれに出会う。
バナナの叩き売りに。
そういえばリステルにも居たな。
あっちの人も発注ミスしまくりで、それで一層の事店の売りにしてしまえってある意味ヤケクソになっていたけど、こっちはどうなんだろうな?
「2房下さい。」
「まいど。」
「前にこの街に滞在してた時も叩き売りしてましたけど、今回はどんな理由で?」
「あ、そうなんですか。これまた恥ずかしい話なんですけど、字が汚くて桁一つ間違えて伝わってしまって……。」
「つまりまた発注ミス?」
「はい……そうなります。」
またなのかよ。
もうこっちの方でも店の売りにしちゃえばいいと思う。
〜一方その頃(リィナ視点)〜
こ、この格好、変じゃないよな?
いざという時のためにと唆されて買ったはいいが……やはり少し恥ずかしい。
だが、レント達は2、3日滞在すると言っていたし、今日を逃したらまたいつになるか分からない。
昨日はあのバカの所為で台無しになってしまったし、今日頑張るしかない。
ーーコンコン
……反応がないな。
もう一回。
ーーコンコン
やはり反応がない。
仕方ない。
まだ寝てるかもしれないし、何かトラブルがあるかもしれないし、鍵を使って中に入ったとしてもしょうがないよな?
そう、しょうがないのだ。
「お邪魔しま〜す……。」
中に入って、そして理解した。
誰もいない。
誰もいないのだからノックした所で反応が返ってくるはずがないよな。
……はぁ。
帰ろう。
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