第908話 ずっと何かしら食べていたんだけど。的なお話
「んじゃ次は迷宮都市での出来事とか依頼とか教えてくれよ。」
「いいですけど……。」
リィナさんは……リリンが相手してるな。
師匠と弟子という関係でもあるし、色々と話す事もあるだろうしリィナさんの相手はリリンに任せよう。
本当は俺も話したいんだけど。
「例えばこれですかね。」
「ポーションか?」
「はい。オークソテー味だそうです。」
「は? ごめん? 今なんて言った?」
「オークソテー味です。ちなみに効果は部位欠損も治せるレベルです。ギルドで鑑定して貰ったので効果は間違いないです。」
「なんだってそんなものがそんな味なんだよ!?」
「いや実はこれ、なんか知らないけど、タダで貰えたんです……。適当に街を歩いていたら裏路地から変な客引きの声が聞こえて来て、それで興味本位でちょっと覗いてみたら変なポーション売りのお姉さんがいて……気付いたらタダで貰ってました。」
「何をどうしたらそんな事になるんだよ……。」
「味を売りにした客引きにツッコんで、その後もボケに対してツッコんでたらタダでいいとくれたんです。」
「……変な人もいるもんだな。」
「ええ、本当に……。」
そういえばあれ以降1度も遭遇していないな。
いやまあ、会いたい訳じゃないけど、あの人のポーションにはお世話になった。
この前のダンジョンでの一件の際に怒りであんまり記憶にないけどガブ飲みしたっぽい。
あの時はもうポーションも殆ど残ってなかったし、あれらが無かったら死んでたかもしれない。
……実際は死ぬことは無かったんだけど。
「それ以外だと狩猟大会とかですかね。」
「狩猟大会! 流石迷宮都市! やっぱそういうイベントもあるんだな。」
反応がクルトと同じ。
そこはやはり兄弟という事なんだろうなぁ。
本人に言ったら恥ずかしがるか気持ち悪がるか……言わないでおこう。
「ええ。なんかポロっと言ったらあれよあれよとそういう流れになって行うようになりました。まだ2回しかしてません。」
「え? お前発案なの?」
「はい。ちょっとこれは迷宮都市のギルド事情が関わってるんですけど、あそこではゴブリンとかコボルトとかの常設依頼の達成率が異様に低いんです。」
「なんでだ? 定番依頼じゃないか。」
「あそこの売りはダンジョンです。だからあそこで冒険者をやる人の大半はダンジョンに潜るんです。」
「つまり、冒険者のほとんどがダンジョンに行ってるから常設依頼が全然熟されないと。」
「更に言うならばダンジョンだと魔物は倒すと魔石とドロップアイテムになりますからね。魔物そのままよりも楽なんですよ。解体する必要はないし荷物も嵩張りにくいしで。それも理由の1つかなと。とまあ、そんなわけで常設依頼の達成率が低くて、結果街周辺の魔物発生率が高くなるんですよ。倒す人が少ないから。」
「そりゃそうなるだろう。」
「それで受付に愚痴られて、ついポロっと狩猟大会でもしたらいいんじゃないかって話して、それが採用されたんです。」
「なるほどなぁ……。」
「後依頼に関して特別な事と言えば、奴隷市の護衛かな。迷宮都市は色々な職種の需要が高いからなのか、定期的に行っているそうです。それでギルドマスターが招待されててその護衛を。一応指名依頼です。」
「そうか……遂に指名依頼されるようになったんだな。所でうちの弟は指名依頼とかってあったりすんの?」
「さあ? 少なくともそんな話聞いたことはないですね。」
「マジかよ……。」
まあ、そもそもまだCランクらしいし、わざわざ指名する程でもないんだろう。
俺達はまあ、特殊だし。
その後も迷宮都市での事や逆にこのカインでの出来事とかを聞いたりしたけど、一度たりともアベルさんのマークが外れることはなかった。
少しくらい、リィナさんと話させてよ。
後、クレアさんとも話したかった。
同じギルドマスターな訳だしアデルの事何か知ってるかもとちょっと気になってた。
まあ、そのクレアさん、ずっと何かしら食べていたんだけど。
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